漢方薬症例クイズ≪第2回≫
実際の症例を元に、患者さんの症例データーを提示します。 “書いてある内容”から推理して、適応すると考えられる漢方薬の名前を当てて下さい。 基本的に当店で扱っている漢方薬としますが、解答としては必ずしも限定しません。「なるほど、その方法もあるか」と思われる解答であれば、正解とする事があります。(生薬のみや民間療法などは除外します。) 正解者の中から、抽選で3名様に『プリティ座いす』を進呈いたします。 絶対の正解というものはありませんのであくまで、“あそび”として楽しんでいただければと思います。 皆様の参加をお待ちしています。(終了しました) | プリティ座いす クリックすると大きく見れます。 テディベアのイラストをあしらったプリティ座いすです。 室内はもちろん、お花見のお供にどうぞ(⌒▽⌒) |
募集期間:3月1日(月)~14日(日)
正解発表予定:3月17日(水)
問題 10歳、男子。背は小柄。顔色は普通。 主訴は、腹痛。 下痢も便秘も無いが、お臍(へそ)の辺りが痛いという。お臍を中心に、やや左右が張っている様子で下腹部が重い感じがするとの事。 ある漢方薬を渡したところ、家に帰って服用すると服用して一時間後には多目の便が出て楽になったと親から聞かされた。 以来、家に常備しておいて似た症状があると使っているとの事。 さて、渡した漢方薬はなんだったろうか? |
正解 正解は小建中湯です。 単品で正解した方が2名のみでしたので、そのまま当選者といたします。 当選したのは、以下の2名の方です。おめでとうございます。 ※たかさん様…選んだ理由:空欄 ※ひろの様…選んだ理由:空欄 それと、次選の漢方薬としては桂枝加芍薬湯が該当します。 桂枝加芍薬湯を解答された方は複数いたのですが、当選枠は3名なので抽選にて1名様を当選といたしました。おめでとうございます。 ※えむし様…選んだ理由:神経性の便秘、渋り腹と判断したことによる |
解説 まず便秘だった事は結果として後で分かった事ですので、一度忘れて下さい。ここで便秘=便秘の漢方薬と思い込んでしまった人が多いようです。 便秘という事が分からない状態では、この子供は便秘の自覚も下痢の症状も無かったという事になります。そこで頼りになるのは、何処が痛いかという事です。 お臍を中心に、やや左右が張っている事と、下腹部が重い感じがする事、そして痛いとは言っていても、特に差し込むような激しい痛みは訴えていません。 それらを考えると、最初から便秘薬として強い物を用いるよりは、整腸作用のある物を選んで様子をみる事が必要です。特に子供は、大人よりも体の代謝機能が高いので、漢方薬といえども慎重な投与を心がけなくてはなりません。 もちろん急激な腹痛や、急性の熱症状(風邪)などに対しては、効果が早く出る漢方薬を選択します。 解答の中で正解以外で多かった大黄甘草湯は、便秘の漢方薬としてポピュラーな物ですが生薬が2種類しか入っておらず、生薬の種類が少ない漢方薬は効果が鋭い傾向にあり、症状があいまいな段階では適切ではありません。 半夏瀉心湯という解答も多かったのですが、おそらく胃腸カタルという事を想定したのだと思います。ただ、半夏瀉心湯は前提として吐き気などの明白な症状を伴っている場合に用います。名前の『瀉心』は、炎症・充血・出血・熱感などを取り除くという意味だと憶えておくと良いでしょう。 他に多かった解答の中に安中散がありました。おそらく神経性胃炎という効能からだろうとう思うのですが、適応する状態として「腹部筋肉が弛緩する傾向」というのが必要となります。今回の子供は、逆に左右が張っている傾向にありますので適応しません。 さらに少数ではありましたが、大柴胡湯という解答があり、これは判断に迷うところです。大柴胡湯は比較的体力のある人に適応し、症状もより顕著な場合に用います。小学生の場合だと、効果はあるかもしれませんが強く効き過ぎる可能性があります。今回は、背が小柄で顔色が普通という条件しか提示しませんでしたので、大柄か太っているタイプの子供であれば使えるかもしれません。 そして、子供はちょっとした事で神経性の便秘を起こす事があると憶えておくと良いでしょう。 他の事例になりますが、家族と出かけると便秘になるというケースがありました。出かけると本人は楽しそうにしているのに、どうして便秘になるのか親は不思議に思ったそうです。 理由は、神経的な緊張と精神的な緊張は必ずしも一致しない事によります。子供としては家族と出かけること自体は楽しいと思っていても、出先で多くの人に会ったり乗り物に乗ったりという事に対しては体が緊張してしまうという事があり、これは決して特異なケースではありません。 そして、それらの神経的な緊張は、“顕著ではない”症状として現れる事があり、その影響が出やすいのが胃腸なのです。 喘息などの持病がある場合は、胃腸に加えてそれらの症状が出る場合もあります。 以上の事から、小児の慢性胃腸炎や夜尿症などに用いる小建中湯を試してみました。 補足 次選の漢方薬としては、桂枝加芍薬湯があります。 実は、小建中湯と桂枝加芍薬湯の生薬成分を比べてみると、まったく同じだという事が分かります。違いといえば、小建中湯には粉末飴が入っているという事だけです。ですから、桂枝加芍薬湯を選んだ人は正しいですし、桂枝加芍薬湯を推した人はほとんどの人が「お臍の周りの痛み」と「神経性のもの」と的確な理由を挙げていました。 その点からすると、正解としても良かったのですが、今回はクイズという事もあり、あらかじめ用意した正解を答えた人を当選としました。 ただ、粉末飴には意味があります。 甘い物には神経をほぐす効果があり、今回の問題の患者が子供である事を考慮すると、神経を安神させる粉末飴が入っている小建中湯の方がより望ましいでしょう。 さて、今回の問題ですがいかがだったでしょうか。 解答と共に寄せられたメッセージの中には、「難しい」という声もありました。 そうです、難しいんです。お店にただ、「お腹が痛い」と来られるだけでは。 本人であれば、その場で他の症状を尋ねたり、顔色や体格などを観察して適応する漢方薬なり薬などを選ぶ事ができますが、人に頼まれて来た時や、家に患者である子供を置いてきたりしていると情報が少なすぎで困るというケースがとても多いのです。 また、子供は知っている言葉が少なかったり経験が不足していたりと、自分の症状を的確に親や他の人に伝えられないという事もあります。それを聞き出すためには、親自身がどんな事を確認しなければならないのかを知っておく事が必要です。 例えば子供が「お腹が痛い」と言った時には、次の事を調べましょう。 便秘をしているのか下痢をしているのか・便秘ならばいつからでまったく出ないのか下痢ならば水のような下痢か軟らかい程度なのか・お臍を中心に何処が痛いのか・痛み方は刺すように痛いのか重苦しく痛むのか。 そして、顔色や汗が出ているのかなど、思いつく限り落ち着いて(これが難しいのですが)メモをしましょう。そのメモがあるのと無いのとでは、患者本人を見れない状況で選べる薬の種類が格段に違います。 現代であればカメラ付き携帯電話などもあるので、それで患者本人を撮影しておくというのも1つの手ですし、子供に電話するかもしれないと言っておいて、お店から電話をして直接お話をさせてもらうのも助かります。 たった一言で表現される“腹痛”ですが、難しい症例だという事を知っておいてもらえれば幸いです。 いずれ、胃腸に関する症例はまた取り上げたいと思います。 参加していただき、本当にありがとうございました。 解説:北村俊純 |
参加者コメントより ききたん・女性 漢方薬は自然から作られた製品なのでとても安心して使えると思います。一時的な効果ではなくて、根本から体質を改善し、健康体へと導いてくれる商品だと思っています。それなので私は市販品を選ぶときにもなるべく漢方薬を選ぶようにしています。 ぜひ漢方薬を試して下さい。でも、過度に期待する事もしないようにして下さいませ(・v<)(北村) 杉田明子・女性 大変楽しく拝見させていただきまして、どうもありがとうございました。またちょくちょく足を運ぼうかとも思いますので、よろしくお願いします。 今後ともよろしくお願いいたします。面白そうな企画のアイデアもありましたら、ぜひ教えて下さい。(北村) teror・男性 いろいろな漢方薬があることを知った。基本的には通常の合成?薬品は体の免疫低下などを起こしようで使わないが、漢方薬なら、もともとが自然界のものなので、今後は少し使用を考えてみようと思った。 どちらか一方だけにこだわる必要は無いので、現代薬と漢方薬とを臨機応変に使っていただければと思います。(北村) |