第5回 「病証における実証と虚証」

 今回と次回は、少し難しい話になります。
 分かりやすいようにしようとは思いますが、不明な点がありましたら遠慮なく質問して下さい。


 漢方では、人体に障害を与える「病邪」が人体の防御能力「正気(せいき)」に勝ってしまうと病気が発生し、正気が病邪に勝れば回復すると考えます。 しかし、この病邪と正気との関係は相対的なものであって、正気が充分でも、それ以上の強力な病邪に襲われれば発病しますし、病邪の力が弱くても、それ以上に正気が衰退していれば、やはり発病してしまいます。 そして、病邪が強力であるか正気が衰退しているかは、次のように「実証」と「虚証」という言い方で区別されます。

正気が病邪に勝る。

回復する。または発病しない。

病邪が正気に勝る。

発病する。

正気は正常でも病邪が強すぎる。

実証

病邪は強力ではないが正気の衰退が激しい。

虚証

実証
 正気はそれほど衰退していないにもかかわらず、病邪が強力すぎるために起きている病証を「実証」といいます。
 実証を引き起こす病邪には、気候の急変化・激しい感情・食事の不節制・代謝異常物質の停滞などがあります。

虚証
 実証とは逆に、病邪はそれほど強力ではないが、正気が衰退しているために起きる病証、つまり防御能力の低下が主要な原因となっている病証を「虚証」と呼びます。そして正気が衰退する原因には、過労・先天的虚弱・慢性疾患・飲食物の摂取不足などがあります。

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