• タグ別アーカイブ: 加味逍遥散
  • 漢方薬の適応の判断材料は色々

     やや高齢のお客様から『白虎加人参湯』の問い合わせを受けたが、うちのお店では入荷ルートがないことを伝えた。
     舌痛症に使いたいとのことだったが、舌を見せてもらうと舌に歯形が残ってるので適用しないと考えられることを伝えた。
     こういう診察みたいな真似は本来は良くないとはいえ、漢方薬の適応の判断材料にはどうしても必要なのが悩ましいところ。
     お客様は以前に病院からは『加味逍遥散』が処方されていたことがあるものの、合わなかったため現代を処方されていると分かり調べたところ、イミノベンジル系の抗精神薬病だった。
     舌痛症は抗うつ剤で約70%が改善するというデータもあるようだから、まずはこのまま病院での治療を優先して良いのではないだろうか。
     しかしお客様は漢方薬を希望されているようだったので、近所の漢方薬に詳しい病院も紹介してみたのだが、どうしても何か買っていきたいと粘られ、口の渇きがあるというお話から『消風散』『黄連解毒湯』を紹介し、後者をお買い上げいただくことになった。

     お客様から捻挫の相談を受け、足の甲が下になるぐらい捻ってしまったそう。
     昨日のことだったのでまずは強めの薬から使って、症状に合わせて弱い物に乗り換えるようお話して、ジクロフェナクトリウム製剤を勧め、痛みが弱くなったらフェルビナク製剤をと紹介した。
     すると、ロキソニン製剤は無いかと訊かれ強く希望されたため、近くの薬剤師のいるドラッグストアーを紹介した。
     ただ、ロキソニンは痛み止めとしてそこまで優位性があるわけではないことは伝えた。
     ロキソニンが第1類医薬品なのは、効き目が強いからというよりは副作用のリスクが高いからなので。

     

  • 加齢による頻尿は腎臓の機能低下

     やや高齢の常連のお客様は、以前に頻尿に『当帰芍薬散』を病院から処方されており、中医学を学んだという別な医師から『牛車腎気丸』を勧められたそうで、その内容を尋ねられた。
     その医師に、どうして訊かなかったのか(^_^;)
     いや、説明を受けたけど難しかったのだろうか。
     幼い子供がトイレを我慢できずにお漏らししてしまうのは、本人の自意識でのコントロールだけでなく、内臓のうち腎臓の発育が未熟なためであり、年を取ってきて頻尿になるのは腎臓の機能が低下してくるからで、名前に腎の字が入っている『牛車腎気丸』は、その機能を補助することで、頻尿だけではなく加齢によるかすみ目といった複数の症状に対応することを説明した。
     あとお客様は、病院から『桂枝茯苓丸』『加味逍遥散』を処方されていたことがあり、今は服用していなくて余っているため、友人にあげて良いか尋ねられた。
     薬は、患者さんとの適用を見極める必要があるので、好ましくありませんとお答えした。
     世の中には、「これが良いのよ」とか「私も効いたから」と気軽に薬を人に分けてあげちゃう人がいるから困る。

     『アスコラルL』をレジに持ってきた、やや高齢のお客様に症状を尋ねると、以前に腰痛で病院から処方されていた『モーラステープ』と同じ物と思っているようなので、鎮痛効果は弱いことを説明した。
     今回は膝の痛みだそうだが、以前に腰痛に『疎経活血湯』を案内したことがあるお客様で、腰痛の方は良くなったそうだ。
     確かその時には、動悸もあるというお話だったが、それも『疎経活血湯』で落ち着いたらしい。
     しかし、仕事をするようになって脹脛(ふくらはぎ)が痛み、病院で膝に水が溜まっていると診断されているというので、患部を温めて水分による冷えを解消する『桂枝加苓朮附湯』と水分代謝を改善する『防已黄耆湯』を紹介したうえで、担当医に相談してみるよう勧めたところ、どうも相談しにくいらしいため漢方薬に詳しい病院を紹介した。

     

  • 子供のストレスは馬鹿にできない

     お客様から、中学生の子供の口角炎の相談を受け、『モリアップW』を案内し、お買い上げいただいた。
     ただ、口角炎によくなるというので、胃炎を起こしやすいのではないかということと、その原因にストレスがあるかもしれませんと伝えた。
     友達関係とか受験とか子供のストレスは馬鹿にできないのだが、案外と見過ごされやすい。
     今回は提示しなかったけど、内服薬に『半夏瀉心湯』なんかが候補になる。

     『大柴胡湯』を購入されるお客様に使用経験を尋ねたところ、初めてとのこと。
     便秘や入眠困難などは無いそうだが、そのままお買い上げいただいた。
     ただ、随伴症状が無いことからすると、体格的にも『防風通聖散』のほうが適用するようにも思えた。

     『ロキソニン』を求めてお客様が来店したが、周辺のドラッグストアーも薬剤師が退勤している時間のため、本日中の入手は難しいことを説明した。
     そして、化学構造式が似ているイブプロフェンの『イブ』が代用になるかもしれないことをお話して納得していただけた様子だが、本日はお買い上げは無し。

     『加味逍遥散』を購入されるお客様に使用経験を尋ねると、以前にも使ったことがあるとのこと。
     継続していた訳ではないようだが、肉体的よりも精神面での症状に向いているため、やや神経質そうに見受けられるお客様には適用していると思われた。
     今日は、普段動かない『加味逍遥散』が2人目。
     気圧の関係も、あるのかもしれない。

     

  • 安静にしていて起きる動悸は疲労が原因の一つ

     テレビで漢方薬の特集を見たとのことで、二十歳の娘さんの生理痛の相談を受けた。
     普段は『ロキソニン』を使用しており、テレビでは『当帰芍薬散』のみを取り上げていたようなので、『桂枝茯苓丸』も紹介して、うちのお店には置いていないものの、両者を合方した『婦人華』という物もあることを説明した。
     また、生理痛の痛み止めとして現代訳では『エルペインコーワ』も案内した。
     これは鎮痛剤だけではなく、子宮の収縮による痙攣も抑える成分が入っており、鎮痛剤単体よりも効果を期待できる。
     他に、お客様自身の動悸についても相談され、安静にしていても起きるものの病院の検査では不整脈以外は無く、更年期障害かもとのことから『加味逍遥散』を紹介した。
     動悸の原因の一つとして、疲労などにより心肺機能が低下したことにより、かえって心臓が頑張ってしまっているということがある。
     『加味逍遥散』の効き目は穏やかだが、優しくマッサージすることで疲労を取るように作用し、心臓に無理して頑張らなくても良いんだと気づかせる。
     まずは二人で、『当帰芍薬散』を試していただくことになった。
     鎮痛剤の多用は、体が次第に慣れてしまって将来的に大病したときに効きが悪くなり困るかもしれないことを伝えた。
     ところで、そのテレビ番組では風邪だからといって『葛根湯』とは限らないという話もやっていたらしい。
     ううむ、見ておきたかったな。

     お客様から、『ルルA錠』と『新ルルAゴールド』の比較を尋ねられたが、主訴は悪寒と頭痛と関節痛だというので、『ルルアタックFX』の方が適応すると考えられることをお話したうえで、発熱前であれば『葛根湯』をと提案したところ、興味を持たれたため、発熱時の『麻黄湯』と解熱後の『柴胡桂枝湯』も紹介した。
     出先に持ち歩くには粉が便利なことをお話してみたけれど、苦手とのことで今回は『葛根湯』の液剤を購入された。

     

  • テレビでの情報は再確認を

     テレビで漢方薬の特集を見たというお客から、成人の娘さんの成生理痛の相談を受けた。
     番組では、風邪だからといって『葛根湯』とは限らないという話もやっていたそうで、それはちょっと見てみたかった。
     娘さんは普段は『ロキソニ』を利用しており、テレビでは『当帰芍薬散』のみを取り上げていたようなので、『桂枝茯苓丸』も紹介し、併用する使い方もあることを説明した。
     一概には言えないが、『当帰芍薬散』は肌が色白あるいは蒼黒く疲れやすい血行不良のタイプに適応し、『桂枝茯苓丸』は普段は体力がありシャキシャキとしていて、しかし動くのをやめると額に汗をかきながら手足が冷えているようなタイプに適応する。
     いずれも、生理予定日の一週間前くらいから服用しておくと、生理痛や随伴症状を軽減することが期待できる。
     また、生理痛の痛み止めとして現代薬の中では『エルペインコーワ』が、生理時の子宮の収縮による痙攣を抑える成分も入っているので、鎮痛薬だけよりも効果的なことをお話した。
     他に、お客様自身の動悸についても相談され、安静にしていても起きるものの、検査では不整脈以外は無く更年期障害かもというお話から、『加味逍遥散』を紹介し、まずは二人で『当帰芍薬散』を試していただくことになった。
     あと、娘さんについては鎮痛剤の多用は、将来的に鎮痛剤の効き目が鈍くなったり、生理痛が重いのが当たり前と思っていると大きな病気を見逃す可能性もあるので、定期的に病院での検診を怠らないようにと伝えた。

     お客様から、『新ルルA錠』と『新ルルAゴールド』の比較を尋ねられたが、主訴は悪寒と頭痛と関節痛ということなので、発熱前であれば『葛根湯』をと提案したところ興味を持たれたので、発熱時の『麻黄湯』と、解熱後の『柴胡桂枝湯』も紹介した。
     出先に持ち歩くには顆粒が便利なことをお話ししたが、苦手とのことで『葛根湯』の液剤を購入された。
     『葛根湯』は、悪寒などの予感がした段階で早め早めに服用して、時に空振りするくらいのタイミングで服用するのが効果的なれど、仕方ないか。

     

  • 女神散(にょしんさん)
    ………産前・産後の神経症、月経不順、血の道症


    適応症状

     のぼせと眩暈(めまい)のあるものの次の症状:
     産前・産後の神経症、月経不順、血の道症

    用方・容量(顆粒製品の場合)

     1日3回、成人1回1包(3.5g)を食前にお湯または水で服用してください。
     ただし、15歳未満7歳以上は2/3包、7歳未満4歳以上は1/2包、4歳未満2歳以上は1/3包。

    組成(顆粒製品の場合)

     3包(7.5g)中、次の成分を含みます。
          香附子(コウブシ)3.0g     甘草(カンゾウ)1.0g
          人参(ニンジン)3.0g      黄ごん(オウゴン)1.0g
          川きゅう(センキュウ)2.0g   檳榔子(ビンロウジ)2.0g
          蒼朮(ソウジュツ)2.0g     丁子(チョウジ)1.0g
          黄連(オウレン)1.5g      桂皮(ケイヒ)0.5g
          当帰(トウキ)1.5g       木香(モッコウ)2.0g
     以上の割合に混合した生薬より得たエキス4.5g含有します。

    類似処方鑑別

    加味逍遥散 動悸、不眠、精神不安など、種々の精神神経症状は似ているが、体質的に虚弱で、季肋部および下腹部に軽度の抵抗・圧痛を認める場合に用いる。

    桂枝茯苓丸 体力中等度の人で、肩こり、頭痛、のぼせなどの精神神経症状は比較的軽く、下腹部に抵抗・圧痛がある場合に用いる。

    桃核承気湯 体力が充実した人で、のぼせ、頭痛、めまい、不眠、不安などの精神神経症状がいっそう激しく、便秘傾向があり、下腹部の抵抗・圧痛が顕著に認められる場合に用いる。

    温清飲 体力中等度以下の人で、のぼせ、手足のほてり、神経過敏などはあるが、精神神経症状は本方ほど多彩でなく、やや軽症の場合に用いる。

    使用上の注意

    1.次の場合には医師または薬剤師に相談してください
     (1)本剤を服用後、症状の改善が認められない場合は、他の漢方薬を考慮する事。
     (2)甘草を含有する漢方薬を長期服用する場合は、血清カリウム値や血圧の測定などを充分に行い、異常が認められた場合は、服用を中止する事。
     (3)複数の漢方薬を併用する場合は、含有生薬の重複に注意する事。(特に甘草を含有する漢方薬の併用には、より注意を必要とする。)
     (4)妊婦および妊娠している可能性のある人には慎重に投与する事。


    2.副作用
     (1)電解質代謝:長期連用により低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重の増加等の偽アルドステロン症が現れる事があるので、観察を充分に行い、異常が認められた場合には投与を中止する事。また、低カリウム血症の結果としてミオパチーが現れる事がある。
     (2)消化器系:下痢、腹痛、食欲不振等の胃腸障害を起こすことがある。


    3.保管及び取扱い上の注意
     (1)小児の手のとどかない所に保管してください。
     (2)直射日光をさけ、なるべく湿気の少ない涼しい所に保管してください。
     (3)1包を分割した残りを使用する場合には、袋の口を折り返して保管し、2日以内に使用してください。


    4.その他
     本剤は生薬(薬用の草根木皮等)を用いた製品ですので、製品により多少色調等が異なることがありますが効能・効果には変わりありません。


     

  • 加味逍遥散(かみしょうようさん)
    冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症

    適応症状 

     体質虚弱な女性で肩がこり、疲れやすく、精神不安などの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の症状:
     冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症

    用方・容量(顆粒製品の場合) 

     1日3回、成人1回1包(2.5g)を食前にお湯または水で服用してください。
     ただし、15歳未満7歳以上は2/3包、7歳未満4歳以上は1/2包、4歳未満2歳以上は1/3包。

    組成(顆粒製品の場合) 

     3包(7.5g)中、次の成分を含みます。
      さいこ(柴胡)3.0g     
       しゃくやく(芍薬)3.0g
      そうじゅつ(蒼朮)3.0g    とうき(当帰)3.0g
      ぶくりょう(茯苓)3.0g    
      さんしし(山梔子)2.0g
      ぼたんぴ(牡丹皮)2.0g   かんぞう(甘草)1.5g
      しょうきょう(生姜)1.0g   はっか(薄荷)1.0g
     以上の割合に混合した生薬より得たエキス4.0g含有します。

    類似処方鑑別 

    補中益気湯
     体力消耗が著しく、下肢倦怠感、下痢、盗汗があり、神経不安の無い場合に用いる。

    当帰芍薬散
     
    顔色がすぐれず、下腹部に抵抗・圧痛があるが、季助部にはそれらが無い場合に用いる。

    小柴胡湯
     神経症状が乏しく、右季助部の抵抗・圧痛がより明らかな場合に用いる。

    使用上の注意 

    1.次の場合には医師または薬剤師に相談してください
     (1)本剤を服用後、症状の改善が認められない場合は、他の漢方薬を考慮する事。
     (2)甘草を含有する漢方薬を長期服用する場合は、血清カリウム値や血圧の測定などを充分に行い、異常が認められた場合は、服用を中止する事。
     (3)複数の漢方薬を併用する場合は、含有生薬の重複に注意する事。(特に甘草を含有する漢方薬の併用には、より注意を必要とする。)
     (4)長期運用により低カリウム血症、血圧上昇などが現れる場合があるので観察を充分に行う事。


    2.服用に際して、次のことに注意してください
     (1)定められた用法、用量を厳守してください。
     (2)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させてください。
     (3)本剤は、2歳未満の乳幼児に服用させないでください。


    3.服用中または服用後は、次のことに注意してください
     (1)本剤の服用により、発疹・発赤、かゆみ、悪心、食欲不振、胃部不快感等の症状があらわれた場合には、服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。 
     (2)本剤を服用することにより、尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる、血圧が高くなる、頭痛等の症状があらわれた場合には、服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
     (3)1ヵ月位(感冒、鼻かぜ、頭痛に服用する場合には、数回)服用しても症状の改善がみられない場合には、服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
     (4)長期連用する場合には、医師または薬剤師に相談してください。


    4.保管及び取扱い上の注意
     (1)小児の手のとどかない所に保管してください。
     (2)直射日光をさけ、なるべく湿気の少ない涼しい所に保管してください。
     (3)1包を分割した残りを使用する場合には、袋の口を折り返して保管し、2日以内に使用してください。


    5. その他
     本剤は生薬(薬用の草根木皮等)を用いた製品ですので、製品により多少色調等が異なることがありますが効能・効果には変わりありません。

     

  • ≪第7回≫疎経活血湯

    漢方薬症例クイズ≪第7回≫

     実際の症例を元に、患者さんの症例データーを提示します。
     “書いてある内容”から推理して、適応すると考えられる漢方薬の名前を当てて下さい。
     基本的に当店で扱っている漢方薬としますが、解答としては必ずしも限定しません。「なるほど、その方法もあるか」と思われる解答であれば、正解とする事があります。(生薬のみや民間療法などは除外します。)
     正解者の中から、抽選で2名様に『切子タンブラーペアを進呈いたします。
     絶対の正解というものはありませんのであくまで、“あそび”として楽しんでいただければと思います。
     皆様の参加をお待ちしています。(終了しました)

    切子タンブラーペア

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     どこか懐かしい雰囲気を持ちながら、現代的なセンスを漂わせる切子タンブラーのペアを、2名様にプレゼントいたします。

    募集期間:~7月26日(月)
    正解発表予定:7月30日(金)

    問題
     女性。43歳。
     主訴は、背中と肩のこり、痺れ感と痛み。
     体格は中肉中背で、肌に艶が無い。ややのぼせを感じる一方で貧血気味であり、疲労感があるとの事。舌は、やや白苔。
     来店時は1月で、昨年の夏に冷房の強い職場で仕事をしていて、肩から背中にかけて痺れを感じるようになった。特に左側が痺れる感じ。
     コーヒーが好きだが、お腹が冷えやすいのでホットで飲むようにしている。 
     詳しくお話を聞いた中で、数年前に卵巣を片方摘出している事を知らされた。
     漢方薬を服用してもらったところ、半年余り続いていた症状が1週間程度の服用で改善し、それからも量を減らして継続中。
     この患者さんには、どの漢方薬を選んだか?

    正解
     
    正解疎経活血湯です。
     当選したのは、以下の2名の方です。おめでとうございます。
      ※ともっちママ様…選んだ理由:「痺れ感と痛み」に効くのはこれだ!!と思いました。私ならこの漢方で治します!!

      正解者が1名でしたので次選の漢方薬として、婦人華を挙げられましたもんもこ様を当選とさせていただきました。正確には婦人華は漢方薬名ではなく商品名なのですが、選んだ理由が適当すると判断しました。   もんもこ様…選んだ理由:年齢やのぼせ、肩こりの症状があり卵巣を片方摘出していることから、更年期障害と思われ肩こりや貧血・冷え性・のぼせに効く婦人華が最適と思いました。

    解説
     
    さらりと書いてありますが、卵巣を摘出したという部分には注目しておかなければなりません。
     卵巣などの女性特有の器官に限らず、手術を経験している人は必ず術部がお血(おけつ)を起こしていると考えられるからです。
     その部分が女性特有の器官である事を考えると、年齢に関係無く更年期障害同様の症状が現れている疑いがあります。
     そして、そのうえで主訴を診ていくと、肩こりは肩が張るとか重いというものではなく、痺れる傾向を訴えており、これは正座をした時に血行が悪くなって痺れるというのと同じ状態なのだろうと推察できます。
     同様に肌に艶が無いという事は、血行不良である事を補強していると考えられ、のぼせがある貧血症状は、体温を一定に保つと共に栄養素を全身に行き渡らせるという働きを血液が順調に果たしていないという状態を示しています。
     これらを総合すると、お血を取り除き血流を良くする漢方薬をと考えるのは極めて適切ですが、忘れてはならない事があります。
     それは主訴として痛みも訴えており、まずはそれらの“苦痛”を先に取り除くという事です。
     漢方薬を学んでいく課程で、ついつい“根治治療”をしようとして、患者さんが今現在苦しんでいる症状を「元が治れば楽になるから」と後回しにしてまいがちです。しかし、やはり患者さんを早く楽にしてあげる方法を検討しなければならないでしょう。
     そこで、痛みを取り除くと共に血流も改善する漢方薬として、疎経活血湯を用いました。
     疎経活血湯の効能は神経痛や筋肉痛などの治療な訳ですが、その名前に血流を良くする“活血”という意味の言葉が付いている事を憶えておくと良いでしょう。

    補足
     やはり、患者が女性である事、卵巣を摘出しているという点から、婦人病疾患として解答された方が多かったです。
     代表的な漢方薬としては、次のような物がありました。
     まず加味逍遥散ですが、主に胸脇部から腹直筋上部の緊張と炎症を取り除き、血液の循環を良くする作用があります。しかし、加味逍遥散を用いる場合は、のぼせによるイライラであるとか不安感などの精神神経症状を伴う場合を目標にした方が適切だと思われます。貧血気味で肌に艶が無い点から四物湯を合方するという方法を挙げた方もいらっしゃいます。確かに四物湯を合わせると血流をより良くする当帰と、痛みを和らげる芍薬が加わるので、加味逍遥散を単独で用いるよりは良いでしょう。ただ、今回の患者さんの主訴にある痺れや痛みを取り除くのには、それでも効き目が弱いだろうと考えられます。
     当店では扱っていない漢方薬ですが、婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)という解答もありました。
     更年期障害に用いる漢方薬で、解答者の方もやはり婦人病で調べたようです。婦宝当帰膠は十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)を基にした処方で、その特徴は「血の虚」(貧血)を治し、「気の虚」(元気の衰退)を治す事だとされています。すなわち更年期障害が、著しい疲労感や精神的な落ち込みとして現れ、衰弱している場合に用いるのに適しています。今回の患者さんの場合は、そこまでの訴えは無く、また主訴の改善には適しません。
     病院で更年期障害に対して処方される事が多いのは、なんといっても当帰芍薬散でしょう。眩暈(めまい)や肩こりなど、更年期障害の不定愁訴を広範囲にカバーできる漢方薬ですので、迷った時にはまず当帰芍薬散を試してみて、それからより適した漢方薬を探すという使い方もできます。また、含まれている生薬のうち沢瀉(たくしゃ)以外は温性なので、冷え性の場合に効果を発揮します。ただ、今回の患者さんの場合は体質的に冷えやすい傾向にあるものの、のぼせも感じているので単品で用いるのは避けておいた方が無難です。
     一方、解答として挙げている人はいなかったのですが、桂枝茯苓丸も候補にはなると思われます。当帰芍薬散と同じく更年期障害による眩暈や肩こりに使われ、当帰芍薬散が適応する人とは反対に、のぼせの傾向が強い人に用います。おそらく候補として挙がらなかったのは、あくまで今回の患者さんの症状の原因は冷えにあると皆さんが考えたからでしょう。
     そこで、少々変則的ではあるのですが、冷えのある人にものぼせのある人にも、どちらにでも効くようにと開発された婦人華です。当帰芍薬散桂枝茯苓丸を合わせて、さらに通経・鎮静・鎮痛の目的で汎用されているサフランと、血液の循環を良くし、衰えている器官や組織を賦活するビタミンEを加えた製品ですので、体質と症状共に、かなり広い範囲をカバーできて便利に使用できるという点において他の処方よりも有効だと考えました。
     さて、婦人病疾患とは別に痛みを主眼に解答された中で一番多かったのは、桂枝加朮附湯でした。この漢方薬は上半身を温める力が強く、寒証者向きの人の神経痛に適応するので、候補として挙がるのは当然だろうとは思います。しかし繰り返し述べているように、お血を取り除く事を考えると、桂枝加朮附湯の生薬成分は鎮痛と温める効果のみに偏っており、また、汗の出やすい水分代謝に異常のある人や、基礎体力からして弱い人に向いています。なので、今回の患者さんのケースで当帰芍薬散と比較した場合は、当帰芍薬散の方が適応するでしょう。
     それから、 「肩こりには葛根湯」と云われるように、一般的には風邪と並んで使われる機会が多い葛根湯という解答がありました。その中には、患者さんの舌が白苔で温かい物を飲みたがるのは寒証だと読み、身体を温めて肩から背中にかけての強ばりにも効く物として葛根湯を推挙された方もいらっしゃいました。解説で書いたように、患者さんの症状を早く取り除くという観点から見れば、葛根湯は臨床的にも服用後の効果の発現が30分前後と早い事が証明されているので間違いではないのですが、一方で、どちらかというと急性症状の初期にこそ有効であるものの、今回のように中長期化している症状に対しては効き目が弱いという報告があるため、候補からは除外されます。葛根湯の効能にある肩こりなどは、風邪などの急性疾患による随伴症状に用いる物として考えた方が適切です。
     最後に、問題の中の「コーヒーが好きだが、お腹が冷えやすいのでホットで飲むようにしている。」という部分は、直接的ではないにせよ、この患者さん自身が症状に対して非常に好ましくない事をしているという点は見逃してはなりません。コーヒーは暑い地域で涼感を得るために飲まれているように、たとえホットで飲んだとしても体を冷やしてしまいます。発症のキッカケが冷房であった事、お腹が冷えやすいと自覚している事からすると、コーヒーが治療の妨げになる事を知らせる必要があります。かといって、好きだという物を無理にやめさせると、それがストレスとなってしまい弊害があります。そのため、今回の患者さんには影響が最小限になるように、夜間のコーヒーは控えて、後で体を動かす事が確実な朝に飲むように勧めました。
     漢方薬に限りませんが、薬の効果が思わしくない場合には、薬の変更と共に、他に阻害している要因が無いかも考えましょう。

    解説:北村俊純

    参加者コメントより
     寺山雄一郎:水出しコーヒーおいしく飲ませていただきました。
     それは、なによりでした。また何か美味しい物を見つけたら、賞品にしてみようと思います。

     鈴木陽子:漢方薬を選ぶのは本当に難しいですね。日々勉強が必要だと思いました。
     病気になるリスクは誰にもありますので、自分で知る事はやはり大切ですね。

     ともっちママ:私自身、冷え性なので漢方にとても興味があり、こちらのホームページでも勉強中です!
     冷え症の人は多いだけに、その原因も治療法も様々です。ご自分に合う治療法なり漢方薬が見つかるよう及ばずながら協力できたらと思います。

     もんもこ:とっても面白いクイズでした。貴サイトは症状で検索できるので何が効くか、判りやすくていいですね。これからも体調が悪いときは利用したいと思います。
     参加していただきありがとうございます。一応、症状で検索したいという要望がありましたので対応しましたが、症状だけでは判別できない事もありますので、今後ともお役に立てる情報を提供していくつもりです。どうぞ、ご利用下さい。

     

  • ≪第6回≫黄連解毒湯とよく苡仁

    漢方薬症例クイズ≪第6回≫

     実際の症例を元に、患者さんの症例データーを提示します。
     “書いてある内容”から推理して、適応すると考えられる漢方薬の名前を当てて下さい。
     基本的に当店で扱っている漢方薬としますが、解答としては必ずしも限定しません。「なるほど、その方法もあるか」と思われる解答であれば、正解とする事があります。(生薬のみや民間療法などは除外します。)
     正解者の中から、抽選で3名様に『水出しアイスコーヒーパック2コ入りを進呈いたします。
     絶対の正解というものはありませんのであくまで、“あそび”として楽しんでいただければと思います。
     皆様の参加をお待ちしています。(終了しました)

    水出しアイスコーヒーパック

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     1リットルの水に1パックを一晩(約8時間)漬けておいて、コーヒーの成分を水に自然に溶け出させる、『水出しアイスコーヒー』です。
     沸騰させたお湯で入れるのとは違い、コーヒー本来の甘味が出るので砂糖もミルクも入れずに、コーヒーの旨味をあますところなく楽しめます。
     当選者の方には、販売元であるコーヒー専門店『こらんしょ』から、水出し用に挽いてもらった豆のパックを直接配送させていただきます。

    募集期間:~6月28日(月)
    正解発表予定:6月30日(水)

    問題
     女性。25歳。
     主訴は、日焼け。
     日差しの強い日に、うっかり日焼け止めクリームを塗らずに外出したら、思った以上に日焼けしてしまった。
     顔は真っ赤に腫れて、分泌物が滲んできている。
     患部はヒリヒリと熱感があり、咽喉も渇きやすいという。上半身に火照りを感じるが、暑気当たりのように食欲が落ちたりはしていない。
     まずは皮膚の炎症を抑える必要があるだろう。
     そして、シミになる事を気にしているようなので新陳代謝を活発にして皮膚の再生を促進させるために、別な漢方薬も合わせる事にした。
     組み合わせた2種類の漢方薬は、何と何か。

    正解
     
    正解黄連解毒湯よく苡仁です。
     両方を一緒に答えた方はいらっしゃらなかったので、まず黄連解毒湯を挙げた方を正解としました。
     当選したのは、以下の2名の方です。おめでとうございます。
    wara納豆様…選んだ理由:ほてりをとり、新陳代謝を活発化する。(他に加味逍遥散)
    エド様…選んだ理由:炎症を防ぎ、体の代謝を活発にするため。(他に清上防風湯)

     次選の漢方薬としては、白虎加人参湯が適していると考えられるので、解答された以下の方を当選とさせていただきました。
    齊藤 誠様…選んだ理由:炎症を防ぎ、体の代謝を活発にするため。(他に消風散)

     また、今回は外用薬を想定していませんでしたが、紫雲膏桂枝茯苓丸を解答された方がいました。適切な治療と考えられますので当選枠を拡げて、同じく当選とさせていただきました。
    寺山雄一郎様…選んだ理由:火傷に一番効くのは紫雲膏を患部に直接塗ることである。シミ防止のために桂枝茯苓丸を服用する。

    解説
     通常の日焼けにおいては、体表部の熱を取り除き、体内が乾燥状態になるのを防ぐ事が治療の目標となります。
     しかし、今回の患者さんのケースでは患部から分泌物が滲んできており、さらに感染症の予防と皮膚への栄養補給が必要となります。
     一方、咽喉の渇きから体内の乾燥も考えられるのですが、食欲は落ちていないようなので、幸いにして暑さにやられながらも暑邪による体内への影響が軽度であったと思われます。これは同時に、全身ではなく上半身、特に顔の部位の症状が顕著な事を意味しています。
     そこで体表部の熱を取る事よりも、上半身の熱を降ろす事に重点を置いて治療します。そのために用いるのが黄連解毒湯です。
     そして、分泌物が滲んでいるという事は体内に雑菌が侵入しやすい状態なので、名前の通り解毒作用が期待できます。
     また、黄連解毒湯は脳卒中の予防効果があり、高血圧による精神不安や不眠を改善する事から、日焼け後の興奮を鎮めるのにも役に立ちます。
     さて、次にシミの予防として新陳代謝を活発にする場合、血行を良くする事が先決となります。
     しかし、今回の場合は明らかに表皮は火傷に近い状態で、体内から皮膚が再生するのを待たなければなりません。
     そのため、直接的に皮膚の材料となる物が必要となります。
     そこで、近年では美白効果も期待されている、よく苡仁を用いる事にしました。

    補足
     まず黄連解毒湯と併用する場合、加味逍遥散は胸脇部から服直筋上部の緊張と炎症を取る作用があり、さらに血液の循環を促す物ですので、使い方としては良いかもしません。ちなみに、加味逍遥散よく苡仁と併用して指掌角皮症の治療に用いる事があります。
     清上防風湯黄連解毒湯と生薬成分を比べると、実は内容的に近い事が分かります。漢方薬では一般的に、成分の種類が少ないほど効果は鋭くなり、多くなるほど穏やかに効くとされています。それを踏まえると、今回のケースよりも軽度の日焼けに用いるという考え方もできます。いずれにしろ、どちらか一方を服用すれば併用する必要は無いでしょう。
     白虎加人参湯は、実は標準的な日焼けに用いる漢方薬ですので、今回のような上半身のみの症状が顕著というようなケースでなければ、正解となる物です。ただし、石膏(せっこう)が多く入っている点には注意が必要です。石膏は打撲のさいに患部に塗って冷やすのに使うほどですので、これを服用する事は強烈に皮膚を冷やすため、日常的に体力の弱い人や冷え症の人に用いると吐き気などをもよおす事があります。日焼け後に、強い口渇があり、水を1日に何杯も飲むような場合に、短期間だけ用いると良いでしょう。
     消風散は、白虎加人参湯と同じく石膏が入っており皮膚を冷やすのに適しています。同時にそれは、併用を避けなければならない事も意味しています。しかしもっとも重要な事として、消風散の効能書きにある「分泌物が多く」というのは、皮膚疾患の原因が血液循環の不良などによる物の場合で、日焼けは例え分泌物が滲んできていても原因は紫外線による火傷であり、皮膚や体内は乾燥していると考えられるので用いるのは好ましくありません消風散を解答された方が多くいらっしゃいますが、注意して下さい。
     紫雲膏は漢方薬の外用薬で、火傷に用いると効果的です。主成分がゴマ油(胡麻油)なので顔に塗るとなるとベタついて不快感があるかもしれませんが、感染症の予防にもなるので日焼けの初期治療としては、もっとも適切だと思われます。
     そして日焼けの後のシミの原因の1つは、毛細血管が破壊されてお血状態になる事ですので、駆お血剤として桂枝茯苓丸を用いるというのは良い判断でしょう。
     その他に、皮膚の炎症という事で十味敗毒湯という解答もあったのですが、生薬成分の防風(ぼうふう)と荊芥(けいがい)が温めながら炎症を発散するタイプなので、外部からの熱により起きた炎症には適しません。
     ウチのお店では今のところ扱っていないのですが、紫紺エキスと茵ちん蒿湯という解答もありました(茵ちん蒿湯はツムラ製135参照)。紫紺エキスは消炎作用と保湿作用がありますので、外用薬として用いるのは適していると思われます。ただ、今回と比べて症状が軽度の場合の方が良いでしょう。そして、茵ちん蒿湯は生薬成分に黄連解毒湯にも入っている山梔子(さんしし)が配合されているので冷やす作用があるのですが、同時に便秘薬として用いる大黄甘草湯に入っている大黄(だいおう)も含まれています。今回の患者さんは食欲不振は訴えていないとはいえ、日焼けの後には胃腸の働きが低下して下痢になる可能性があります。そのため、下剤としての薬効がある大黄が入っている茵ちん蒿湯の使用は避けておいた方が無難だと思われます。
     変わったところでは、麦門冬湯という解答がありました。肺の潤い不足による咳を止める麦門冬湯を用いるというのは、日焼けの後に肺に熱が篭り、乾燥しやすくなるのを防ぐ事ができると考えられるので、実用的で面白い使い方だと思います。
     効能に日焼けと書いてある漢方薬は無いため難しかったかもしれませんが、基本的に日焼けは火傷と同じですので、急性かつ熱性の皮膚疾患だと考えるのが妥当でしょう。今回の問題は、『漢方薬のお勉強会』『肌のトラブル』が参考になるものとして選びました。
     日焼けは一見すると表面上の症状だけのようにも思われますが、実際には体の中で血液の循環が悪くなったり、熱い空気が溜まったままになったりと体内においても悪い影響を及ぼす事があります。くれぐれも、軽視せずに予防と治療に努めてもらいたいと思います。

    解説:北村俊純

    参加者コメントより
     あゆみき:問題面白かったです!
     ありがとうございます。今回は残念でしたが、ぜひまた挑戦して下さいませ(⌒▽⌒)

     齊藤 誠:もうメンドウなんで薬ウサギに食べられて治せ! あとは皮膚科にいくことを薦めておいてください。
     あはははは、そうですねぇ、食べてもらいましょう(^.^) それと、おっしゃられるように、ちょっと日焼けしすぎたと思ったら「日焼け程度」だと放っておかないで病院に行くのが良いでしょうね。

     

  • ≪第3回≫半夏厚朴湯

    漢方薬症例クイズ≪第3回≫

     実際の症例を元に、患者さんの症例データーを提示します。
     “書いてある内容”から推理して、適応すると考えられる漢方薬の名前を当てて下さい。
     基本的に当店で扱っている漢方薬としますが、解答としては必ずしも限定しません。「なるほど、その方法もあるか」と思われる解答であれば、正解とする事があります。(生薬のみや民間療法などは除外します。)
     正解者の中から、抽選で2名様に『花語まぐかっぷを菊と梅をセットで進呈いたします。
     絶対の正解というものはありませんのであくまで、“あそび”として楽しんでいただければと思います。
     皆様の参加をお待ちしています。(終了しました)

    市田ひろみプロデュース
    花語まぐかっぷ

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     服飾研究家の市田ひろみプロデュースによる、蓋付のマグカップです。
     ティーバックで紅茶などを飲む時に、蓋をして蒸らすと美味しくなると云われています。

    募集期間:4月1日(木)~19日(月)
    正解発表予定:5月1日(土)

    問題
     27歳。男性。
     中肉中背。顔色は普通か、やや白い。
     大学を卒業して、新任教師として高校の教壇に立つ事になった。
     生徒の方を向いて授業ができず、もっぱら黒板に書いてばかりの授業をしてしまうという。
     何とか落ち着いて生徒たちの顔を見て仕事ができればとの事。
     授業時には動悸が激しくなり、エヘンエヘンと咽喉が痞(つか)えている感じがする。
     やや胃の辺りが熱いと感じる事があるが、下痢や便秘などは顕著ではない。

    正解
     
    正解半夏厚朴湯です。
     当選したのは、以下の2名の方です。おめでとうございます。
      ※keikoko様…選んだ理由:検索したら、症例とぴったりいっちしたので。   ※すずき様…選んだ理由:自分の症状と似ているので選びました。私の症状ならこの薬を選ぶと思うので。
      
    まろちゃん様…選んだ理由:患者は新任教師として不安を感じており、動悸が激しくなり、咽喉がつかえている感じがするなどの症状がみられることから。
     
    当選枠は当初2名としていましたが正解者が多かったため、せめてもと1名増やさせていただきました。選考のさいには、答えの漢方薬を選んだ理由が書かれている人の中から抽選いたしました。理由を書いておくと当選率が上がりますので、書くだけ書いた方がお得です(^-^)v

    解説
     名前にも付いている通り、この漢方薬の主役となっている生薬の半夏(はんげ)と厚朴(こうぼく)は、どちらも降下作用があるとされています。そのため、緊張して頭がカーッと熱くなり動悸がするような場合に適応します。
     また、他の生薬の茯苓(ぶくりょう)と蘇葉(そよう)も降下作用がありますので、全体としても鎮静効果のある漢方薬だといえます。
     ただしここで勘違いしてはいけないのは、冷やす作用は無いという事です。どういう事かというと、カッと怒った人に「頭を冷やせ」という言い方がありますが、そういう時のイライラ、すなわち“のぼせ”などには効きません。
     半夏厚朴湯の生薬は全て燥性で、かつ茯苓以外は湿性というのが特徴になります。つまり効果が期待できる体質はそれらと反対の人、上半身に余分な水分があり虚症、あるいは手足に冷えのある人という事になります。
     今回の問題では患者さんの体質に関しては言及せず、あくまで症状のみから推測してもらった訳ですが、実際に選ぶ時には注意が必要です。一番の目安は、「咽喉が痞(つか)えている感じ」でしょう。これは、梅核気(ばいかくき)と呼ばれる状態で、梅のタネが咽喉に引っかかった感じがすると例えられています。
     下痢や便秘などの症状が無い事からすると、正解した方たちの解答は適切だと思います。日常的には顕著な症状は無いのに、発表会や試合などで緊張して上がってしまうような人は、ぜひ半夏厚朴湯を試してみて下さい。

    補足
     その他の解答の中には、サルノコシカケというのもありました。そもそも学問的にはサルノコシカケという物は存在しません。正確にはサルノコシカケ目のマンネンタケ科やサルノコシカケ科に属するキノコの総称で、漢方薬の材料としてはマンネンタケやコフキサルノコシカケが使われているものの、それらに鎮静作用があるという報告は私は知りません。
     半夏厚朴湯黄連解毒湯(おうれんげどくとう)加味逍遥散(かみしょうようさん)と合わせて服用するという解答もあり、これは興味深いところです。黄連解毒湯は主に上半身ののぼせ症状を取り除き胃熱も改善するので、お酒を飲みすぎた場合などに良く用います。そして、加味逍遥散は月経困難や更年期障害における精神不安症状を軽減するのに使われたりします。これらを併用するというのは、選択としては悪くないでしょう。ただ、今回の問題では患者さんはのぼせの症状は訴えていませんし、精神不安というよりは緊張によるものとの推測が成り立つので、まずは半夏厚朴湯を単独で試してもらうのが良いと思われます。
     そして、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)という解答もありました。動悸・息切れ・神経質という症状からすると、あながちハズレとは云えないところです。また、体内の水分の偏りを正常にする働きもあり、その点でも半夏厚朴湯の代わりになるかもしれません。ただ、苓桂朮甘湯は、より内臓への働きかけを目的としており、胃の不快感が強かったり、めまいの自覚症状がある患者に適応すると考えられるので、今回は除外しました。

    解説:北村俊純

    参加者コメントより
    すずき・女性  漢方薬は以前服用していましたが値段が高いので続きませんでした。改善されるのもかなりの時間がかかるんですよね。短時間で体質改善する事は出来ないですかね。
     体質改善というのは、まさに体質そのものを変化させていく事なので、こればっかりは漢方薬でも現代医学でも時間がかかるというのが歯がゆいところです。(北村)

    まろちゃん・女性  素敵なカップのプレゼントに釣られてきたのですが、なんか薬剤師さんかお医者さんになったつもりでクイズそのものも楽しませていただきました。こういう、勉強になるクイズは大歓迎です。来月も挑戦します!性別の選択肢にも心配りが行き届いていて(?)感心しました。ところで、年齢の欄数字を入れるとエラーで先に進めませんでしたので止む無く空欄としましたが、54才です。
     懸賞目的のクイズとしてはやや敷居が高いかもしれませんが、楽しんでいただければ幸いです。
     年齢の欄につきましてはご指摘していただいた箇所を点検したところ不具合の原因が分かり修正いたしました。お知らせしていただき、ありがとうございましたm(_
    _)m(北村)