• タグ別アーカイブ: 杞菊地黄丸
  • 同じ症状のようで原因と対応策は複数あります

     やや高齢のお客様より、『ハルンケア』のご相談。
     最近になって、夜中に2~3回起きてしまう頻尿とのことで、テレビCMで見た『ハルンケア』を気に留められたそう。
     夜中ということだと、冷えや湿気が考えられるので下半身を温める『八味地黄丸』の『ハルンケア』は、適応すると考えられることをお話した。
     すると、効能書きに頻尿には関係無さそうな、かすみ目や腰痛などもあるのが不思議に思えるようなので、糖尿病が失明に繋がることがあるのを例にして、加齢による腎機能の低下が関係することを説明した。
     そして、一日分の『ハルンケア』より、小容量の錠剤の方が費用的には安く済みますと勧めて、お買い上げ頂いた。
     ちなみに、『八味地黄丸』の適応より虚弱な人には『知柏地黄丸』が、疲労感が顕著な場合は『杞菊地黄丸』を、より高齢で不定愁訴の場合には『牛車腎気丸』が候補となります( ・∀・ )ゞ

     『葛根湯』を購入されるお客様に、風邪の場合は発熱したら適応時期を過ぎていることをお話すると、旦那さんの肩こりと、成人の息子さんの鼻炎に使うつもりとのこと。
     いずれも『葛根湯』で対応できるとは思われるものの、詳しくお話を訊くと、旦那さんは自分で風邪だと思い、発熱していないのに総合風邪薬を服用したそう。
     ありゃん(;・∀・)
     発熱していない段階で総合風邪薬を使うと、神経に作用するため疲労してしまうことをお話して、より肩こりに寄せた処方の『独活葛根湯』を紹介した。
     すると、旦那さんは偏頭痛もあるらしく、仕事で車を運転することが多いそうなので、緊張型頭痛の場合に用いる『釣藤散』と、悩みによるストレス性の頭痛に用いる『コリッシュ』(治肩背拘急方)を案内してみた。
     それから、息子さんは花粉症があり、鼻炎は鼻水と鼻づまりの両方を行ったり来たりのようなので、『葛根湯』の変方である『葛根湯加川きゅう辛夷』を紹介した。
     興味を持って聞いてもらえたとは思うけど、とりあえず『葛根湯』は双方に通じる基本処方でもあるので、そのままお買い上げ頂いた。
     お二人ともお風呂には入るそうだから、のぼせ対策に水で濡らしたタオルを頭に乗せるなどして、少しばかり長湯(20~30分)をするよう勧めた。

     

  • 担当医に相談しないんじゃ診察料がモッタイナイのでは?

     お客様から、『キューピーコーワゴールドαプラス』と『パワーアクトゴールドα』の違いを質問された。
     『プラス』は血流改善の当帰が入っていて、『パワーアクトゴールドα』は『キューピーコーワゴールドα』の方と近いことを説明した。
     また、同じ疲れでも、上半身がフラフラするような疲れと、座ると立ち上がるのが辛い下半身の疲れとでは、使用目標が異なるので、必要なときは相談して頂くよう伝えた。
     他に、喉の痛みに『新ルルゴールド』を服用して良いか相談されたため、喉の痛みだけで風邪の兆候が無いようであれば、『ペラックT』などのように喉の痛みに特化した薬の方が良いですよと、お話した。

     3歳児の咳の相談で、お客様が来店。
     以前に、『ムヒのこどもせきどめシロップS』が効かなかったとのことで、「良く効くのを」というご要望だったけれど、強い弱いというより成分との相性もあることを説明し、成分違いのハピコムの『せきどめシロップ』を案内して購入された。
     布団に入ると咳き込むという話から、『五虎湯』も紹介してみたものの、粉薬は飲めないそうなので、候補から外れた。
     うちの次郎は、小皿を使って、お湯に溶いて飲ませてたんだけどねー。
     いずれにしても、与えた薬は成分表示の部分を取っておいて、効いた効かない等をメモしておくよう勧めた。

     やや高齢のお客様から、かすみ目ということで目薬を希望されたため、『スマイル40EXマイルド』を案内して、お買い上げ頂いた。
     そして、加齢によるかすみ目の内服薬として『牛車腎気丸』を紹介したところ、以前に病院で『八味地黄丸』を処方された事があり、服用してもピンとこなかったそうな。
     そこで、改めて担当医に『牛車腎気丸』を相談してみるよう勧めた。
     店頭に『杞菊地黄丸』があれば、そちらも試してもらいたいところなのだけれど。
     入手ルートが、無いものか。

     風邪薬の棚で長く迷っている様子のお客様がいらしたので声を掛けると断られ、『パブロンエースAX』を購入された。
     しかし、お会計の後に症状を尋ねたところ、主訴は喉の痛みで、他に風邪の兆候は無いようだった。
     体内の乾燥か、胃炎の可能性があることをお話して、2日ほど服用しても効果が感じられない場合は、服用を中止して相談して下さいと伝えた。
     私としては、『ペラックT』か『駆風解毒湯』を勧めたいところ。

     高齢のお客様から頻尿に『ハルンケア』を試したいと相談されたけれど、念のため他に服用している薬が無いか尋ねたら、病院で頻尿を治す薬は処方されているという。
     そうでありながら、その薬の内容が分からないそうな。
     ううん、それでは『ハルンケア』を使っていただく訳にはいかない。
     とりあえず、『ハルンケア』は『八味地黄丸』と同じで、保険が適応されることを説明して、担当医に相談するよう勧めた。

     

  • 知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
    ………思考力減退・耳鳴・難聴・性欲の仮亢進(勃起不全・早漏・快感がないなどの機能不全をともなう)・無月経・経血量が少い・無排卵、乳幼児・小児の発育不良、糖尿病

    適応症状 

     頭がふらつく、眩暈(めまい)、耳鳴り、腰や膝がだるく力が無い、口や咽喉の渇き、体の熱感、手足の火照り、寝汗、尿が濃い、便が硬い、舌が赤いものの次の症状:
     思考力減退・耳鳴・難聴・性欲の仮亢進(勃起不全・早漏・快感がないなどの機能不全をともなう)・無月経・経血量が少い・無排卵、乳幼児・小児の発育不良、糖尿病

    用方・容量(顆粒製品の場合) 

     1日2回、成人1回1包(2.5g)を食前にお湯または水で服用してください。
     ただし、15歳未満7歳以上は2/3包、7歳未満4歳以上は1/2包、4歳未満2歳以上は1/3包。

    組成(顆粒製品の場合) 

     2包(5.0g)中、次の成分を含みます。
        チモ(知母)0.65g       オウバク(黄柏)0.65g
       ジオウ(地黄)2.59g      
        サンシュユ(山茱萸)1.30g
       サンヤク(山薬)1.30g     
        ボタンピ(牡丹皮)0.98g
       ブクリョウ(茯苓)0.98g
        タクシャ(沢瀉)0.98g
     以上の割合に混合した生薬より得たエキス1.5g含有します。

    類似処方鑑別 

    六味丸
     熱症状がもう少し弱く、肉体的な疲労が強い場合に用いる。

    八味地黄丸
     
    適応症状が肉体的な疲労などよりも、加齢によるものと認められる場合に用いる。

    杞菊地黄丸
     適応症状が似ているが、目がかすんだり目の乾燥があるなど、目に関する症状が顕著な場合に用いる。

    使用上の注意 

    1.次の場合には医師または薬剤師に相談してください
     (1)本剤を服用後、症状の改善が認められない場合は、他の漢方薬を考慮する事。
     (2)複数の漢方薬を併用する場合は、含有生薬の重複に注意する事。(特に甘草を含有する漢方薬の併用には、より注意を必要とする。)


    2.服用に際して、次のことに注意してください
     (1)定められた用法、用量を厳守してください。
     (2)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させてください。
     (3)本剤は、2歳未満の乳幼児に服用させないでください。


    3.服用中または服用後は、次のことに注意してください
     (1)本剤の服用により、発疹・発赤、かゆみ、悪心、食欲不振、胃部不快感等の症状があらわれた場合には、服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。 
     (2)本剤を服用することにより、尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる、血圧が高くなる、頭痛等の症状があらわれた場合には、服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
     (3)1ヵ月位(感冒、鼻かぜ、頭痛に服用する場合には、数回)服用しても症状の改善がみられない場合には、服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
     (4)長期連用する場合には、医師または薬剤師に相談してください。


    4.保管及び取扱い上の注意
     (1)小児の手のとどかない所に保管してください。
     (2)直射日光をさけ、なるべく湿気の少ない涼しい所に保管してください。
     (3)1包を分割した残りを使用する場合には、袋の口を折り返して保管し、2日以内に使用してください。


    5.その他
     本剤は生薬(薬用の草根木皮等)を用いた製品ですので、製品により多少色調等が異なることがありますが効能・効果には変わりありません。

     

  • 杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)
    疲れ目、かすみ目、のぼせ、めまい、頭重、排尿困難、頻尿、むくみ

    適応症状 

     疲れやすくて、顔・手足がほてり、尿量減少または多尿で、ときに口渇があるものの次の症状:
     疲れ目、かすみ目、のぼせ、めまい、頭重、排尿困難、頻尿、むくみ

    用方・容量(顆粒製品の場合) 

     1日3回、成人1回1包(2.5g)を食前にお湯または水で服用してください。
     ただし、15歳未満7歳以上は2/3包、7歳未満4歳以上は1/2包、4歳未満2歳以上は1/3包。

    組成(顆粒製品の場合) 

     3包(8.1g)中、次の成分を含みます。
        クコシ(枸杞子)1.5g
        キクカ(菊花)1.5g
         ジオウ(地黄)6.0g
        サンシュユ(山茱萸)3.0g
         サンヤク(山薬)3.0g
        ブクリョウ(茯苓)2.25g
         ボタンピ(牡丹皮)2.25g
        タクシャ(沢瀉)2.25g
     以上の割合に混合した生薬より得たエキス6.0g含有します。

    類似処方鑑別 

    六味丸
     のぼせが少なく、疲れやすくて尿量減少または多尿で、時に口渇があり、排尿困難や頻尿な場合に用いる。

    八味地黄丸
     
    疲労倦怠感著しく、尿利減少または頻数で、口渇し、手足に交互的に冷感と熱感のある場合に用いる。

    使用上の注意 

    1.次の場合には医師または薬剤師に相談してください
     (1)本剤を服用後、症状の改善が認められない場合は、他の漢方薬を考慮する事。
     (2)複数の漢方薬を併用する場合は、含有生薬の重複に注意する事。
     (3)自覚的に熱感のある患者、または肥満体質の患者。(熱感、ほてり、発汗、しびれ等の症状が現れる場合がある。)
     (4)著しく胃腸虚弱な患者。(軟便、下痢、腹痛、胃部不快感、食欲不振等の胃腸障害を起こすことがある。)
     (5)妊婦及び、妊娠している可能性のある婦人には慎重に投与する事。


    2.服用に際して、次のことに注意してください
     (1)定められた用法、用量を厳守してください。
     (2)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させてください。
     (3)本剤は、2歳未満の乳幼児に服用させないでください。


    3.服用中または服用後は、次のことに注意してください
     (1)本剤の服用により、発疹・発赤、かゆみ、悪心、食欲不振、胃部不快感等の症状があらわれた場合には、服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。 
     (2)本剤を服用することにより、尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる、血圧が高くなる、頭痛等の症状があらわれた場合には、服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
     (3)1ヵ月位(感冒、鼻かぜ、頭痛に服用する場合には、数回)服用しても症状の改善がみられない場合には、服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
     (4)長期連用する場合には、医師または薬剤師に相談してください。


    4.保管及び取扱い上の注意
     (1)小児の手のとどかない所に保管してください。
     (2)直射日光をさけ、なるべく湿気の少ない涼しい所に保管してください。
     (3)1包を分割した残りを使用する場合には、袋の口を折り返して保管し、2日以内に使用してください。


    5.その他
     本剤は生薬(薬用の草根木皮等)を用いた製品ですので、製品により多少色調等が異なることがありますが効能・効果には変わりありません。

     

  • ≪第11回≫黄連解毒湯、柴胡加竜骨牡蛎湯

     実際の症例を元に、患者さんの症例データーを提示します。
     “書いてある内容”から推理して、適応すると考えられる漢方薬の名前を当てて下さい。基本的に当店で扱っている漢方薬としますが、解答としては必ずしも限定しません。「なるほど、その方法もあるか」と思われる解答であれば、正解とする事があります。(生薬のみや民間療法などは除外します。)
     正解者の中から、抽選で3名様に【ボーノ】ザル付きクッキング鍋を進呈いたします。絶対の正解というものはありませんのであくまで、“あそび”として楽しんでいただければと思います。皆様の参加をお待ちしています。

    【ボーノ】ザル付きクッキング鍋

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     【ボーノ】ザル付きクッキング鍋を、3名様にプレゼントいたします。

    募集期間:~9月5日(月)
    正解発表予定:9月12日(月)

    問題
     男性。34歳。
     職業は農業。
     体格は普通、顔に艶があり、声も大きく張りがある。
     主訴は、鬱病と肩こり。
     通院歴があり、以前に抗うつ剤を服用していた事があるが効果を感じられなかったとの事。
     肩こりは、肩だけでなく首筋や背中もこり、背中はだるく痛みもあるという。
     上半身は熱く、のぼせて目が充血している。
     睡眠はとれるようだが、イライラしやすく癇癪持ちという自覚があり、不安感も強い。
     その他に、立ち眩み、鼻づまり、胸焼けと胃もたれがある。
     以上のことから、まずは上半身の熱を降ろす必要があると考え、それと共に神経を鎮める物を併用する事にした。
     2種類の漢方薬を使い、その後、のぼせが取れ、気分的にも落ちつき、体調が良くなったという。
     それぞれの漢方薬は何か。


    正解
     正解は黄連解毒湯柴胡加竜骨牡蛎湯です。
     両方が揃った正解者はありませんでしたが、もとより幾つかの組み合わせがありますので、特に選んだ理由を記入された方の中から、どちらか一方を答えている方を正解とさせていただきました。
     当選したのは、以下の3名の方です。おめでとうございます。
    寺山雄一郎様…選んだ理由:実証ののぼせには桃核承気湯が効くことがある。実証の鬱病、癇癪には柴胡加竜骨牡蛎湯が効くことがある。
    いっちょん様…選んだ理由:上半身の熱をとる代表として黄連解毒湯、胃腸を整えながら神経を鎮めるものとして抑肝散加陳皮半夏が最適と考えました。
    ペペロンチーノ様…選んだ理由:のぼせの原因が高血圧と見て肩こりや目の充血にも効く釣藤散を、黄連解毒湯はのぼせ気味でイライラする傾向に効果があるので併用するのに良いと思いました。

    解説
     まず上半身の熱を降ろす必要があると考えましたので、降性のうえ寒性があり、胸焼けなどが随伴症状にある事から瀉性のある物を選びます。
     この段階で幾つか候補がある訳ですが、熱を降ろすのと同時に神経を鎮める作用のある物として黄連解毒湯を選びました。
     特に黄連解毒湯は赤ら顔の患者さんに適応しやすく、目が充血するほどの人の場合には、生薬の山梔子(サンシシ)に止血効果もある事から、最初の選択として良いでしょう。
     次に柴胡加竜骨牡蛎湯ですが、これは小柴胡湯から甘草(カンゾウ)を除いて、水分の代謝を良くする茯苓(ブクリョウ)と、鎮静効果の高い竜骨(リュウコツ)と牡蠣(ボレイ)を加えた物です。
     人間の体熱が一定に保たれるのは、血液や体液が循環することによるので、体の一部に熱が偏るのは水分代謝の異常が考えられます。
     立ちくらみもまた、水分代謝の異常を示していると云えるでしょう。
     そして、柴胡加竜骨牡蛎湯は基本的に実証タイプの人に用いますが、体力が中等度であればイライラや精神不安などある場合に、最初に使うことができるという利点があります。
     今回は、上半身ののぼせを降ろす際に選びやすい物と、イライラしたり精神不安のある際に選びやすい物を組み合わせたのが功を奏したようです。

    補足
     正解者に挙げていただいた漢方薬を検討してみますと、桃核承気湯も当然候補になるかと思います。
     特に含まれる生薬の桃仁(トウニン)はお血を取り除くのに効果的でしょう。
     ただし、桃核承気湯におけるのぼせへの効果は発散性であり、熱を降ろしたり冷やしたりするのは弱いと考えられます。
     一方、抑肝散加陳皮半夏は生薬の柴胡(サイコ)による胸脇苦満を治す作用と、釣藤(チョウトウ)による鎮静作用が期待できます。
     しかし同時に、元になっている抑肝散という処方がそうであるように、虚症で貧血傾向のある人の神経の昂ぶりに用いると考えた方が適当でしょう。
     釣藤散は生薬として石膏(セッコウ)が入っており、熱証向きである事は間違いありませんし、名前にもなっている釣藤は先に書いたように鎮静作用に優れているうえ、血圧降下作用も認められています。
     特に生薬の菊花(キクカ)は、眼や脳の充血を取り除く効果があり、今回の患者さんの状態に適しています。
     組み合わせで考えた場合には、黄連解毒湯の代わりに釣藤散を用いるのが良いかもしれません。
     他に寄せられた答えの中には、次のように物がありました。
     七物降下湯は、鎮静作用の強い釣藤も入っており、高血圧にも効果があります。
     しかし、七物降下湯は、やや特別な部類に入り、冷え症で虚弱体質の人の高血圧に用います。
     これはどういう事かというと、虚弱な人の中には、体の方で「弱いから頑張ろう」と頑張り過ぎてしまい、その結果として高血圧になったり、目が充血してしまう場合があるのです。
     そのため、今回のように体格が普通で顔色に艶があり、声が大きいような人には向きません。
     似たような物として、加味帰脾湯という解答がありました。
     効能書きにもあるように、やはり虚弱体質で顔色の悪い人に用いるのが一つの指針になります。
     特に貧血のある人で、イライラしたり不眠症の場合に用いると効果的でしょう。
     世間では、立ちくらみがあると貧血と勘違いされる事が多いようですが、立ちくらみは貧血の症状の一つにしか過ぎず、立ちくらみの原因は多岐に渡るので注意が必要です。
     逆に、これは強すぎるのではないかと思った物として、三黄瀉心湯という解答がありました。
     生薬はたった三つで構成されており、そのいずれもが降性で寒性があり、脳溢血の発作に用いたり、戦国時代には止血剤として使われたという記録もあるほどです。
     もちろん、だからこそ効果は期待できるものの、その強さゆえに一般的には便秘のある事が使用の際の条件として挙げられる事が多いため、便通について触れていない今回の問題では除外させていただきました。
     センソ牛黄元を一緒に組み合わせるという解答もありましたので、それも良いかもしれません。
     今回の解答で迷ったのは、熱を降ろすのと、熱を発散するのとの違いでした。
     その意味では、半夏厚朴湯葛根湯加川きゅう辛夷の組み合わせというのも興味深かったのですが、除外させていただきました。
    「イライラしやすく癇癪持ちという自覚があり、不安感も強い」という点から半夏厚朴湯を挙げたのは、良い着眼点だと思います。
     主な生薬の半夏(ハンゲ)と厚朴(コウボク)は共に降性で、今回の症状にも使えるかもしれません。
     しかし、今回の患者さんは胸焼けや胃もたれがあるとは言っていますが、実際の胃の働きについては問題からは分かりません。
     そして、半夏厚朴湯は胃アトニー(胃が働かない)場合の不安神経症に適しており、その参考の一つに咽喉の痞え感を訴えているかどうかを確かめる必要があるでしょう。
     また、興奮すると息がしにくくなるなどの呼吸器の状態も参考になります。
     葛根湯加川きゅう辛夷は、肩から背中にかけてのこりと鼻づまりに注目したからだと思いますが、その主な作用は上半身を熱する事によって熱を発散するのだと覚えておきましょう。
     沸かしたお湯に氷を入れて冷やすのではなく、鍋の蓋を開けておいて放熱する事で冷ますというイメージになります。
     そのため、顔が赤いなど、明らかに熱証と思われる患者さんには適しません。
     他に、杞菊地黄丸小柴胡湯という組み合わせの解答がありました。
     杞菊地黄丸は、やはり生薬の茯苓と沢瀉(タクシャ)が水分の停滞を除き、牡丹皮(ボタンピ)が血液の循環障害を取り除くので、効果が期待できます。
     やや心配があるとすれば、血色の良い人には不向きで、多少なりとも手足に冷えがあるか、口の渇きを訴える、やはり年寄り向けの処方だという点でしょうか。
     小柴胡湯は解説で書いた通り、柴胡加竜骨牡蛎湯の元になった処方で、より精神神経症状に対して効果の高い物を選択した方が良いと思われます。
     番外として、サトウセントジョーンズワートと、その成分の西洋オトギリ草を挙げた方もいらっしゃいました。
     ヨーロッパや中央アジアに分布する直立性の多年草で、古くから不眠症や鬱病、ヒステリーなどの治療に用いられてきました。
     お店としては宣伝になって良いのですが(笑)、やはりクイズの主題が漢方薬ですので、今回はハズレとなります。
     今回は久しぶりに2種類の漢方薬を答えるという形式でしたので、どちらもファーストチョイスとなる物になる問題を選んだつもりでしたが、やはり両方が揃うという解答はありませんでした。
     それ自体は当然といえば当然だったと思います。
     個人的に興味深かったのは、同じ熱を取り除くのでも、降ろす物と発散する物とでは、効能書きだけを見ていると似ているようでも違うのだなという事を、改めて認識できた事でした。
     これにさらに、石膏(セッコウ)などのように直接冷やす物もあります。
     一つ一つの生薬の効果を調べるのは難しいとは思いますが、似た効能でも、その効果を発揮する過程が違う物もある事を、皆さんにも知っていただければ幸いです。

    解説:北村俊純

    参加者コメントより
     まりん:とても見やすく、内容もわかりやすいサイトですね。
     ありがとうございます。これからも宜しくお願いいたします。
     かとう:久しぶりの症例クイズで楽しませて頂きました。
     発表の方が遅れに遅れてしまい、大変申し訳ありませんでした。また、機会がありましたら、ぜひご参加下さい。
     久保田 美穂:漢方は飲んでいたこともあり、よく勧められるので、興味を持っています。こちらでは、クイズを通して勉強でき、いいなと思いました。ただ、最初に掲示板を見て、怖い書き込みが沢山あり、びっくりしてしまいました。その後他のページを見て、安心しましたが。楽しみにしています。
     掲示板の件については、ご心配をおかけしてしまったようで申し訳ありません。件のイヤガラセをしてきた人物が名乗っていた会社は解散したようですので、ひとまず安心できるかと思っています。どうぞ、気兼ね無くご利用下さい。
     ペペロンチーノ:調べているうちに更年期障害の症例が検索に多数ヒットして人事じゃないなと感じました。その時は私も漢方のお世話になります。
     まぁ、薬に頼らないのが一番ですが、それでは商売上がったりですので、何かの折にはご相談下さい。

     

  • ≪通巻242号≫
    イライラと不安感/幻の卓袱台(ちゃぶだい)/人の悪口ばかり言ってると

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      ★彡☆-=★彡  それさえもおそらくは平凡な薬局  ★彡☆-=★彡
                     ≪通巻242号≫
        提供 : まぐまぐ http://www.mag2.com/
        発行 : 北園薬局 http://www.kitazono.jp/
        編集 : 北村俊純
        窓口 : info@kitazono.jp
      ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    ~~~~~~~~~~~~~ 今回の日記の主な話題 ~~~~~~~~~~~
    ※10月29日(土)……イライラと不安感
    ※10月30日(日)……幻の卓袱台(ちゃぶだい)
    ※10月31日(月)……人の悪口ばかり言ってると
    ************************* 今号の平凡な日記 ***************************
    ◆10月29日(土)/2005年◆
     柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)地竜(ぢりゅう)の組み合わせで、よく購入していただいている患者さんが、珍しく飲む量を気にされた。
     ここのところ疲れが深くなってきたようで、もっと多く飲んでも良いかとの事だった。
     どちらも、標準の3倍くらいまでは飲んでもらっても大丈夫な物ではあるけれど、疲れが深くなってきているというのが気にかかる。
     そこで、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を案内してみた。
     T姉から電話。
     今日は、T姉がうちに来て一緒に昼食をと約束しているのだ。
     10時30分に出発するとの事。
     弟のTくんの運転で来るらしい。
     一発で着けるかしらん。
     11時過ぎに再度T姉から電話が入った。
     無事に近くのスーパーに到着して、これから買い物をするという。
     私も『ピザーラ』にピザを注文して、スーパーに迎えに行く。
     今日は、Tくんは運転手なので酒は飲めない。
     ノンアルコールと、アルコール度数0.5%の物を購入。
     2人には先にマンションに向かってもらい、私はピザを受け取りに。
     ピザーラの店舗に入ると、誰も声をかけてくれない。
     昼時というだけあって、6人もスタッフがいるのに。
     忙しいのね、しゃーないやね。
     一応、「電話でオーダーしたんですけど」と声をかけてみたが、やっぱり無視。
     ………ポツネン。
     えーと私、帰った方がいいですか(・_・?
     とか思っていたら、やっと注文した商品が出された。
     名前の確認で一瞬、「違います」とか答えてやろうかと思っちゃったよ(笑)
     次郎は今回は慣れた様子。
     でも、Tくんに対しては何故か後ずさり(苦笑)
     体が大きいからか?
     T姉からは次郎へのお土産に、名前に縁のあるキーホルダーと玉子ボーロを貰った。
     それと私には、“愛”と大きく書かれたTシャツ。
    「愛が無いから」とは2人の弁。
     そこへ奥さんが、「昨日も浮気して帰ってこなかったんですよー」と駄目押しをする。
     キリンビールのビールテイスト飲料とかいう『モルトスカッシュ』は激マズ。
     http://www.kirin.co.jp/brands/maltsquash/products/index.html
    「コーラの方が救われる」とTくん。
     今日は、午後からT姉の家に、かかり付けの医者が来て、家族全員が検診を受けるとの事で、早めに帰る算段。
     次郎を連れて見送りに外に出た。
     2人が車に乗り込むと、次郎は自分も乗ろうとして乗せてもらえず悲しそうな顔になる。
     私は、午後からまたお店へ。
     ウチダの神経胃腸薬をと患者さんに求められた。
     しかし、具体的な商品名は覚えていないという。
     他の店で勧められて飲んでみたところ良い感じだったそうな。
     なんでそれで憶えてないかなー(^_^;)
     うちに来てもらったのは有り難いけど、どうして同じ店で買わないのかも分からない。
     とりあえず、効いてくれれば他の物でも構わないという話なので、主訴を尋ねてみたところ、イライラと不安感が強いらしい。
     体格的にはガッシリしていて、肋骨の下に指が入るかを訊いてみたら、痛くて入れられないという。
     なるほど、胸脇苦満があるのか。
     それなら、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)が適応しそうだと案内した。 
     サイトの店内のブログをバージョンアップ。
     すでに改造を施してあったため、バージョンアップのさいに改造部分の修正が必要で苦労する。
     しかし、バージョンアップしたおかげで既知の不具合が解消されて良かった。
     お母んから、夕飯の食材にサンマをもらった。
     友達からの頂き物だとか。
     奥さんは、「またサンマ~?」とかボヤいていた。
     私なんかは、旬の食材は毎日でも良いくらいで。
     ホタテもくれたのに、奥さんは「焼き方が分からない」と、これまた有り難がらない。
    「文句の多い子ねぇ」と、お母んが呆れる。
     寒気がするとの事で女性の患者さんがいらした。
     やや高齢という事もあり、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)を案内。
     それと、食欲がすでに落ちているという話を聞き、地竜を一緒に勧めた。
     地竜がミミズだと教えると、やはり一瞬躊躇する。
     しかし、お買い上げいただけた。
     男性より女性の方が実利を取るようで。
     メチルアルコールを飲んだロシア船員2人が死亡のニュース。
     いいぞ、ロシア人!!
     未だに、こんな事故に遭えるなんて。
     でも調べてみたら、今年の6月だったかケニアの首都ナイロビ近郊で、やはりメチルアルコールが入った密造酒を飲んだ住民が49人も死亡したなんて事件も。
     日本でも戦中戦後に同様の事があったらしいけれど、貧しいから、なお娯楽を求めて命をかけてしまうのが人間なのか。
    ≪育児日記≫
     今日は、旦那の友達の姉弟がマンションに来た。
     山形のお土産を持ってきてくれた。
     あと、次郎の様子を見に来てくれたりした。
     次郎もだんだん、心開いてきてるみたいで、前回に比べたら相当慣れたようだった。
     初めてピザを次郎に食べさせたら。何か普通に食べてるので面白かった。
     機嫌もよくて泣かないでいたので、とてもラッキーだった。
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    ◆10月30日(日)/2005年◆
     病院の薬を貰いたいとお客さんが来店。
     旦那さんが欲しがってるそうなのだが、それはできませぬ。
     しかも確認したら、強い薬だし。
     しかし詳しく話を聞いたら、薬はまだ残っていて、持っていないと不安だからという事らしい。
     ううん、それならやはり診察を受けていただいた方が。
     お母んが昨日のサンマのお礼を友達の家に電話したら、息子さんが突発性の頭痛に悩まされていると聞いたらしい。
     そして、病院で診察を受けたところ杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)を処方されたとか。
     息子さんは私と同い年。
     ちょっと見当違いではないか。
     効能には“頭重”と書いてはあるけれど、あれはもっと高齢の人向き。
     仕事でパソコンをしている事から目の使い過ぎという診断だったらしい。
     それなら五積散(ごしゃくさん)の方が合うだろうに。
     お母んもそう思って、勧めたそうだ。
     それで五積散を出そうとしたら、在庫が少なくなっていた。
     ありゃん。
     そういやここのところ、随分と売ったな。
     以前はたいして動かなかった漢方薬なのだけれど、ネットの方で注文が増えた。
     パソコンの使いすぎはいけません………という事か?
     うがい薬を買いに患者さんがいらした。
     うがい薬を買いに来たらチャンスである。
     何がチャンスかというと、うがい薬では効かないから漢方薬はどうですかと勧めるチャンス。
     案の定、今回の患者さんは咽喉がイガイガする感じがして、痰が切れにくいという話。
     そんな時には麦門冬湯(ばくもんどうとう)が合いますよと差し出す。
     まずはお試しあれ。
     正露丸を買いに患者さんがいらっしゃった。
     しかし、目的を訊くと冷えによる下痢らしい。
     それだと、正露丸は整腸作用は弱い。
     どちらかというと消毒という側面が強いので、だから戦争に持って行ったりした。
     今回は、即効丸(そっこうがん)を案内。
     それから、柿が好きだという話を聞いて、しばらく控えるように伝えた。
    「柿が赤くなると医者が蒼くなる」というくらい栄養のある柿ではあるが、体を冷やす作用が強く、お腹を壊しやすい。
     さらに、前はコーヒーを飲まなかったのが、最近になって飲むようになったそうだ。
     それもまた下痢の原因かもしれない。
     コーヒー自体が体を冷やすし、合わない人はとことん合わない。
     他に、酔い止めを尋ねられた。
     お孫さんの七五三で出かけるのでと。
     それには、二陳湯(にちんとう)を勧めた。
     店を閉めてから、渋谷の渋谷シネクイントに出かけた。
     http://www.cinequinto.com/
     渋谷って苦手なんだよねー。
     方向音痴の身には。
     でも今回は一発で到着。
     予定時間よりも早く。
     熱意が違えば、違うのか(笑)?
     最上階の8階までエレベーターで上がったら、すでに並んでいる人の列は階段の下へと続いていた。
     他の人も言っていたけれど、下から階段を上がってきた方が楽だったな。
     そうそう、なんでここに来たかというと、来年春公開の映画『立喰師列伝』押井監督トークショーがあるからなのだ。
     http://www.production-ig.co.jp/contents/news/07_/s01_/
     このあいだ、弟にチケットを譲ってもらって。
     さて、事前情報は知らなかったのだが、ゲストとして行定勲監督が来ていて驚いた。
     あの、『世界の中心で、愛をさけぶ』の監督である。
     うっひゃー、大嫌いで大嫌いで大嫌いで奥さんと喧嘩までした(私が一方的に)映画の監督がこの人か~、と思うと感慨深い(苦笑)
     (9月29日/2005年の日記参照)
     今度の新作は、三島由紀夫の『春の雪』だそうで、今度はまともな作品かと思いきや、押井監督がすでに試写で観ていたそうで、いきなり落とす(笑)
     http://harunoyuki.jp/
     いや、落とすというか、本質を突いた感想を述べていた。
     曰く、「恋愛映画じゃないよね」と。
     もちろん、主題は恋愛である。
     それも、『セカチュー』と同じ悲恋。
     それどころか、これまた『セカチュー』と同じで、主人公が馬鹿丸出し。
     幼馴染同士で好意を寄せ合っていたのに、女性の方に縁談話が持ち上がり、男性の気持ちを確かめようとすると冷たくされ、縁談が決まってから深く愛し合うようになり破滅へと向かっていく。
    「困難な状況になったから恋したんであって、そうじゃなかったら好きになってなかったよね、あの男は」という押井監督の指摘は、だから『春の雪』のような作品を行定監督が作れるのを羨ましがっているようでもあった。
     実際、行定監督は映画の予算を出してもらうために、あえて“恋愛映画”と誤解されるように仕組んだというような事を言っていた。
     というのも、行定監督は故深作欣二監督に東映の撮影所のトイレで会った時に、「東映を見捨てないでくれ」と言われたそうだ。
     自分はそれを遺言だと思っていると。
     とにかく、質が良かろうが悪かろうが、映画を撮り続けていく事が大事という事なのかもしれない。
     ちなみに、行定監督は押井監督の『Talking Head』の手伝いをしていたらしい。

     ただし、押井監督は行定監督の事は今回のトークショーの打ち合わせで紹介されるまで知らなかった様子。
     司会者に具体的に何を手伝ったのかと尋ねられたら、美術とかいろいろ雑用だったと答えていた。
     でもってそれからしばらくは、三島由紀夫の話に流れて行った。
     何度か司会者がトークショーのメインである、新作の『立ち食い師列伝』に戻そうとするのだけれど、無駄な努力(笑)
     押井監督の三島由紀夫への思い入れは相当で、自決の知らせは大学の学園祭の準備をしている時だったとか。
    「あっ、本気だったんだ」と思ったのが正直な感想だという。
     そして、言行一致している最後の作家だったとも。
     そんな大脱線しつつも、『立ち食い師列伝』のプロモーション映像が上映されると、なんとか話が本筋に戻った。
     完成には、ほど遠そうなプロモーション映像だったけど(笑)
     実写は実写でも、役者を何千枚と写真を撮って、それを割り箸につけて動かしているように見せるというヒニクレタ作風。
     だいたい、先の『Talking Head』の中では主人公に、映画の予告は、予告でのみ完結し、それが優れた予告の条件でもあると語らせていたから、このプロモーション映像そのものがアテにならない。
     押井ファミリーに数えられる女優の兵藤まこは、今回の作品では『ケツネコロッケのお銀』を演じるそうで、何故だか劇中でAK銃を構える事になるとか。
     押井監督に言わせれば、「持たせてみたかったから」という理由。
     作曲家であり、今回の劇伴の曲も担当している川井憲次氏は、『ハンバーガーのテツ』を演じるのだが、それは「太ってるのが川井くんか、樋口くん(『ローレライ』の樋口真嗣監督)くらいしかいなかったから」との事。
     そうそう、この作品の主人公たちである“立ち食い師”というのは、もちろん架空の職業だが、どんな連中かというと、立ち食いの店に立ち寄り、出された料理に膨大な知識で、時に難癖をつけ、時に褒め殺して代金を払わずに立ち去る、ようするに食い逃げの“プロ”である。
     http://www.kyo-kan.net/oshii-ig/books/tachuguishi.html
     トークショーの終了時間も迫り、立ち食い文化論へと話は進んだ。
     その中で興味深かったのは、「一家団欒なんて、高度経済成長期になって突然現れた。」という押井監督の発言。
     それまでは、家族が別々に食べるのも普通。
     道端で飯を喰うのも普通。
     そう、食べるんじゃなくて喰う。
     貪るんだよね。
     その時しか食べられないから。
     そして、道端で食べるのは戦場だからなんだよと。
     食卓で行儀良くというのは、そういう環境だからできる事。
     そういや、1972年生まれの私が小学生の時にすでに、世間では「最近は家族の団欒が無い」などと言われていた。
     そして、一家団欒の象徴でもある卓袱台(ちゃぶだい)は大正の終わりに発明されて、普及しだしたのは昭和に入ってから。
     という事は、長い日本の歴史の中で、たかだか20~30年間だけ現れた幻みたいなもんである。
     戦場という事で言えば、映画の現場がそんな感じですねと、ゲストともども頷いていた。
     食べられる時にかっこんでおかないと、次はいつ食べられるか分からないから。
     それと、『ハウルの動く城』を作った宮崎駿監督は、中国の子供たちが道端で食べてる様子の映像を観て、「ボクは、ああいうのは嫌いだ」と言っていたそうだ。
     それに対して押井監督は、どうして嫌いなのか、それが当たり前なのにと思ったとか。
     今回の作品では、立ち食い師たちが活躍していたという架空の戦後史を描く事で、そんな歴史の一時代を浮かび上がらせたいという想いだと時間ギリギリまで、押井監督は語っていた。
     あっ、あと、この後は恋愛物をやる予定との事。
     それも、映画監督人生最初で最後の。
     今から楽しみである。
     終わってから、携帯でネットに接続して最終電車をチェック。
     JR渋谷駅まで走ってみたが、どうやっても武蔵野線の最終に繋がらない。
     ううん、歩いて帰るのは嫌だなぁ。
     そこで、前々から興味のあった『次世代マンガ喫茶 メディアカフェポパイ』で夜明かしする事にした。
     http://media-cafe.ne.jp/
     利用したのは池袋店。
     マンガ喫茶は、もう5年くらい前に2回だけ入ったきり。
     今は、どうなっているのか少しワクワク、少し緊張して入った。
     入って、驚いたのが綺麗なこと。
     壁にシミがついていたり、絨毯がハゲていたのに、なんだかここはカプセルホテルのようである。
     食事も、昔入った店では完全レトルトのうえセルフサービスだったのが、個別ブースのインターホンから注文。
     チャーハンや餃子を食べたら、値段に相当する程度には美味しかった。
     不満としては、中通路が一本しかなくて、大回りしないとフリードリンクを取りに行ったり、トイレに行くのが不便な点。
     でも、個別ブースに足音なんかが響かないようにするためには、通路は少ない方が良いのか。
     火事の時には怖いな。
     とはいえ、その個別ブースも禁煙席が明確に分かれているのが良かった。
     パソコンも常備されていて、別料金ナシで利用可。
     しかも、設定は再起動すると初期化されるそうなので、利用したサイトの情報などは残らないようだ。
     なので、チャットに入り友人たちに「帰れなくなったー」と言いつつ、食事をした。
     それから、せっかくマンガ喫茶に入って1冊も読まないのもなんなので、ちょっと探してみたら、たがみよしひさの『我が名は狼(うるふ)』を見つけた。
     http://morikami.tea-nifty.com/miho/cat4125392/index.html
     うおーっ、懐かしい!!
     好きだったのに、全3巻が行方不明になっちゃったんだよなぁ。
     イメージアルバムのLPまで持っていた。
     LPの方は今でも実家にあって、たまに聞いている。
    「♪愛していたのさ 今さらながら」
    「♪抱けば抱くほど 切なくなる それを承知で惚れたお前に かける言葉は クールなsay good-bye」
     単行本の方は、古本屋でも入手しづらい。
     あっても、ヨレヨレだったりして買う気になれない。
     どうせなら、美品が欲しいと思ってる。
     物語は、姉が自殺してから流れ流れていた主人公の犬神内紀が、父親の親友が営んでいる長野のペンションでやっかいになり、そのペンションに泊まりに来た女性と寝ながら、様々な人間模様を読者に語りかけるという内容。
     ………では、もちろんない(笑)
     いや、いろいろと考えさせられました、中学生当時に。
     自分も将来、主人公のように結婚なんかはとりあえず考えないで、いろんな女性とエッチしたいなぁと(* ̄ii ̄*)(鼻血)
     でもやっぱり、この作品の良かったところは、いい女も悪い女も、いい男も悪い男も、セックスという共通項で、馬鹿馬鹿しくも愛すべき人間だと見せつつ、それを押しつけてこないところだったな。 
     思わず読み込んでしまい、仮眠するはずが徹夜してしまった。
     どーすんだ、おい(笑)
    ≪育児日記≫
     今日、何か奥の歯が黒くなってるのがどうしても気になって、中歯医者にTelした。
     次郎はまだ朝だったので寝ていた。
     そして起きると朝食を食べさせた。
     眠い目をこすりながらだったけど、よくパンを食べてくれるので助かる。
     主食がとても好きみたいで、麺とパンとご飯は大好物らしい。
     それから、ここのところ次郎の食べる場所の椅子を、上り下りできるようになって驚いた。
     バランス感覚が身に付いてきたのかな。
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    ◆10月31日(月)/2005年◆
     ふぁあ、眠い。(-_ゞゴシゴシ
     つい、懐かしい漫画を読み込んでしまったからな。
     安くて良かったけれど、漫画喫茶は泊りには向かないかも(苦笑)
     子供の頭痛の相談でお客さんが来店。
     高校生だそうで、低血圧らしい。
     それで寝起きが悪くて学校に遅れやすいと言われて、その点だけは訂正しておいた。
     よく低血圧だと寝起きが悪いというが、あれは間違い。
     ドラマかなんかでセリフにあるのを聞いて、鵜呑みにする人が広めてしまったようだ。
     そして今回の頭痛に関しては、学校に行く時だけだという。
     休日は大丈夫なんだとか。
     昔なら仮病だなんだと言われそうなところではあるが、最近では少しは理解されるようにはなってきたかな。
     でも、まだ偏見はあるようで。
     神経性だとすれば半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)が思い浮かぶが、これはどちらかという肺から気管支にかけて。
     頭痛には、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)の方が適応するだろうと案内した。
     K病院から出た処方箋で、在庫に無い物があり、そのK病院に借りに行く。
     病院内のロービーには、「憲法9条を守る!!」とか「憲法9条で平和を!!」といった掲示板が立ち並び、なんだか物々しい。
     共産党系だからねぇ。
     比較的安い料金で受診できたりと病院としては良いのだけれど、なんかギスギスしますな。
     だいたい、本気でそう思ってるのなら、理念の方を捨てるなり隠すなりして、公明党のように政権与党に近づいてはどうか。
     与党との駆け引きで実利を取らなければ。
    「確かな野党」なんて、野党でいる事が前提なら、無くても構わないだろう。
     奥さんが歯科医に行った。
     歯が沁みるというので。
     そしたら、診察してもらった結果は、電動歯ブラシで歯茎を磨いてしまったからだそうだ。
     なんでやねん(^_^;)
     歯ブラシなんだから歯を磨けよー。
     使い方の小冊子を渡してあるのに読まないんだから。
     葛根湯(かっこんとう)を買いに患者さんがいらした。
     良く効いたとの事で、それはなにより。
     葛根湯は、早めに飲むのが勝負を決する。
     家に置いておくだけではなく、持ち歩いておいて下さいと伝えた。
     風邪薬に葛根湯地竜(ぢりゅう)を買いに、お客さんが来店。
     患者は、高校生の息子さんだという。
     それでしたら、麻黄湯(まおうとう)地竜の組み合わせが良いでしょう。
     体力があれば、体力があるうちに麻黄湯で一気に熱を出して風邪を倒した方が早く治るので。
     第3次小泉改造内閣の発足について、各野党がコメントを出しているのをテレビのニュースで観た。
     民主党の前原誠司代表は、「期待を込めてエールを送りたい。我々も真の改革を競い合う形で、一生懸命負けないように頑張っていきたい」と、あえて批判を避けていた。
     ううん、頭の良い人だな。
     一方、共産党の市田忠義書記局長は、「暮らしと平和を壊す反国民的改革を強力に推し進める意味で適材適所。『悪政推進適材適所内閣』だ」と扱き下ろしにかかった。
     いつの時代に生きてんだよアンタは、と思わず苦笑。
     しかも、悪口にまったくユーモアが無い。
     自分たちの印象を悪くするだけだと、何故気づかぬ?
     社民党の福島瑞穂党首も、「大増税改憲内閣だ。女性(閣僚)が2人だったのも残念」と的外れな批判。
     いや、増税と改憲を狙ってるのは確かだろうけど、閣僚に女性が入るかどうかは、もはや拘る点では無いだろう。
     第3次小泉内閣の南野知惠子法務大臣なんて、近年稀にみる不適格な人材だったと思うんですが。
     それにつけても、人の悪口ばかり言ってると人相が悪くなるもんですな。
     最近の、福島氏は特にそう思う。
     私も自重しよう………と0.001秒くらいだけ思った。
     回ってきたメールを読んで、「えっ!!??」と声を上げてしまった。
     文化センターボックス代表取締役の牧野俊浩氏の長男が昨夜、くも膜下出血のため死去したという連絡。
     http://homepage2.nifty.com/artbox2/
     享年30。
     息子さんの事は知らないが、父親にはお世話になった。
     そして、音楽家としてファンだった。
     コンサートの手伝いを探しているという情報を得て、喜んでお邪魔させてもらった事もある。
     そうかぁ、息子さんは歳が近かったんだなぁ。
    ≪育児日記≫
     今日は、歯医者に行った。
     義母の自転車を借りた。
     次郎は義母と、近くのクリーニング屋さんのところに行った。
     なかなかしっかりと歩けるようになってきたので、前よりは少し安心になった。
     しかし、ちょっと目を離すとどこに行くか分からないのが、やはり気を使う。
     目的地に付けないというか、時間がかかってしまうのが難点でもある。
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  • ≪第10回≫六味丸

    漢方薬症例クイズ≪第10回≫

     実際の症例を元に、患者さんの症例データーを提示します。
     “書いてある内容”から推理して、適応すると考えられる漢方薬の名前を当てて下さい。基本的に当店で扱っている漢方薬としますが、解答としては必ずしも限定しません。「なるほど、その方法もあるか」と思われる解答であれば、正解とする事があります。(生薬のみや民間療法などは除外します。)
     正解者の中から、抽選で3名様にトートバッグを進呈いたします。絶対の正解というものはありませんのであくまで、“あそび”として楽しんでいただければと思います。皆様の参加をお待ちしています。

    トートバッグ

    italy.jpg (301149 バイト)

     イタリーセレクトコレクションのトートバッグを、3名様にプレゼントいたします。

    募集期間:~4月18日(月)
    正解発表予定:4月25日(月)

    問題
     女性。52歳。
     上半身にのぼせを感じ、不快でイライラしがち。自分でも怒りっぽいのを自覚している。
     足腰がだるく階段の昇り降りがつらい。
     白髪が増えて、肌ががさつき、目が乾燥して赤くなる。
     疲れたり寝不足になると、顔がのぼせて汗が多くなる。
     1年くらい前から生理が遅れがちで、数ヶ月無いこともある。
     おそらく、なんらかの原因で栄養が不足しており、普通は体の働きが落ちるところが、その不足を補おうとかえって体が頑張っているため、のぼせなどの症状が現れていると考えられる。
     体が働きすぎるのを抑えつつ、補うのに用いる漢方薬は何か?

    正解
     正解は六味丸です。
     しかし、正解者がいませんでしたので、次選として杞菊地黄丸を正解とします。
     さらに、当選者枠が3名のため、他に適応する漢方薬として温清飲を加えます。

     当選したのは、以下の3名の方です。おめでとうございます。
     杞菊地黄丸と解答された方。
      ※keikoko様…選んだ理由:上半身にのぼせができたのと、目が疲れやすいのと、顔がのぼせるというのを見て間違いないと思いました。
      
    かりん様選んだ理由:まず「のぼせ」という言葉が説明にあったので、よく読んでみたら「乾燥」という症状があって、さらに「目の疲れ」もあり、「イライラ」なども目に付きました。
     
    温清飲と解答された方。
      ※S800PG様…選んだ理由:ナシ

    解説
     主訴はのぼせですが、随伴症状が多岐に渡っているため整理していくことが必要になります。
     すると、上半身はのぼせに関連するかのように、目の渇きや肌のかさつきなどがあるのに対して、足腰のだるさや白髪が増えてきていることから、栄養不足であることが読み取れるでしょう。
     一方で、のぼせる力はあるため、栄養そのものが不足しているというよりも、栄養を運ぶ機能が低下していることが考えられます。
     つまり、栄養を運ぶ血の不足、血虚が疑われます。
     この場合に必要なのは、体には働こうとす力があるので、血液が循環しやすいように体の環境を整える事です。
     六味丸に含まる地黄(じおう)・山茱萸(さんしゅゆ)・山薬(さんやく)はいずれも補性作用があり、茯苓(ぶくりょう)と沢瀉(たくしゃ)が局所的に水分が停滞するのを防ぎつつ、牡丹皮(ぼたんぴ)が血液の循環障害を取り除きます。
     また、六味丸の効能書きには「排尿困難、頻尿」とありますが、これは腎に作用する漢方薬なのだと覚えておくと良いでしょう。
     漢方で云う腎とは解剖学的な腎臓の意味に留まらず、泌尿生殖機能を含む精力と密接な関係があり、生理が遅れがちである事は、加齢による精力の減衰も示しています。

    補足
     六味丸に血管を通る血流を良くする作用のある枸杞子(くこし)と菊花(きくか)を加えたのが、杞菊地黄丸です。
     先に栄養そのものが不足している訳ではないとして六味丸をあげた訳ですが、より栄養不足が顕著な場合には杞菊地黄丸が適しているでしょう。
     解答で興味深いのは、問題には「目の疲れ」とは書いていなかったにも拘らず、2人の方が「目の乾燥」を「目の疲れ」と読んだことです。
     クイズという性質上、書いてある事柄だけから判断しなければならない訳ですが、患者が言っていなかったとしても推測できる事は考慮しておく必要があるという点において、良い判断だと思います。
     温清飲については、他に解答として出ていた漢方薬との比較の中で決めさせていただきました。
     温清飲の基本処方は四物湯で、血液を補い、血の巡りを良くする作用があります。そこに消炎効果があってのぼせを下げる黄連解毒湯を合わせた物です。これにより温清飲は、肌のがさつきや目の乾燥を潤して、主訴であるのぼせも治せるだろうと思われます。
     解答の中には黄連解毒湯もあったのですが、今回は血流の改善と、それによって皮膚の状態も良くなる方が適していると考え候補から除きました。
     さて、解答の中で一番多い見立ては更年期障害でした。
     これは患者さんの年齢からも、のぼせを始めとした不定愁訴からも当然の事と思います。
     そのため一応、それを措いておくための条件付けとして栄養不足の可能性と、補う漢方薬を用いることを示唆しました。
     それを踏まえて、更年期障害に関連した処方についての解答を検証してみました。
     まず、のぼせから桂枝茯苓丸を考えた場合ですが、お血によるイライラ感や月経不順に使えるものの、補う効果が少ない点が適応しないと考えられます。これは、桂枝茯苓丸当帰芍薬散を合方した婦人華にしても同じでしょう。
     では、加味逍遙散はどうでしょうか。加味逍遙散にも六味丸桂枝茯苓丸と同じく牡丹皮が入っており、血液の循環を促して、山梔子(さんしし)や薄荷(はっか)が、のぼせやイライラを取り除く事が期待できます。しかし同時に、山梔子も薄荷も燥性なため、皮膚の乾燥などを示している患者さんには向きません。
     柴胡桂枝乾姜湯においては、か楼根(かろこん)が潤性が強いので乾燥に良く、牡蛎(ぼれい)には鎮静効果があるため随伴症状に効果があるとも考えられますが、のぼせには適応せず、より虚証の人に使うのが良いでしょう。
     柴胡加竜骨牡蛎湯は、やはりのぼせとイライラという症状に対して考えられたものと思われますが、皮膚の乾燥や栄養不足には他の漢方薬に役目を譲った方が適切です。ただ、寒熱のハッキリしない場合でも、かなり広く用いることができるので、応用はできるかもしれません。
     主訴ではなく、栄養不足に目を向けた物として、十全大補湯という解答もありました。解答者は血虚を考えたうえで、燥性の物も避けて選んだとの事で、着眼点は良いと思います。しかし十全大補湯は、病後に用いる事が多いように、全身的な疲労倦怠が強くて、皮膚の乾燥だけではなく顔色も悪いような患者さんに適しています。今回の問題では、足腰のだるさは訴えていますが、そこまでの疲労には言及していないため、除外となります。
     逆に小建中湯は、虚弱体質者に対して強壮作用はあるものの、のぼせを始めとする随伴症状には効果が期待できないため不正解とさせていただきました。
     実は今回の問題は、前回の解答で杞菊地黄丸というのが多かったため、その基本処方である六味丸を用いたケースを探して問題を作成しました。
     そうしたら今度は、正答者がゼロという結果に……。
     面白いというかなんというか、漢方薬の適応を考えるのは大変だなぁと改めて痛感しました。

    解説:北村俊純

    参加者コメントより
     keikoko:クイズをきっかけに漢方に強くなりたいです。
     前回は惜しかったですね。今回は、着眼点が良かったようです。

     かとう:今回は「参加することに意義がある」の意気込みで参加しました。
     私も、皆さんの解答を拝見して勉強させていただいていますm(_ _)m

     K.H:掲示板が和やかな雰囲気で楽しい♪
     なんか、薬局とは全然関係の無い話題ばかりですが(苦笑)

     まりん:とても役立つサイトですね。
     ありがとうございます。まだまだ中途な構成ですので、今後とも頑張ってゆきたいと思います。

     かりん:初めてホームページを拝見させていただいたのですが、とても興味を持ちました。私は腰が冷えたり腰痛になるとすぐに下痢をしてしまうし、少しでもストレスを感じると胃がムカムカして気持ち悪くなるし痛くなります。漢方で治るならぜひ利用してみたいです。いろいろ見てみたのですが見る限り私の症状にぴったり合う薬が見つかりませんでした。今度健康相談カードでお聞きしたいので、その時はよろしくお願い致します。
     はい、相談はいつでもお受けしています。ぜひ、お問い合わせ下さい。お大事に(・v<)

     

  • ≪第9回≫苓桂朮甘湯

    漢方薬症例クイズ≪第9回≫

     実際の症例を元に、患者さんの症例データーを提示します。
     “書いてある内容”から推理して、適応すると考えられる漢方薬の名前を当てて下さい。基本的に当店で扱っている漢方薬としますが、解答としては必ずしも限定しません。「なるほど、その方法もあるか」と思われる解答であれば、正解とする事があります。(生薬のみや民間療法などは除外します。)
     正解者の中から、抽選で3名様にフレンドリーBEARマットを進呈いたします。絶対の正解というものはありませんのであくまで、“あそび”として楽しんでいただければと思います。皆様の参加をお待ちしています。

    フレンドリーBEARマット

    mat.jpg (140285 バイト)

     玄関、キッチン、バスルームトなどで使用する、フレンドリーBEARマットを3名様にプレゼントいたします。

    募集期間:~1月24日(月)
    正解発表予定:1月31日(月)

    問題
     女性。78歳。
    「疲れ目の目薬を下さい」と来店。
     その他の症状を尋ねたところ、尿量が少し少なくなった気がするという事が分かった。
     目の症状は腎と関係があり、水の代謝を良くすると改善する事がある。
     そこで、効能書きには目に関する症状は無いが、やはり水分代謝の異状が関係する“眩暈(めまい)”に用いる漢方薬を渡した。
     3日後、疲れ目は改善してきたものの、涙が多く出るようになったと相談にいらした。
     尿量については特に変わった気がしないという。
     水分代謝が良くなる事で、頭部の余分な水が涙として出たのだろうと推測。
     もうしばらく服用を続けてもらう事にしたところ、10日後に再び来店し、涙はあの後すぐに治まって、目の疲れと合わせて尿の出も良くなったという。
     効能書きとしては、“眩暈”などに用いる漢方薬の中で、今回使ったものはなんだったろうか? 

    正解
     正解は苓桂朮甘湯です。

     当選したのは、以下の3名の方です。おめでとうございます。
      ※tkb様…選んだ理由:八味地黄丸かとおもいましたが。
      
    梅木 瑞樹様…選んだ理由:ナシ

     正解者が2名でしたので次選の漢方薬として適応する物を挙げた方を正解者とするところですが、杞菊地黄丸と解答しつつも、選んだ理由において苓桂朮甘湯と比較検討した事を明記されていた方を当選とさせていただきました。
     ※かば様…選んだ理由:腎機能低下に伴う症状と思われます。この薬にはかすみ目などにも効果があり選びました。ノイローゼなどの症状があれば苓桂じゅつ甘湯も良いと思います。

    解説
     漢方では目に関する症状は、基本的に“水分の代謝異常”と考えます。
     体内に取り込んだ水分はいったん胃で受け取り、次に腸で吸収されてから腎臓によって全身に分配されるのですが、胃の働きが悪くなると腸への水分の受け渡しが正常に行えなくなり、ポンプの役割を負う腎臓も安定的に働けず、やがて疲労してしまうという悪循環に陥ってしまいます。
     それらに対して、苓桂朮甘湯に含まれる桂皮(けいひ)は胃の働きを助け、燥性の性質を持つ茯苓(ぶくりょう)と蒼朮(そうじゅつ)が腎機能を高め、水の偏在を調整します。
     この処方は胃アトニー(胃が働かない)に向いており、水分代謝が悪い可能性のある目の疲れを訴えている患者さんが、同時に尿量が少ないという点から、不要な水分を取り除くために苓桂朮甘湯を用いました。
     効能書きには神経質やノイローゼとありますが、必ずしも必須条件ではありません。しかし、正確な量は分からないとはいえ、涙が多く出るというのを気にするという事は、ややその傾向はあったと考えられるでしょう。
     また、苓桂朮甘湯は仮性近視や慢性軸性視神経炎の治療にも用いられる事が多いので、最初に選んでみて様子を見てから、他の漢方薬に替えていくという方法も考えられます。

    補足
     問題にも書いてある通り、“眩暈(めまい)”もまた水分代謝と密接な関係があります。
     その点に注目したと思われる解答の中では、五苓散が多かったです。
     生薬を見てみると苓桂朮甘湯と桂皮と茯苓そして蒼朮まで同じで、確かに候補の1つとなりえます。
     また、沢瀉(たくしゃ)と猪苓(ちょれい)は、利尿作用のある生薬の代表で、尿量減少という症状とも合致します。
     しかし五苓散の効能書きに、“口渇”とあるのを考慮しなければなりません。
     口渇の多くは熱証による事が多く、燥性の生薬で構成されている五苓散は、より水分代謝の異状が顕著な状態、すなわち吐き気や下痢気味等の随伴症状がある場合が適応するでしょう。
     今回の患者さんの場合、主訴自体には眩暈は無く、水分代謝の異状は顕著では無いと考えられます。
     同じような理由により、沢瀉湯(たくしゃとう)という解答も少数あったのですが、除外しました。
     他に、患者さんが高齢であることに要点を置いたと思われる解答として、杞菊地黄丸八味地黄丸がほぼ同じ程度ありました。
     どちらも高齢者の目の症状に用いる物ですので、まさに目のつけどころは良いと思います。
     ただし、繰り返しになりますが今回の主訴はあくまで“目の疲れ”であり、また“尿量減少”も尋ねた結果として「気がする」という程度ですので、服用するさいには注意が必要です。
     まず
    杞菊地黄丸六味丸の変方で、やはり口渇のある事を目安にするのが良いでしょう。また、高齢者で六味丸が適応するのは物質面の不足が顕著な場合で、それにより体温調節が上手くできずに手足に火照りがあったり、のぼせによって不眠であるなどを確かめておくのが適切です。
     一方、八味地黄丸は機能面の衰退が顕著な場合に適応し、同じく口渇が参考となるものの、逆に手足の冷えを訴えていたり、疲労倦怠感が強い場合に用いるのが効果的です。特に、涼しい方が気持ちよく感じるかどうかを確かめておかないと、のぼせて気分が悪くなるという事もありえます。
     利水の効能があり、かつ肝腎不足の視力障害にも効く車前子(しゃぜんし)を含む物として、
    牛車腎気丸という解答もありました。先の杞菊地黄丸八味地黄丸と同じように、高齢者の目の症状に用いる漢方薬として間違いではありませんが、やはり随伴症状を患者さん自身が申し出る、あるいは尋ねてみて主訴に加えるほどに強く言われていない場合には、慎重に用いるのが安全面でも良いかと思います。
     クイズという性格上、
    “書いてある内容”から推理してという制約を設けているため、正解を限定的にしていますが、おそらく実際に患者さんと対面したり、自分が同じ症状がある場合には、随伴症状や体質などについても、より深く考えたり情報を得ようとすると思います。
     漢方薬に限らず、通常店頭で薬を選ぶ時には効能書きを眺めて、症状の中に求める記述があれば「これだ」と決めてしまうでしょう。また、それしか情報が無いというのも実情です。
     そして、漢方薬の誤解に「効くのに時間がかかる」というのがありますが、同じくらいに「漢方薬なら安全だから」と言われる事も、患者さんとお話していて少なくありません。
     しかし、効能書きの中に適応しそうな症状が書いてあっても、必ずしも適応するとは限りません。
     同時に、効能書きには主訴は入っていなくても、使える場合があります。
     今回の問題では、効能書きには主訴に関する事は直接的には書かれていないものの、同時に作用が強くない物を選んでもらおうと思いました。
     漢方薬を比較検討する場合の、参考の一助になれば幸いです。

    解説:北村俊純

    参加者コメントより
     keikoko:クイズを解くためにかなりの時間を漢方の勉強に使えました。詳しくなりたいです。

     今回は残念でしたが、またよろしくお願いします(・v<)