お客様から風邪薬を求められヒアリングすると、主訴は鼻水と喉の痛みというため、鼻炎薬にも喉の痛みが効能にあることを説明したうえで、鼻水は内臓の冷えから来ていると考えられるので、上半身を温める『葛根湯』を提案したところ、以前に症状が現れて数日してから使ったら鼻づまりになったというので、それは当然のことと理由を説明した。
まず現代医学の視点でいうと、鼻水は花粉やウイルスなどの異物が入ったときに追い出すための早発反応で、体が追い出しきれないと判断すると遅発反応として免疫機能が敵を倒すのと患部を修復するために血流を良くしようと患部を炎症させ、鼻の奥の血管は炎症のせいで腫れて鼻づまりを起こす。
そして漢方的な視点では、内臓が冷えていると体の代謝機能のバランスが崩れて体液、この場合は鼻水が漏れ出てしまい、またその状態をなんとかしようと内臓が熱を持つのだが温かい空気は上へと昇り、しかし代謝機能が正常でないがために血液の循環も滞り、昇った熱が上半身に籠もって鼻づまりの状態となる。
初期であれば、『葛根湯』や『小青竜湯』で上半身を温めて血流が良くなることで鼻水が改善し、炎症の熱も散らすことができるのだが、日が経ってからでは上半身の熱が降りずに籠もる一方となり鼻づまりとなる。
鼻水と鼻づまりが行ったり来たりするようなら『葛根湯加川きゅう辛夷』を使い、鼻が詰まる一方ならば『荊芥連翹湯』で上半身を冷やして熱を除去し、詰まった鼻汁が喉に落ちてくるようだと胃も悪くしていると考えられるため『辛夷清肺湯』の出番となる。
症状とともに薬を乗り換えていくということもまた、ときに必要なのだ。
ただ、お客様はその使い分けを面倒と感じたらしく現代薬、それも風邪薬を希望されたので、市販の風邪薬の中で唯一と言って良いほど咳止め成分が入っていない『PL顆粒』を使っていただくことになった。
いずれにせよ、内臓を温めるのが養生法となるから、積極的に温かい物を飲み、しっかり入浴するよう勧めた。
やや高齢のお客様が『アレジオン』を購入されるさいに使用経験を確認すると、以前に病院から処方されて使っていたとのこと。
予防薬として使うのが効果的なので、花粉の飛んでる日も飛んでいない日も区別無く、毎日飲むのが良いことはご存知だった。
病院で処方された場合は、薬剤師から説明を受けるはずなので知っていて当然のことも、お店で相談もせずに自分で選んで買った患者さんや、家族などに頼んで買ってきてもらったという人だと知らなかったりするから、こうして一人ひとり声をかけて確認しない訳にはいかない。
お客様は、若い頃になって40代に治ったものの、またなったというので腸の機能が加齢によって低下した可能性をお話した。
一般に、加齢とともに免疫機能が低下すると外敵と戦う力も弱くなるので花粉症は軽くなるとされているが、体の抵抗力自体は強いまま免疫機能が低下すると、アレルギー反応は免疫機能の異常だから、自分自身への攻撃に転化されてしまうこともある。
よく「免疫力を上げる」と謳ってるサプリメントや健康法とされるモノがあるけれど、免疫力を上げてもコントロールできなければ意味が無いのだ。
そして、免疫機能の司令塔となっているのが第二の脳と呼ばれることもある腸。
腸には脳細胞と同じ細胞が多く存在していて、外部からの侵入に対する自動警戒システムを担っている。
自動なのは、外部から異物の侵入があるたびに、いちいち脳に報告していては脳が忙しくなってパンクしてしまうのと、対応が遅くなってしまうからと考えられる。
だから、その自動警戒システムが正常に動作するように、腸の働きをサポートするのが養生法となる。
まずは食事に気をつけて腸が消化に忙しくならないように気をつけることと、温かく保ったほうが血流が良くなって働きやすくなり、また腸内細菌が活発に活動できるから、入浴をして、上は薄着をしてもお腹周りは厚着をすることが大事。
環境的にお風呂に入るのが難しくて、やむおえずシャワーのみで過ごす場合には、太い結果の通っている背中側にできるだけ長く浴びるようにする。
お客様が『太田胃散』を購入されるさいに、血圧の薬や花粉症の薬の有無について確認したところ、「強い薬なの?」と質問されたので成分の種類が多いと他の薬や持病との影響も多岐に渡ることを説明した。
つい薬を「強い」「弱い」で考えがちだけれど、大事なのは「どんな働きをしているか」である。
血圧を下げる降圧剤も、患者さんからはよく「普通の血圧の薬」と言われてしまうが、血管を拡張しているのか血液をサラサラにしているのかでは、気をつけるべき点が異なる。
『太田胃散』や『キャベジンコーワα』などのようにナトリウムが入っていると血圧を上げてしまう可能性があるし、胃薬に入ってることの多いミネラル成分は腎臓に負担がかかり、一部の鼻炎薬の成分の吸収を阻害してしまうから、「昔から使ってるから」とか「有名だから」という理由だけで選ばれると、困るんである。
この場合、困るのは私ではなく患者さん自身だということは意識してもらいたいところ。
市販薬は「手軽に買える」けど、「気軽に使える」物ではないのだ。
『スマイルコンタクトクールブラック』をレジに持ってきたお客様が、花粉症の目の痒みにコンタクトレンズをしたまま使いたいから選んだというため、炎症を抑える成分も痒みを抑える成分も何一つ入っていないことを説明し、『ロートアルガードコンタクト』を勧めて変更になった。
効能書きにも花粉症に関する症状は書いていないのに、商品名に「コンタクト」の文字が入っていることしか目に入らなかったのだろう。
やっぱり、自動販売機にはなれないんである。
お客様には花粉症と腸の関係を説明し、養生法についてもお話した。
「分からないときには相談を」とも言いたいところなれど、そもそも「何を分かってないか」が「分かってない」と相談しようとも思わないだろうから、どう言えば良いのか私にも分からない(´・ω・`)