他の星が地球に衝突する危機を描いた映画作品は数あれど、地球の方を移動させて避けるというのは、自分が知る限り、この『妖星ゴラス』のみ。
さすがに荒唐無稽のアイデアなんで、最初に噂で知った時には、古いB級作品だと思っていたら、これが観て驚きの良作だった。
特撮はさすがにチャチであるものの、そこにケチを付けるのは、演劇を観ていて舞台装置がリアルじゃないと言うようなももの。
ロケットや宇宙ステーションなどのレトロな雰囲気を楽しめた。
一方、感心したのは奇抜なアイデアを推し進めるための物語の展開と、人物造詣。
最初に妖星ゴラスと遭遇し、地球の約6000倍の重力に捕まってしまい脱出不能となりながら、最後までデータを収集して地球に送信しようとした木星調査船の乗組員たち、地球を救うために秘密裏に進めていた研究をお互いに開示しましょうと提案する科学者たちと、登場する人たちが気持ちの良い人たちばかり。
そして、南極に地球移動用のエンジンを建設するシーンや、一斉にエンジンに点火されて地球が移動して公転軌道から外れるときに沸き立つ作業員たちのシーンは、本当にワクワクさせられた。
そうそう、台詞のセンスの良さも、この作品の魅力の一つだと感じた。
「南極にすぐ来て下さい。なぁに地球の上です、そう遠くはありません」
シビレル(笑)
ラストの、妖星ゴラスが地球から遠ざかって一安心というころで交わされる、日本人科学者と外国人科学者の会話が、また秀逸。
なるほど、伝説になる訳だ。