摂りすぎ危険

 さすがに連休明けだけあって、次から次へと処方箋が舞い込む。
 しかし、連休の間は問屋さんが休みだったので、薬の方が不足気味。すぐに発注をかけた。
 鬱金の粉末が欲しいというお客さんが来店。
 ターメリックとも呼ばれていて、カレーの色を付けるアレである。
 料理にでも使うのかと思ったら、どうやらテレビで豆乳と混ぜて飲むと健康にいいみたいなのをやっていたらしい。
 確かに鬱金は肝臓の機能を高める効果があるとされているが、同時に肝臓に脂肪をつけてしまう作用もある。
 だから通常は、鬱金だけを服用するという事はしない。他の生薬と調合して使うものだ。
 ウチには無いので注文するかを尋ねたところ、他の店を捜すとの事。
 心配なので一応、鬱金の解説の書いてあるペーパーを渡したが……。
 本人が信じてるものを無下に否定するわけにもいかないが、テレビを見てすぐに買いに行く前に1週間ぐらい自分で調べてみるという事をしてもらいたい。
 せめて専門店や薬局で現場の人間に相談してみた方が良いと思うのだが、なんとも歯がゆい事である。
 と思って調べてみたら、“驚異の薬草”とか“史上最強の健康食品”とか(最強って何と戦うんだ?)、“奇跡の健康食品”というような煽り文句を並べてるサイトが次々と見つかった。
 なんだかなぁ(^-^;;;
 そう言えば前にテレビで、“苦汁(ニガリ)”を取り上げてる情報番組もあった。
 苦汁が健康にいいのは確かだけど、番組中に出てきた会社員氏はやりすぎ。
 コーヒーや味噌汁など、なんでもかんでも苦汁を垂らしていた。
 だいたい苦汁なんて、刺身なり海草なり、海産物を食べていれば必要充分な量を摂取できるのだから、わざわざ買ってくるこたぁない。
 それに、苦汁の取り過ぎは腎臓に悪影響を及ぼす。
 その会社員氏は、同僚の飲み物なんかにも勝手に入れていたが、もし腎臓の弱い人だったらどうするのか。
 腎臓病ではなくても潜在的に腎臓が弱い人というのはいる。ハッキリ言って、人によっては毒を入れて回ってるようなものだ。
 私がやられる側だったら、問答無用で殴り飛ばしているぞ。
 さらに自分の子供の飲み物にも入れていたが、それこそ子供は成長途中で腎臓の働きもまだ未熟だ。
 私なんかは、子供の頃はよく腎臓の働きが弱くて怖い夢を見たりオネショをしてしまったりしたもんだ。
 こうゆう、自分勝手な思い込みで健康を得ようとする人は、人の事を考える事ができないのだろか。
 信じるのはいい。自分が信じるだけならば。
 しかし、それを人に進めた途端にそれは、“悪意の無い暴力”にもなる事をもっと自覚してもらいたい。
 漢方薬を売っていても、たまに「○○さんに勧められて飲んだら効いたから」と同じ商品を買いにくる患者さんもいる。
 人から勧められて飲んだ漢方薬で治ったというの、まったくもってラッキーとしか言いようがない。
 漢方薬は症状で選ぶよりも、体質の方を重視する。
 同じ症状の人でも、体質に合わない漢方薬を服用すれば症状が悪化する事もありえる。
 勧めた人に悪意が無かった事は疑いようがない。しかし、それは危険な事でもあるのだ。

以下の記事も読まれています。


 
登録販売者から一言 壱の巻 登録販売者から一言 肆の巻「おくすり手帳と個人情報の使い方」 市販薬購入前チェックシート