≪通巻37号≫
クリスマスカードを作る前に綴りをチェック/漢方薬のお店に来て漢方薬は嫌だとはこれいかに?/アミノ酸再び、いやテレビでは三度目か

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                  ≪通巻37号≫
  提供 : まぐまぐ http://www.mag2.com/
  発行 : 北園薬局 http://plaza2.mbn.or.jp/~kitazono/
  編集 : 北村俊純
  窓口 : kitazono@a1.mbn.or.jp
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~~~~~~~~~~~~~ 今回の日記の主な話題 ~~~~~~~~~~~
※11月15日(土)……クリスマスカードを作る前に綴りをチェック
※11月16日(日)……漢方薬のお店に来て漢方薬は嫌だとはこれいかに?
※11月17日(月)……アミノ酸再び、いやテレビでは三度目か
************************* 今回の平凡な日記 ***************************
◆11月15日(土)/2003年◆
 胃薬を飲んでいるのに、朝食の後にみぞおちが痞(つか)えるような感じがするという患者さんが来店。
 飲んでいる胃薬が何か尋ねると、『ガスター10』との事。
 『ガスター10』は効能書きに「胃痛、胸やけ、もたれ、むかつき」となっているが、使用目標は“胃酸過多”である。つまり、胃酸の出を抑える作用があるわけで、胃酸過多による症状でなければ胃酸の出が悪くなって胃痛や胃もたれになってしまう。
 適しているかどうかの目安としては、症状が“空腹時”に現れるのか“満腹時”に現れるかだろう。
 今回の患者さんの場合は、食後という事なので適応外となる。
 そこで、舌の状態を見せてもらうと、舌の白い苔が左右に割れていた。これは、神経的な緊張(心配事)などが原因で胃が水を上手くさばけていないと考えられる。
 その事を尋ねてみると、どうやら当たったようで悩み事がある様子。となると、治療するための漢方薬としては、2種類が候補に上がる。
 みぞおちが痞えるような感じがするというのに相違が無ければ、胃が痙攣しているという事なので半夏写心湯(はんげしゃしんとう)が適応する。
 もう少し上の部分、咽喉の下の方が痞えるようであれば、食道が狭窄しているということであるから半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)が適当だろう。
 また、胃潰瘍の予防には柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)も使える。胃潰瘍を治すほどではないが、消化器と肝臓を助ける働きがあるので、症状が激しくなければ使ってみるのも良い。
 今回の患者さんは、まず半夏写心湯を試してみて、合えば服用を続け、合わなければ半夏厚朴湯を試してみるという事にした。
 眩暈(めまい)と吐き気に葛根湯(かっこんとう)を求めて患者さんが来店。
 風邪の初期であれば、そういう選択もあるとは思うが、お話を訊いてみると、わりと頻繁に起こってる症状らしい。
 吐き気が強いようであれば、二陳湯(にちんとう)を服用すればだいぶ楽になるはず。
 しかし、食欲が落ちているわけでもないのに眩暈とともによく起こるのだとすれば神経的な要因も考えられる。
 今回は、神経的な眩暈に重点を置いて苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)を勧めた。
 そろそろクリスマスのイルミネーションが飾られたり、クリスマス商戦に向けた企業やお店の宣伝活動が始まった。
 それらのチラシやポスターを見て気になるのは、『X’mas』という表記。
 最近では『Xmas』という表記が増えたのに、未だに『’(シングルクォーテーション)』を見かけることがある。近所のスーパーのチラシに書いてあった時には、前のめりにズッコケてしまった。(人生いつでも前のめり。)
 英語表記では、『’』は何らかの文字を省略した場合に用いる。「I am」を「I’m」とか、「can not」を「can’t」というように。
 では、『X’mas』というのは、何を省略しているというのか。
 そもそも、あの『X』は、アルファベットの『X(エックス)』ではなく、ギリシャ文字の『X(カイ)』である。『X(カイ)』は、それ一文字で『キリスト』を意味する。
 そして、『mas』は英語では『お祭り』の意味で、その語源はラテン語の『missa(ミサ)』に由来し、本来の意味はカトリックの事を指して、そこから転じて、ローマカトリック教会で神を讃え、賛美と感謝を捧げる聖体拝領を行う典礼の事を意味するようになった。
 だから『クリスマス』とは、“キリストを讃えるお祭り”という意味で、『Xmas』という1つの単語なのだから、何も略してはいないのだ。
 『キリスト』を英語で表記すると『Christ』だから、『Christmas』というのを省略するとすれば『C’mas』という表記が正しいかもしれない。見たこと無いけど。
 ちなみに、『キリスト』というのは名前ではなくて、油を塗られた者という意味で、王に与えられた称号だったのが転じて救世主の意味となり、『イエス』の敬称として使われるようになった。
 もしこれからクリスマスカードを自分で作ろうという人がいたら、『’』を付けないように気をつけましょう。
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◆11月16日(日)/2003年◆
 以前に腰の神経痛で麻杏よく甘湯(まきょうよくかんとう)を渡した患者さんが来店。
 神経痛の方は治まったのだが、肩こりが残っているとの事。
 しかし、仕事で良く手を使うという話を以前に聞いているので、腱鞘炎と同じ症状が肩に出ているのではないかと推測した。
 詳しく訊いてみると、やはり“こり”というよりも“痛み”の方が強いらしい。
 胃腸は丈夫そうなので、桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)を勧めた。
 効能は腰痛や関節痛だが、腕を良く使う人の疲労による痛みにも効果がある。
 咳止めの薬が欲しいという患者さんが来店。
「早く治るヤツをくれ」との事だったので、まずは咳の種類を確認するために症状を尋ねてみた。早く治すには、ピンポイントで狙い撃ちするのが大事である。
 ところが、「そんなのいいから、効くヤツくれよ」という。
 ええと、教えてもらわないと手も足も出ないんですけど。
 とりあえず重ねて、痰のからむようなゴホンゴホンという咳か、乾いたようなコンコンという咳かを質問すると「両方だ」との答え。
 両方? うーん、まぁそういう事もある。
 そこで、寒くなると酷くなるか暖かくなると酷くなるかを尋ねてみた。すると、寒くなると酷くなるという答えだった。
 寒くなると咳が酷くなる場合には、温めながら咳を止める小青龍湯(しょうせいりゅうとう)が適応するだろう。
 そう思って勧めてみたのだが、「漢方薬は長く飲まなきゃ効かないんだろう」と断られた。
 “また”である。漢方薬は長く飲まなければ効かないという誤解は、どこから出てくるのか私としては理解に苦しむ。
 しかし、患者さんの要望は「早く治す」という事だったので、まずは効き目が早い事を説明した。私自身も冬場の喘息には小青龍湯を服用しており、飲むとすぐに体が火照ってきて咳が楽になるのを体感しているし、単に咳を止めるというのではなく治すという観点から言えば、かなり効果が期待できる。
 だが今回の患者さんは、「そんなの3日ぐらい飲まないと効かないんだろ?」と、こちらの説明がまったく耳に入らなかった模様。
 漢方薬を毛嫌いしている人がいるのも確かだし、以前に何らかの治療で漢方薬を用いて期待した効果が得られなかった人などは特にそうだ。中には、“漢方薬”と言っておきながら、服用した物がなんだったのかを尋ねてみると、漢方薬ではなくて単なる生薬だったり、民間療法を試しただけという事もあるのだけれど。
 とにかく、それほど漢方薬を信用できないようならば仕方が無い。一般の市販薬の中から咳止めを選ぶ事にした。
 ところが、咳がどれくらい続いているのかを尋ねたら、かれこれ1週間近く続いているらしい。それも、日が暮れてきてから酷くなるという。
 となると、一般の咳止めでは一時的に神経を麻痺させて咳を止めても、薬が切れればまたぶり返すのは目に見えている。
 漢方薬の方が早く治すことができると、再度勧めてみた。
 それでもやっぱり、「漢方薬ってのは、3日くらい飲まなきゃ効かないんだろ?」と言う。
 そんなに嫌がるほど何かあったのかというのが気になり、以前に漢方薬を使った事があるのかを尋ねてみたのだが、使った事は無いとの答え。
 ううん、使った事が無くて「3日くらい飲まなきゃ」というのは、いったいどういう根拠なのか。
 だいたい現在では、一般の市販薬の中にも漢方薬の葛根湯(かっこんとう)を処方した『カコナール』という製品や、桂枝湯(けいしとう)を処方した『コルゼシロップ』などの製品もある。効き目が遅かったら、風邪薬として役に立たないと思うのだが。どちらにしろ、残念ながら今回のように咳が主訴の場合には効果を発揮しない。
 良くない事だけれど、なんだか相手をするのもバカバカしくなってしまった。
 何故なら、ウチの周辺は複数のドラッグストアーが犇(ひし)めき合っている激戦区である。
 その中で、どうして『漢方相談』の看板を出しているウチに来て、漢方薬は嫌だと言うのか分からない(^_^;)
 ウチの近くに“にんにくラーメン”という看板を出している『げんこつラーメン』というラーメン屋があるが、その店に入って「にんにくは嫌いなんだ」
と言われてもねぇ………。
 結局その患者さんは、目に付いた(まさにパッケージを見ただけ)咳止めのシロップを買っていった。
 漢方薬の効果に疑問を持っていながら、成分も詳しい効能も確認せずに薬を買っていくとは不可解な(?_?)
 説明しないで適当に選んで買ってくれるなら、こんな楽な商売は無いのだけれど。
 民主党になった小沢一郎氏が、テレビ朝日の番組に出演し、同党が議席を伸ばした衆院選について「負けは負けだ。率直に認めて今後の対応を考えなければならない」と発言したというニュース。
 カッコ良すぎるぞ(笑)
 菅直人氏が精一杯負け惜しみを言って、みっともなさを倍掛けでさらしているのに対して、小沢氏の発言は民主党を頼りないと思っている人を振り向かせるのではないだろうか。
 うかうかしていると、本当に民主党は小沢氏に乗っ取られてしまう予感がする。
 私は小沢氏も菅氏も嫌いだけど、小沢氏の持っている“悪の魅力”は依然として「何かを壊してくれる」期待感を抱かせる。首相になる前の小泉氏と同じではあるな。
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◆11月17日(月)/2003年◆
 『ハルンケア内服液』を求めて患者さんが来店。
 http://www.nccpromo.net/harncare/
 頻尿で、夜中に何度もトイレに起きてしまうとの事。
 しかし『ハルンケア内服液』は、1日分で千円もする。
 この『ハルンケア内服液』、内容成分は漢方薬の八味地黄丸(はちみじおうがん)と同じである。それでいて、ウチでの価格は1週間分で1千4百70円。八味地黄丸の方が断然お得である。
 そこで、その患者さんも八味地黄丸に決めて1ヶ月分購入するという。
 ヤタッ(⌒▽⌒)♪
 ところが、一度お会計を済ませたところで、ふと気になった。目の前の患者さんは恰幅(かっぷく)もいいし、50代そこそこに見える。八味地黄丸が合うようには見えない。
 のぼせが無いか尋ねたところ、少し顔が火照ったりするという。しかも、体力自体はある様子。
 それならば、八味地黄丸よりも六味丸(ろくみがん)の方が良いかもしれない。
加齢による機能面の低下であれば八味地黄丸だが、季節の変わり目などによる疲労から来る物質面の低下には六味丸を使う方が合う。
 その事を説明し、六味丸を1週間分だけ試してもらう事にした。もし合えば、買い足すとの事。
 お会計を計算し直して、差額をお返しした。
 イカンイカン、目の前の売り上げに釣られたらイカンよ。>俺
 乙字湯(おつじとう)の液剤が順調な滑り出し。
 痔の薬というと、どうしても塗り薬の方を選ぶ患者さんが多いが、繰り返しなるようならば、やはり体の中にこそ原因がある。
 痔の症状は、あくまで体の不調が特定の部位に現れただけで、塗り薬だけでは対症療法にしかならない。
 店頭では、その事を説明するとほとんどの患者さんが塗り薬と合わせて購入してくれる。
 でも、それで治ってしまうと、もう塗り薬の方も買わなくなるので、実は乙字湯を売れば売るほど収入減になるような気もするな(苦笑)。
「アミノ酸を下さい」というお客さんが来店。
 またですか(笑)。
 (10月10日の日記を参照)
 なんでも、昨日の『発掘! あるある大辞典』でアミノ酸の事をやっていたらしい。
 調べたら、この番組ではアミノ酸を取り上げるのは3回目。
 そろそろアミノ酸ブームも下火になってきたから、スポンサーのテコ入れか。
 http://www.ktv.co.jp/ARUARU/
 番組中では肝臓にいいと放送していたとかで、お客さんは肝臓に効くアミノ酸が欲しいという。
「効く」と言われると、「無い」としか言いようが無いぞσ(^◇^;)。
 どうやら、お酒を飲む前に摂取すると悪酔いを防ぎ、お酒を飲んだ後に摂取すれば二日酔いにならないという事だったらしいのだが、そもそもアミノ酸はタンパク質を構成するものである。それなら豆腐を食べて油揚げの入った味噌汁を飲めば充分。
 どうして、わざわざ高いお金を出して、アミノ酸を購入する必要があるのか。どう考えても、スポンサーの意向が反映されているようにしか思えない。
 しかも、番組では「アミノ酸は薬局・ドラックストアなどで取り扱っています。」と言ったとか。
 ウチには置いてませんよー( ̄^ ̄)
 今回のお客さんは、アミノ酸の種類も確認していなかったようなので、もし肝臓が心配ならばとネオレバルミンを勧めてみた。
 360粒入りの瓶を買っていかれたが、たぶんアミノ酸を服用するよりも効果があります。
 抗がん剤の使用を、保険適用で使いやすくするための抗がん剤の『併用療法検討委員会』を厚生労働省に設置するとのニュース。
 現在日本では、複数の抗がん剤を組み合わせる併用療法で未承認薬を1つでも使うと、治療費が全額患者負担となる。
 そのため患者団体は製薬会社に効能拡大の申請をするよう求めているが、製薬会社側は臨床試験に時間と経費がかかることなどから申請に消極的だという。
 確かに製薬会社も企業である以上は、数十億円の投資をするというのはリスクが大きすぎて難しいのは理解できる。
 また、未承認の薬を信じて使用するのは患者の自己責任においてという事で保険を適応できないという考え方も間違っているとは思わない。
 しかし、こう言ってはなんだが、使用する患者さんは、いわば自ら人体実験をするようなものなのだから、そのデータを買い上げるという形で企業や国で補助してもいいと思うのだけれど。
 同省は委員会が選んだ抗がん剤による治療を特定療養費制度の中で保険適用し、申請の「呼び水」としたい考えのようだが、果たして上手く活用できるのだろうか。
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