『肝油ドロップ』が積極的に必要な理由は？

　『パパゼリー』を探しているというお客様が、２件続いた。
　ネットで調べてみたら、品薄状態らしく、うちのお店の発注システムでも仕入れ不可になっていた。
　この間も、『肝油ドロップ』を買いに来たお客様が続けて来店したことがあったなと思い、何かの媒体で話題になったのか尋ねてみたけど、テレビや雑誌で取り上げられたという訳でもないらしい。
　でも幼稚園で園児に配ってるという話も、このあいだ聞いたな。
　一人のお客様は『肝油ドロップＳ』を買って行かれて、もう一人のお客様は私の話を聞くうちに怖くなったようで購入をやめた。
　ちょっと脅かしすぎたか(^_^;)
　いや、子供にいつも与えていて周りの人たちも同様だという話を聞いたもので、つい……。
　そもそも肝油ドロップが重宝されていたのは、今から六十年以上昔のはずで、それこそ子供の栄養不足が心配されていたから。
　現代は偏食はありがちでも、栄養不足については深刻な育児放棄でもされていない限りは、心配無いはずである。
　そして、『肝油ドロップ』にどんな栄養が含まれているのか知っているお客様は、うちのお店に探しに来た人の中にはいなかった。
　もちろん直接的にクイズみたいに尋ねた訳じゃないけど、なんの栄養の不足を心配しているのか訊いてみたら、『肝油ドロップ』と関係無さそうだったので。
　製品によって細かな違いがあるけど、肝油ドロップの主な栄養は『ビタミンＡ』と『ビタミンＤ』である。
　とちらも脂溶性ビタミンで、ビタミンＣやビタミンＢといった水溶性ビタミンとの違いは、体内に貯蔵しておけるという点。
　それはつまり、脂溶性ビタミンは毎日摂取する必要が無く、水溶性ビタミンは過剰に摂取しても排泄されてしまうから、多く摂ったところで無駄になるということ。
　それだけなら悪くないんだけど、人間の体はそこまで便利な仕組みをしていないため、脂溶性ビタミンを多く摂取すると、適切に排泄することができず体に害を及ぼす。
　その昔、「ビタミンを大量摂取すれば病気にならない」というメガビタミン思想が喧伝された時期には、多量のビタミンＡを摂取することで皮膚が乾燥して剥けたり、関節痛になったり骨が脆くなるとか、頭痛や嘔吐が起き、昏睡状態になって死亡するケースもあった。
　これらは極端な例としても、『肝油ドロップＳ』の注意書きには、「ビタミンAを1日10,000国際単位以上摂取した妊婦から生まれた小児に先天異常の割合が上昇したとの報告があります」と明記されている。
　10,000国際単位というのは分かりにくいが、『肝油ドロップＳ』の場合で言うと、1日1回2粒で4,000国際単位を摂取でき、これは大きめの人参で1/2本に相当するので、単純に考えると人参を1日に２本食べるとオーバーとなる。
　まぁ、人参からビタミンＡを摂る場合は、体に必要な分だけがベータカロチンからビタミンＡに変換されるため、そんなに怖いことは無いんですが。
　この辺、前言を翻すようだけど、人間の体は良く出来ているなぁ。
　そしてビタミンＤの方も過剰に摂取すると、高カルシウム血症を招いて、食欲減退や吐き気を催し、腎臓は永続的な損傷を受けて腎不全になる。
　『肝油ドロップＳ』では、1日1回2粒で400国際単位を摂取でき、椎茸なら２枚、シラス干しなら10gが相当するうえ、そもそもビタミンDは日光に当たることで体内でも生成される。
　さて、では子供の場合を考えると、ビタミンＡに関しては１日に人参を二切れでも食べれば充分なうえ、ほうれん草やトマトといった「色の濃い野菜」や卵からも十分に摂れ、それこそ『肝油ドロップ』を一粒食べた日には摂り過ぎという事になる。
　ビタミンＤにしても、魚に多く含まれていると云われているが、やはり玉子にも入っているし、キノコ類にも含まれている訳だから、食物アレルギーでもなければ『肝油ドロップ』が積極的に必要な理由は見当たらないように思われる。
　ちなみに、母乳にはビタミンＤが含まれていないため、「粉ミルクは嫌」「自然に育てるのが一番」と思っている人は、くれぐれもビタミンＤの新生児への投与を拒まないようにお願いします。
　また、過度な日焼け対策も体内でのビタミンＤの生成を阻害してしまうため、ご注意下さい。

　『ヘム鉄』を購入されたお客様から、ＤＨＣの『カルシウム』や『葉酸』の取り扱いが無いか尋ねられた。
　目的を尋ねてみると、奥さんが妊娠していて、何かで摂取した方が良いという情報を得て買いに来たらしい。
　妊娠中、特に妊娠初期は悪阻(つわり)なんかもあって栄養不足に陥りがちだから、さっきの肝油の話と違って、サプリメントで栄養を補充するのは良いと思う。
　ただ、そうであれば葉酸は鉄と出逢って血液になるように、それぞれを単独で摂取するより一緒のほうが望ましい。
　そうお話すると、『ヘム鉄』を返品して『葉酸・鉄・カルシウム』のサプリメントを購入された。
　あー、買って頂いてから付け加えるのはなんですが、「食べない物」をチェックするよう勧めた。
　病院から指導されたという訳でもなかった無かったようだから、やみくもにサプリメントを買うより、不足している栄養に絞ったほうがお金の無駄遣いにならないし、過剰摂取による害も避けられるので。