科学的な解釈と漢方薬的な考え方のせめぎ合い

 『消毒用エタノール』を求めて、お客様が来店。
 用途を尋ねてみたら、マットのカビ取りに使うとのこと。
 マットのカビ取りに使えるかなぁ(^_^;)?
 訊くんじゃなかった(笑)
 普段想定していない使い方に遭遇すると、どう応対したものか困ってしまう。
 医薬品の説明の方が、楽だなと思ったり。
 『消毒用エタノール』で殺菌はできるだろうけど、目的はむしろ殺菌よりもカビの汚れを取りたいんじゃないかと考えると、たぶん思い通りにならないんじゃないかな。
 お客様も使った経験がある訳では無く、『カビキラー』は色落ちするからと考えての選択らしい。
 なのでお客様には、むしろ色落ちしないということは見た目を綺麗には出来ないことを説明して、お買い上げ頂いた。
 後で調べたら、『キッチンハイター』を使ってカビの斑点を落とす方法を見つけた。
 でも、あくまで「少範囲で日が浅い」場合にということのようなので、やっぱり諦めるしか無さそう……。
 

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 『アルパノール』(抑肝散)を求めてお客様が来店したけど、うちには置いていない。
 『抑肝散』は認知症で激高しやすいお年寄りに処方されることもあり、やはり効能的には名前を読んで字の如く「肝を抑える」であろう。
 どういう事かというと、お酒で人が変わるというのは、直接的にはアルコールによる脳の変調というのが科学的な解釈であるものの、肝臓に負担がかかる、つまり肝臓が不調になると、感情の抑制が効かなくなると漢方的には考えられている。
 ちなみに胃も「怒り」と関係があり、胃が痛むとイライラするのがそれ。
 肝臓の絡む「怒り」との違いは、肝臓の方が感情の起伏の一つに「怒り」があるとすれば、胃の方は持続的な感情といったところか。
 そして、「卵が先か鶏が先か」になるけれど、肝臓が傷めば感情の起伏が激しくなり、感情の起伏が大きい人は肝臓を傷めやすい。
 これは胃も同じ話で、胃を悪くするとイライラして怒りっぽくなったり悩みがちになり、ちょっとしたことに怒りを覚えたり何かと悩むことが続くと胃が悪くなる。
 まぁ、そういう関係を逆手に取って、肝臓を助けるてあげると感情を抑える事もできるというのが『抑肝散』の使い方というところ。
 そんな話をしてみると、お客様の主訴は、イライラするというより緊張してしまうそうで、合わせて疲労感もあるという。
 そして、病院で『柴胡加竜骨牡蛎湯』が処方されたことがあり、それは効いた気がしなかったそう。
 柴胡剤は、やっぱり肝臓に働きかける物だから、合わないのもさもありなん。
 痩せ型で声が弱いことからすると、胃の働きを助ける『桂枝加竜骨牡蛎湯』の方が適応するんじゃないかと思ったり。
 でも、ここは緊張の方を重視すべきか。
 緊張の方は、むしろ肺や気管支が関係する。
 科学的にはどうなのよというツッコミを受けそうだけど、人間は空気を呼吸しているだけじゃなくて、エネルギーも呼吸で取り込み不要な物を吐き出しているというのが漢方的な考え方。
 緊張すると適切な呼吸ができなくなり、それは当然のように疲労にも繋がる。
 そして、これまた「卵が先か鶏が先か」で、適切な呼吸が出来ないと緊張が高まってしまうのだ。
 そこで、喘息の人に使う『半夏厚朴湯』を案内した。
 舞台に立つ人や、慣れないスピーチをしなければならない人にも勧めていますと説明したら、お買い上げ頂けた。

 やや高齢のお客様が来店し、咳の相談を受けた。
 風邪をひいて咳だけが残ったそうなので、体内が乾燥している可能性をお話して、『麦門冬湯』を紹介した。
 でも液剤を希望されたため、『アネトンせき止め液』と『HPルキノンせき止め液』を案内すると、後者を購入された。
 『麦門冬湯』の液剤を入荷できるルートを、開拓できないもんかな(;´・ω・)
 お客様には、風邪で胃を悪くし、胃炎を起こして体内が乾燥している可能性があるので、消化に良い食事をするようお話した。

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科学的な解釈と漢方薬的な考え方のせめぎ合いへの1件のコメント

  1. アバター はぐれ薬剤師
    はぐれ薬剤師 コメント投稿者

    ご指摘の通り漢方の使い分けは気候風土によることもさる事ながら、いつも疑問に思っているのが、日本の漢方流派による実虚証です。江戸時代と現代、体質が同じとは考えられません。江戸時代の方が活きのいい日本が沢山いたと思います。江戸時代の実証の人は現代には存在しないなんて考えたりもしますし、江戸時代の虚証の人は現代は実証だったり。考えるに、メーカーさんは既に気が付いていて漢方書に合うように匙加減をしているのでしょうね。昔の大柴胡湯の症にあう日本人はいないはずですから。