やや高齢のお客様が、中学生の子供を連れてハイキングに行くとのことで、蜂に刺された場合の対処について尋ねられた。
どうもお孫さんとかではなく、子供会のようなグループで行くらしい。
ふむぅ、これは難しい。
私も、小学校高学年以上の子供たちを50~100人ほどキャンプに連れて行って指導したり補助をしていたけど、虫対策というのは案外と大変。
ミツバチだったとして、刺さった針を取り除くことと、『急冷ヒヤロン』のように叩くと急冷できる物や濡れタオルを凍らせるスプレーを使い患部を冷やすのが基本であるものの、何に刺されたか分らないという場合もあるため、やはり病院の受診を第一に考えるのが大事だろう。
スズメバチは黒い物に対して攻撃的になる習性があるから、黒髪が多い日本人は日除けも兼ねて必ず帽子を被ることが重要だし、もし見つけても驚いて大声を出して刺激しないようにと教えておかなければ。
私が携わっていた頃には、事前に現地周辺の医療機関を調べ、同じく現地の消防本部に問い合わせて、救急車の平均的な到着時間を確認したうえで、先の医療機関に予め挨拶しておいたりしたもんである。
今なら、ネットで調べられるからだいぶ楽になったはずで、そのあたりを手を抜くことの無いようにとお話した。
安全対策というのは、大袈裟にしておいて空振りが理想なので。
普段ソフトコンタクトレンズを使っているというお客様が、最近充血気味なため眼鏡に替えて改善してきているものの、1週間ほど経っていて心配と相談された。
そうであれば、やはり病院を受診してもらいたいところだけど、なかなか時間が取れないというのも分かる。
季節柄、紫外線も気になるというので『バイシンUV』をお勧めして、お買い上げ頂いた。
製薬メーカーの営業さんから、面白いデータを見せてもらった。
ドラッグストアーにおける、お客様の購買動向に関するアンケートの結果で、約3割の人が来店前に特定の銘柄を決めており、6割強の人が店頭で自分で選び、残りの1割に満たない人が店員に尋ねているという内容。
私の実感でも、その割合に違和感は無い。
しかしそうなると気になるのは、自分で選んでいるという6割強の人の判断基準だ。
そのアンケート結果によると、パッケージを見て決めているという。
ただ、アンケートではパッケージの何を参考にしているのかまでは分からなかった。
ううん、そこを調べて欲しいなぁ。
もしパッケージに書いてある効能効果を参考にしているとしたら、アレはほとんど当てにならない。
なにしろ、パッケージに書いて良いこと悪いことが厳格に定められているため、どうしても似たり寄ったりになってしまう。
となると手掛かりは、処方内容ということになるのだけれど、成分で判断するには基礎知識が必要だし、せめてスマホで検索して調べるくらいしないと分からないのではないか。
例えば、エスエス製薬の咳止めで『ブロン錠エース』と『ブロン錠』を見比べてみよう。
パッケージを見ると、『ブロン錠エース』は名前の前に「せき・たんに」と書いてあり、『ブロン錠』は名前の後に「せき・たんに」と書いてある。
両者の成分表示を比較すると、両者の違いとして顕著なのは、『ブロン錠エース』に『L-カルボシステイン』が配合されている点。
『L-カルボシステイン』は去痰剤で、主な働きは気道粘膜を正常化して痰の滑りを良くすることだ。
だからこの場合、咳とともに痰が絡んで出にくいのなら『ブロン錠エース』を、空咳なら『ブロン錠』を選択するという考え方ができる。
絶対の指針ではないけれど、迷った時には参考になるはずだ。
そして私ならそこに第三の選択として、痰があるのに出ないのは上半身の水分不足、すなわに乾燥しているからで、それは空咳でも同じことだから、上半身を潤して咳を止める『麦門冬湯』を候補に加える。
これはまだ成分を比較せずとも、パッケージを注意深く見ていれば、「せき・たんに」という効能効果が名前の前に書かれているか後に書かれているかで区別が付くパターン。
では、もう一つ例を。
第一三共ヘルスケアの総合かぜ薬で、『新ルルAゴールドS』と『新ルルゴールドDX』を見比べてみよう。
『新ルルAゴールドS』のパッケージには、「鼻水、はなづまりに」として『ベラドンナ総アルカロイド』と『クレマスチンフマル酸塩』、「発熱、のどの痛みに」として『アセトアミノフェン』が表記されている。
一方、『新ルルゴールドDX』のパッケージには「鼻水・鼻づまり」に順番は違うが『クレマスチンフマル酸塩』と『ベラドンナ総アルカロイド』が表記されており、他に「せき・たん」に『ブロムヘキシン塩酸塩』、「のどの痛み」に『トラネキサム酸』とある。
これだけを見ると、まるで『新ルルAゴールドS』には「せき・たん」に対応する『ブロムヘキシン塩酸塩』が入っていないみたいだけど、成分表示を見るとちゃんと入っている。
じゃあ何が違うんだ、と私も悩んだ。
まるで、『サイゼリヤ』のメニュー表の間違い探し並みに難しいクイズのよう。
両者の成分表記を見比べてようやく分かったのは、『新ルルゴールドDX』に入っている『トラネキサム酸』が、『新ルルAゴールドS』では『ノスカピン』と入れ替わっているということ。
『トラネキサム酸』はパッケージに表記されている通り「のどの痛み」止として働く抗炎症剤で、『ノスカピン』は咳止めである。
でも、『新ルルゴールドDX』では何故か咳についてはパッケージで触れていない。
それと、『ノスカピン』は副作用として吐き気を発現することがあるので、食欲が落ちている風邪には私はお勧めしない。
ともかく、この両者の違いに約6割以上という店頭で自分で選んでいる人は、本当にこんな謎解きを毎回しているのかと不思議でならない。
いや、もしかすると謎解きマニアとかいるかもしれませんが。