『ピロエース』を求めて来店したお客様に用途を尋ねると、「手に水虫ができた」とのこと。
症例は少ないものの、ありえない話ではないのだけれど、患部を見せてもらうと水疱ができていて、弱いながらも痒いということからすると、掌蹠膿疱症のようにも思える。
手水虫の一般的な鑑別としては、「片手だけにできて」「痒みが無く」「乾燥しているみたいに角質化している」のが特徴。
もちろん例外はあるし、進行すると感染症だから両手とも症状が現れるし水疱ができるケースもある。
まぁ、要するに自己診断どころか店頭での鑑別も難しい。
特に、「乾燥しているみたいに角質化している」と乾燥肌や主婦湿疹と間違えやすい。
しかも痒みが無いため、なおさら軽度の皮膚疾患と勘違いしがち。
風邪で微熱だと風邪の初期と勘違いしているうちに、実は発熱する体力が足りなくて風邪としては進行しているというの同じ。
掌蹠膿疱症だとすれば、本来は外敵を倒す白血球が皮膚の角質に溜まってしまい自分の体を攻撃する病態で、菌やウイルスの介在ではないため感染する心配はないけれど、自分の体の中でのことだから同じ場所で慢性化してしまう。
そして当然ながら、真菌を倒す水虫薬は効果が無いどころか、その刺激を外部からの攻撃と誤認して患部を悪化させる可能性もある。
掌蹠膿疱症なら、ステロイド剤で炎症を抑えるか、アレルギーの一種と考えて『十味敗毒湯』を使う方法がある。
とはいえ、皮膚疾患は難しいし、お客様も用途を尋ねなかったら自己診断で水虫薬を買おうとするくらいだから、今後の安易な薬の使用を防ぐためにも、まずは病院を受診するよう勧めた。
手の湿疹に使っていた薬を使い切ったとのことで、お客様がその薬のパッケージを持参された。
聞いたことのない商品名だったけど、成分表示を確認すると『ウイルクイックPVA軟膏』に、ビタミンEを足した物だった。
ビタミンEは血行促進のために入っていると思われるものの、症状を尋ねたら痒みが強く、初めての症状で、洗剤を変えたせいかもとおっしゃられた。
ふむぅ、洗剤の刺激による手荒れなのかアレルギー反応なのか、判断の難しいところ。
とりあえず強い痒みにはステロイド剤が適していて、現状では必ずしもビタミンEは必要ですないことを説明して『ウイルクイックPVA軟膏』をお買い上げ頂いた。
ただ、ステロイド剤は長期連用するものではないため、病院の受診も検討するようお話した。
アレルギーなら、『十味敗毒湯』の他に『タウロミン』なんかも考えたけど、安易な判断もできないから、今回は案内しなかった。