お客様から、高齢の母親のために「お腹の痛くならない便秘薬を」と注文された。
まったく出ない訳ではなく、コロコロ便の後には普通に排便できるというから、腸管が乾いて潤いを失っている標準的な老人性の便秘だろう。
これが子供や若い人だと、コロコロ便はストレスによる腸の弛緩で『小建中湯』や『桂枝加芍薬湯』を用いるところ。
今回のように老人性の場合は、『潤腸湯』が適応するのだけれど市販薬には無く、病院で処方してもらわないと。
すると、血圧に関する薬を処方されていると分かり、お薬手帳を持参していないため、迂闊な物は案内できない。
ここは考え方を変えて、『潤腸湯』が腸を潤すのと反対に、腸内の水分を吸って便の方を潤し嵩を増やす『サトラックス』の方が安全か。
ただなぁ、ますます腸管を乾燥させてしまう可能性もあるんだよなぁ。
なので、担当医には『潤腸湯』か『桂枝加芍薬湯』を処方してもらえないか相談するよう勧めて、今回は『サトラックス』を試して頂くことになった。
水虫の薬を買いにいらしたお客様に、菌の検査をしたことがあるかを尋ねると、患者は成人の息子さんで、おそらく病院に行ったことは無いだろうとのお話。
毎年この時期に、足の親指の付け根が白っぽくなるようだというお話なれど、時期的に湿気が多く、汗疹などとも判別しにくいことを説明した。
息子さんは一人暮らしをしていて、帰ってきたところなため渡したいとのことで、あまり殺菌作用が強くない(つまり水虫じゃない場合のダメージが少ない)『ダマリンL』を案内してお買い上げ頂いた。
でも、一人暮らしであれば、なおさら病院に行くことに慣れさせた方が良いのではと提案した。
以前に、119番に通報したのに救急車出動を断られた大学生が死亡した事件かあったが、通報した時点で大学生の会話が明瞭ではなく、すでに意識が混乱していた様子が窺える。
https://youtu.be/m_mMczrpHNE
このケースでは、近くの病院で風邪と診断された後に重症化したらしい。
私自身も風邪と診断されて帰された後で肺炎になって、救急車で逆戻りとなったけど、救急車を呼ぶ段階で声が出せなくなっていた。
振り返れば、風邪と診断された時に医師への症状の伝え方が適切だったか、帰ってからの体調の変化に対する判断が甘くはなかったかと、「患者視点」で反省した。
肺炎になる予兆を見逃した医師に対して腹立たしい気持ちは当然あるものの、自身の危機意識が低かったのも事実。
『化物語』の忍野メメのセリフに「助けないよ、力を貸すだけ。君が一人で勝手に助かるだけだよ」とあるように、医師を頼るときに受け身では駄目なのだ。
そして何事も、トレーニングや反復練習は必要。
必要なんだけど、病気の練習なんてやりようが無い。
あるとすれば闘病記を読んだり見たりくらいだけど、商業誌だと必ず家族との絆だの夢への挑戦の途中だの無用の感動話が洩れなくついてくるし、同人誌やネットでの書き込みでも、わざわざ書き残すくらいの大病が多いから、今度は参考にするには特殊な事例すぎて参考にならない。
となると実用的なのは、とりもなおさず医師などの医療関係者との対話ではないかと私は思う。
何を伝え、どんな質問をして、示された情報をどう処理するか。
それを、機会を見つけては(具合が悪くなって時がチャンス)練習を積み重ねておけば、「患者の達人」となる事であろう。
なにしろ、何も調べず、分からなければ店員に尋ねることもしないで薬を買う人が多いことからすると、病気になった時の「練習不足」は切実な問題なんである。