『爽和』と『太田漢方胃腸薬2』を見比べて迷っているお客様がいたので声を掛けてみたけど、案内は断られた。
どちらもストレス性の胃の不調を謳っているから、分かりづらいかと思ったんだけどな。
『爽和』は『安中散』に手足の冷えを改善する『四逆散』を加えたもので、仕事が変わったとか誰かに怒られるとか外部から受けるストレスに対応する。
一方、『太田漢方胃腸薬2』は『安中散』に水分代謝を改善する茯苓を加えた『安中散加茯苓』という処方で、起きてもいないことを心配したりといった内面的なストレスに向いている。
ただ、どちらにも痛み止めは入っていないので、胃が不調で胃痛があるようなら、『安中散』と痛み止めの『芍薬甘草湯』を合わせた『大正漢方胃腸薬』の方が良い。
今回は『太田漢方胃腸薬2』を選ばれ、お会計をしながら症状を尋ねるとゲップが出るというお話があったため、『半夏瀉心湯』も紹介してみたけど、パッケージに「胸やけ」とあるのを見て「違う」とのことで、そのまま購入となった。
まぁ確かに『安中散加茯苓』もゲップには対応しているものの、それだと『六君子湯』も候補になるから実に難しいところ。
本当は、鳩尾(みぞおち)に指を入れようとして痛むかどうかを確認したいところだったけど、そこまで踏み込める雰囲気ではなかったから訊けなかった。
人差し指と中指と薬指の3本を揃えて鳩尾に少し食い込ませてみて痛むようなら、神経性胃炎の『半夏瀉心湯』が適応するのに対して、元から胃弱で基本機能が低い場合は『六君子湯』が使える。
ここで問題になるのは、胃の基本機能と症状が相対的だということ。
例えば、走るのが遅いからといってそれは足が悪いということにはならないが、無理に早く走ろうとすればその疲労の度合は大きくなるだろう。
その場合は元々の足の機能に対して無理をしたことを考慮した、中長期的なケアが必要となる。
でも、元が頑健な足であるのなら一時的な疲労などものともしないだろうから、下支えのようなケアは不要。
それは胃腸薬の使い方にも云えて、「普段どうだったか?」というのは使用する薬を選定するうえで重要な情報なのだ。
先のように鳩尾に指を入れてみて痛むようなら胃酸過多が考えられるが、それは同時に元々の胃の機能は低くないと考えられる。
また、普段から水や氷といった冷たい飲み物を好むのなら、胃の機能が高い一方で胃炎を起こしやすいと推測でき、お湯や温かいお茶を好むのは胃の機能が低下していて内臓が冷えやすいことを示している。
お年寄りが温かいお茶を好むのは、なんとなく落ち着くというよりも加齢により胃の機能が衰えているからとなる。
今回のお客様はストレスの表記があるパッケージの『爽和』と『太田漢方胃腸薬2』から選んだのだから、ストレスが思い当たるのは間違いないのだろうけど、ストレスに対する体への負担も元々の機能と相対的だから、果たしてどうだったのかは分らない。
実のところ、それを知りたい欲もあるんだよねぇ。
ぶっちゃけ適応するかどうかを知識として覚えても、実際に運用しての効果は患者さんから教えてもらわないと分からない。
でも、ドラッグストアーじゃ薬を売った後に患者さんが報告に来てくれることは滅多に無く、その積み重ねは難しい。
なので、たまに「良くなったよ」と言ってもらえると、気持ち的に「☆⌒ヾ(*゚∀゚)ヒャッホゥ♪」と嬉しいだけでなく、勉強になるから有り難いです。
もちろん、「効かなかったねぇ」と言われて落ち込むこともある訳ですが(´・ω・`)
お客様から「胃腸炎の薬を」と頼まれ症状を尋ねると、食べると胃痛がするとのこと。
ひとまずお客様の意を汲んでパッケージに「胃腸炎」と書いてある『柴胡桂枝湯』を紹介しつつ、痛み止めの入っている『大正漢方胃腸薬』を案内してみた。
しかし、詳しく話を訊いてみると疲労もあるようだった。
そうであれば、『桂枝湯』で胃の機能を補強して柴胡剤で疲労を緩和したほうが良さそうなので、『柴胡桂枝湯』を使って頂くことにした。