患者さんと付添人とのバランスに悩む

 やや高齢のお客様が娘さんと思われる人と来店し、売場にいらした時から咳の音が、体内の乾燥によるもので『麦門冬湯』が適応しそうな感じだった。
 でも早めに声を掛けても、たいていは案内を断られるため、ひとまずお客様自身が薬を選ぶのを見守ることにした。
 しばらくすると相談を受け、やはり主訴は咳で風邪を思わせる他の症状は無く、咳はほぼ一年中出ており痰が絡むというから、『麦門冬湯』で良さそう。
 歳を取ると体の保水力が落ち、実際に飲む水の量も減るから、なおさら保水を助ける必要がある。
 お客様本人に説明しつつ、娘さんにもお話して『麦門冬湯』を購入して頂いた。
 高齢者でも子供でも、やはり基本は本人に話しかけて、本人からヒアリングをして本人に説明をしなきゃならないんだけど、付き添いの人を無視する訳にもいかず、さりとて付き添いの人に話を振ると、そのまま本人に取って代わって対応しようとされるため、なかなかにバランスが難しい。
 今回は付き添いの人の方もバランス感覚に優れてるというか、要所要所で本人のフォローをされる程度で、お話しやすかった。
 これが、あまりに本人を措いて代わりに対応されるようだと、物理的に体を双方の間に入れて分断し、本人に話をしてから同じ話を付き添いの人にもするという手間が必要になる。
 とはいえ、本人が忘れている事や、客観的な事実の確認には、付き添う人との話も重要。
 だからこそ、なおさら対応が難しい。

 外用消炎剤の棚にいらしたお客様から呼ばれて駆けつけると、筋肉ついに使うから「強いのを」と注文された。
 そもそも筋肉痛にそんな強い薬は必要無いと思うのだけれど、お話を訊いてみると『ボルタレン』を常用しており、他店で少し弱いのにしたら効かなかったから、やはり強いのにしたいという。
 だけど、その効かなかったという薬がなんだったのかは覚えていないそう。
 効いたにしても効かなかったにしても、使った薬は覚えておきましょう(^_^;)
 せめてパッケージを捨てずに取っておくか、携帯電話やスマホで写真に撮っておくのが吉です。
 そんなお話をしてみたら、筋肉痛に使うというお話はどこへやら、若い頃から肩こりや背中の張り、腰痛と長く付き合っているという。
 背中の張りは寝る時の姿勢や寝返りの少なさが影響していたりするため、枕をオーダーメードしてもらうことや、内服薬を使うことなどにまで話を広げると、以前に交通事故に遭い軽いヘルニアと診断されているということが分かった。
 筋肉痛の話から、思えば遠くへ来たもんだ。
 そして内服薬に興味を示されたので、上半身に使う『独活葛根湯』と、ヘルニアや坐骨神経痛に使う『疎経活血湯』を紹介すると、奥さんと一緒に使うかなと言われたので、同じ薬が適応するかは分からないことを説明した。
 性別が違えば体質も違うだろうし、外での仕事の内容や食事だって違えば、表に出ている症状が似ていても原因が同じとは限らないので。
 すると奥さんの方は、肩が上がらないらしい。
 であれば『独活葛根湯』の適応か考えられるものの、頭重感もあるらしいというお話から『釣藤散』を案内すると、『疎経活血湯』は自分が試したいとのとこで、両方を購入された。
 そしていったんお会計を済ませた帰る段になって、11歳の子供が学校から帰ってきてから首が痛いと言っていたというお話が出て、そちらは急性のようだったため『インドメタシンローション』を案内して、お買い上げ頂いた。

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