勝率3割は高いか低いか

 やや高齢のお客様から、水虫の薬をとの注文を受け『ダマリンL』を案内したうえで菌の有無を確認したところ、水虫になったのは10年以上前のことで今は痒くもないとのこと。
 それならどうして薬をと思ったら、予防薬が欲しいというお話。
 予防薬は無いことと、予防法としては殺菌消毒の薬用石鹸を使うよう伝えたところ、公衆浴場の足拭きマットなどが気になっているようだった。
 そういうことだと、やはり家に帰ってから足だけを洗うくらいしか対策は無いかも(^_^;)
 ただ、洗いすぎて体を守る常在菌がいなくなってしまうのも好ましくないことを説明した。

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 夫婦の客様から、湿布剤の種類と効果を尋ねられたので、鎮痛剤の強弱と浸透力の違いを説明した。
 いわゆる『トクホン』や『サロンパス』はサリチル酸製剤で、鎮痛効果は一番弱いものの、肩こりなどで常用するのであれば、弱い物から段階を踏んだほうが良い。
 鎮痛効果の強い物に慣れてしまうと、その先が無いので。
 そして、市販薬で鎮痛効果が真ん中ほどである一方、浸透力があるのがフェルビナク製剤。
 もっと鎮痛効果があって有名なインドメタシン製剤との治験データによると、効き始めの早さと継続時間の長さからすると、インドメタシンよりも有用なケースが多いそう。
 ただし、浸透力があるということは血液中に薬剤が混入する割合が高いとも考えられ、安全上過度な心配は無いものの、妊娠中や授乳中の女性は避けたほうが良いという見解もある。
 その点からすると、浸透力で劣るインドメタシンは、そういうケースでこそ有用ということになる。
 そして鎮痛効果が強く浸透力も高いのがジクロフェナクナトリウムで、打撲やギックリ腰といった急性症状には短期決戦で臨むのが良い。
 冷感や温感は、現在では初期症状にはあまり関係無く、薬剤の種類のほうが大事。
 ただ、お風呂に入ったりすると症状が軽減するのであれば、温感を選ぶ意味がある。
 あと、「肌が弱いから」という理由で、鎮痛効果の弱い物を選ぼうとするお客様は多いが、実のところ肌の敏感さと薬剤の強さは必ずしも関係しない。
 アレルギーがそうであるように、相性のほうが重要なため、主成分ではなく添加物に反応している事もあるので、成分表示は残しておいてもらいたいところ。
 また、現在のところ湿布を貼ることによる皮膚炎は、成分によるアレルギー性皮膚炎よりも、「貼る前に皮膚についていた物質」を「湿布剤で患部に封入」したことによって起こる刺激性接触皮膚炎の方が多いとされている。
 要するに、一度湿布を貼った後に入浴などをして貼り替えるのは多くの人がやるとしても、最初に貼るときに先に患部を洗うのを怠ると、かぶれやすいということ。
 今回の患者は奥さんで変形性関節炎と診断され、以前に病院で『モーラステープ』を処方されたそうだが、効いた感じがせず、その後は病院に行っていないという。
 ううん、『モーラステープ』はケトプロフェン製剤で、ロキソプロフェン製剤の『ロキソニン』と同じくらい強いから、それが効かなかったとなると、先に挙げた製剤ではどれも効き目が弱いかも……。
 ただ、これまた薬が効くかどうかは相性なので、実は鎮痛効果の強さと浸透力だけでは確定できないのだ。
 今までの話は、なんだったのかと自分を小一時間問い詰めたいσ(^◇^;)。
 ご本人が、これまで使ってきた中では『トクホン』の方が効く気がすると選ばれて購入を決めた。
 でも、処方された薬が効かなかった場合には、担当医に伝えるのも大事なことをお話しした。
 病気を治すには医師とのコミュニケーションは大事だし、同じ病院で使用した薬の効果を伝えれば、それは記録に残る。
 記録というのは積み重ねていかないと意味が無いので、報告はしたほうが自分のためにもなるのだ。
 一発でバシッと治してもらいたいという気持ちは分かるけれど、実のところ薬が効く確率は30~60%とされている。
 つまり最低値では3人に1人にしか効かないし、最高値でも3人に2人が効けば良い方。
 ということは、薬を使うというのある意味、博打のようなもの。
 じゃあ、初めから薬なんか使わないという選択もある訳だけれど、例えば薬の場合の副作用が起きる確率は、添付文書に「まれに」と書いてあれば0.1%以下、「ときに」と書いてあれば……0.1~5%未満だから1,000人に1人以下で、そこからすれば勝率が30%に賭けるのは悪くない選択のはずである。
 そして、成分を確かめて乗り換えるのは、その勝率を上げることであり、記録を取っておけばさらに勝率は上がる。
 もし担当医の態度や性格的な相性に不満があるのであれば、医師なんて腐るほどいるんである。(大失言)
 1回で諦めずに、他の病院を頼ってみて勝率を上げてもらいたいと思う。

 お客様から、『パブロンSゴールドW』と『パブロンSα』の違いを尋ねられたので、前者は痰の絡む咳に向いていて、後者はコンコンと繰り返す咳に適応することを説明した。
 すると、主訴は鼻水と喉の痛みということで、『パブロン』シリーズよりも『ルルアタックNX』を紹介したが、家族で同じ薬を使いたいらしく『パブロンSゴールドW』を購入された。
 う~ん、お客様本人は自分の選択だからそれで良いとしても、家族には各自で薬を選んでもらいたいところ(^_^;)
 家の薬を、家族の誰かに任せっきりにしている人は多そうだ……。

 お客様が『葛根湯』を購入されるさいに、喉の痛む風邪や咳、発熱をしてしまってからでは適応しないことを伝えると、喉の痛みにいつも使っているというので『桔梗湯』を紹介した。
 まぁ、『葛根湯』も熱を散じるので喉の痛みに効かなくはないけど、先の話で言えば、上半身を温める『葛根湯』よりも、『桔梗湯』で冷やした方がバシッと決まる確率が上がる。
 あと、喉の痛みは花粉症や胃炎などでも起きることを伝えると興味を示されたので、『葛根湯』は風邪の予感がする時に早め早めに服用して予防的に仕えることを説明すると、『葛根湯』『桔梗湯』をお買い上げいただけた。
 なお、喉の痛む風邪の初期には『銀翹散』が適応するけど、鼻水が出ているような体が冷えている時には使えないから、体を温めつつ喉を冷やしたい場合には、『葛根湯』『桔梗湯』の併用がお勧め(*´∀`*)

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