子供の薬を親が買いに来てはいけない理由

 高校生の息子さんから頼まれたとのことで、『イボコロリ』を買いにお客様が来店。
 以前に、家にあった『イボコロリ』の液剤を使ったそうなのだが、イボは大きいらしく、しかし痛みについては分からないそう。
 どうも液剤を塗るだけで絆創膏などは貼っていなかったみたいなので、貼るタイプの『イボコロリ』を勧めた。
 『イボコロリ』がやっているのは、表皮をわざと腐られて下層からの皮膚の再生を促すのが目的だから、液剤を塗っただけで患部を覆わなければ意味が無い。
 ちゃんと添付文書を、読んでいないのだろう。
 イボがどんな物なのか、どうやって治療するのかの話を医師から教えてもらうためにも受診勧奨したうえで、もし本人が貼るタイプを気に入らなければ、未開封品は返品に応じますと伝えた。
 それに、若いうちに病院に行く練習は機会があれば、何度でもしておいた方が良い。
 その練習が不足していると、医師に「お任せ」になってしまい、使っている薬の内容も把握せず、国の負担する医療費は増えるは、患者さん自身の疾患も改善しないはなんて悪循環に陥ってしまう。
 病気の治療のチームリーダーは患者さんであって、医療従事者はリーダーに情報を提供し、作戦を立て、実行をサポートするだけ。
 こう言ってはなんだけど、複数の治療方針から予算や好みなんかを勘案し、決断するのは患者さん自身がしなければならないのだ。
 例えば、弁護士が法律や資料を駆使して経験から弁護方針を立てたとして、依頼者の判断を仰がずに「これが最善だから」と勝手なことをしたら困るでしょ。
 いや、中には本当に「お任せ」にしちゃう依頼者もいるかもしれないけど。
 ともかく国も本気で医療費の財政支出を抑えるつもりならば、子供の頃から保健体育なんかで病気治療におけるリーダーシップは患者にあることを教えると良いと思うんだけどねぇ。
「お客様は神様です」以上に、勘違いしちゃう輩が出るかな?
 あれだって、最近じゃ「神様にも、貧乏神や疫病神がいます」という返しがあるけど。

 中学生の娘さんから、『ビフナイト』を頼まれたというお客様が来店。
 しかし、以前に『クレアラシル』を使って効かなかったからというお話があったので、成分は殆ど変わらないことを伝えた。
 すると、『ペアアクネクリームW』も使ったことがあるという。
 ううん、次々と乗り換えるのなら成分表示は確かめてもらいたいところ。
 商品名が違うだけで同じ処方内容というのは良くあることだし、処方によって治療の狙いが違う。
 おでこに、頂点の赤いニキビができているというから、『ビフナイト』と『クレアラシル』の方が適していて、『ペアアクネクリームW』は選択肢から外れるはず。
 治りにくい要因として、患部を触ってしまうことや、洗いすぎということも考えられるから、実のところ本人と話してみないと、効かなかった原因の特定は難しい。
 特に患部を触らないというのは重要で、意識的に「腕を肩から上に上げない」練習が必要なくらい。
 そうしないと、つい患部を触ってしまうからだ。
 そして、患部を洗いすぎると体を守る皮脂や常在菌が少なくなり、ますますアクネ菌が活躍しやすくなってしまう。
 一応今回は、頼まれ物でもあるので『ビフナイト』を販売し、内服薬として『清上防風湯』を紹介した。
 ニキビの状態からすると、最初に『黄連解毒湯』で炎症を抑えてから『清上防風湯』に乗り換えたほうが良いかもしれないが。
 いずれにせよ、本人に来てもらわないと分からないことだらけ。
 『クレアラシル』が効かなかったというのも、具体的にどれくらいの期間使っていたのか。
 お客様が帰ってから、ニキビの治療は焦ってはいけないことを伝え忘れたことに気がついた。
 いや、気持ちは分かるんだけどね、焦る気持ちは。
 思春期だもの、人に見られるのを意識しちゃうよね。
 でも、思春期のニキビは成長途中でのバグみたいなもの。
 全身の細胞が同じ速度で成長してるわけじゃないから、皮脂が多く出たり細胞分裂が一部で過剰になり、それがニキビとして現れる。
 つまり、体の仕組みが変わっていく過程で、自然に修正されていくもの。
 そこで焦って患部だけに直接的なこと(触りすぎとか、洗いすぎとか)をしてしまうと、自然に修正されていくのを邪魔することにもなってしまう。
 酷なようだけど、20代くらいにまで治すつもりの長いスパンでの治療が必要。
 それを本人はもちろんだけど、親も理解してサポートしてあげてくださいな。

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