薬は怖くないけど恐れてほしいジレンマ

 ご主人の腹部に汗疹ができたというお客様から、『リンデロンV』と同じ薬をと希望されたのだが、病院で処方されるような薬は市販されてないことも多いことを説明したうえで、『フルコートf』を案内した。
 ただ、詳しく訊いてみたら『リンデロンV』は、お客様自身が以前に病院から処方された物で、それがよく効いたため、ご主人が気に入ったというお話なのだが、お客様もご主人もステロイド剤とは知らない模様。
 過度にステロイド剤を怖がるのも困るけど、家族だからと安易に薬をあげたり使ったりというのは、むしろ怖い(・_・;)
 それに、ご主人は患部を掻きむしっているというから、もし傷口があるようだと細菌感染に備えて抗生物質の入っている『クロマイP軟膏』の方が良いとも考えられる。
 そして、痒みが弱まるのにつれて、『テオドランホワイトL』や『ユースキンあせもクリーム』、あるいは『タクトローション』など弱い薬に乗り換えるよう勧めた。
 お客様自身は『テオドランホワイトL』で肌が赤くなってしまったことがあるそうだのだが、その時に痒みもあったかは覚えていないという。
 いずれにしても、自分が駄目だったから他の人に使えないとは限らないし、自分が良かったからといって他の人にも使って良いということもないので、気をつけてもらいたい。
 また、普段のケアとして『桃の葉ローション』を紹介した。
 今日のところは、ご主人の患部の状況と本人の意向を確かめてみるということで、お帰りなった。
 やはり、患者さん本人に店頭に来ていただくのが一番である。
 ことに、今回のように夫婦揃って薬を使うことに警戒感が足りないと思えるケースでは。

 お客様が『トフメルA』を求めて来店したが、置いていないことを伝えつつ成分的には『シッカロール』に、ごく弱い局所麻酔として作用するdl-カンフルを加えた物であることを伝えると、子供の頃から傷薬に使っていたということで、シッカロールと同じような物だと分かり驚かれた。
 今は、軽い傷は湿潤療法が主流だから、『トフメルA』のように酸化亜鉛で患部を乾燥させるというのは珍しいんじゃなかろうか。
 また、『マキロンS』を消毒だけと思われているようだったので、わずかながら皮膚の再生を促すアラントインも入っていることを説明した。
 ちなみに、『マキロンS』と競合する『デシンA』には、傷口の疼きを抑えるリドカインなどが入っている。
 同じ消毒薬のように思えて、実は設計思想が違うんである。
 さらに蛇足ながら、医薬部外品の『キズニコ』はベンザルコニウム塩化物が主成分の正真正銘、消毒だけが目的。
 お客様には、傷が浅く怪我をした直後であれば湿潤療法もあることを説明し、水道水で傷口を良く洗うよう話したら、子供の怪我に水道水を使って洗うのは、山の清水を使うのと違い塩素が心配だと言われた。
 ううん、それは全く逆である。
 塩素は消毒に有効だけど、山の清水は字面に反して汚染されている可能性があるからだ。
 工業的な汚染ではなく、自然界には病原菌が自然の一部として存在している。
 そうお話すると、そもそも『トフメルA』を買おうと思ったのは、子供が怪我したときのための置き薬にするつもりだったそうだが、『マキロンS』と『キズパワーパッド』を購入された。

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