夫婦のお客様からニキビの薬を注文されたのだけれど、患者は中学生の子供で一緒に来ているというので本人を呼んでもらったところ、ニキビではなく面疔のように思われた。
ニキビと面疔は見た目は似ているが、原因となる菌も違えば発症のプロセスも異なるため、おのずと適応する薬も変わる。
ニキビを起こす代表的な菌はアクネ菌であり、これは体表部に常在し食中毒を防いでいたりするため、あまり殺菌作用の強い薬を使うのは好ましくなく、皮膚の再生を促すことの方が重要。
一方、面疔の原因は黄色ブドウ球菌で、いわゆる化膿を引き起こし対応を誤ると皮膚の深部にまで影響を及ぼして他の病気へと発展してしまう可能性があるのだ。
医師でなければ病気の診断をすることはできないものの、だからこそ患者さんや家族も初めから病名を決めて薬を買うようなことは避けてもらいたい。
もちろん私たちも診断はできないが、起きている症状への対処法を検討したうえで薬を選択するから、いくらかは症状を緩和する可能性を高めることができる。
……まぁ、大きく外すこともあるんですが(^_^;)
今回の患者さん自身は、すでに痛みは無く治りかけの模様。
しかも、面疔に適応する『クロマイP軟膏』とニキビに使う『クレアラシル』を提示したところ、そもそも後者は家にある気がするというので前者の購入を決められた。
やっぱり、子供の薬を本人抜きで選んじゃ駄目なんである。
また皮膚薬は症状によって塗り替えていくことをお話すると、痕を消したいというので『アットノンクリーム』も紹介し、一緒にお買い上げ頂いた。
そしてクリーム剤は患部に回すように塗るのではなく、皮膚の流れに沿うように塗り込むと浸透しやすいことを伝えた。
それから、どうやら面疔はよく起きるようなので内服薬として『排膿散及湯』を紹介し、入浴時間を長くしたり積極的に温かい物を飲んだり、下半身を厚着するなどして体温を上げる工夫をするように勧めた。
内服薬でニキビに使うとすれば、赤ら顔なら『黄連解毒湯』を、患部だけが赤いのであれば『清上防風湯』、そして血行不良で手足が冷えるのにのぼせ感があるようなら男女を問わず『桂枝茯苓丸』や『桂枝茯苓丸加よく苡仁』が候補になる。
あと、鼻づまりのある人のニキビでは『荊芥連翹湯』が両方の面倒を見てくれる。
いつも「先生、先生」と呼びかけてくる常連のお客様から、以前に使っていた薬が終売になってしまうようだというお話があった。
成分表示を取っておいてもらえば、同じ処方内容の薬がないかを調べてみますと伝えた。
よく薬を銘柄指定で買いに来る人がいるけど、それだと終売になった時に困るし、出先で探すのも難しいから、成分表示を取っておくのは大事である。