お客様から睡眠補助剤を求められヒアリングしたところ、今まで薬を使ったことは無く、寝るまでに2時間ほどかかり眠りも浅いという。
単味剤の『ドリエル』と複合薬の『ウット』を紹介したうえで、肝臓と胃が機能的に弱っている可能性をお話した。
漢方的には、肝臓が不調だと寝付くのに時間がかかり、胃が不具合を起こすと眠りが浅くなって、腎機能が低下すると中途覚醒しやすくなる。
お年寄りが夜中に目を覚ましがちになったり朝が早くなったりするというのは、つまりは腎機能の低下なのだ。
寝る2時間前に入浴をして体温が下がる過程で眠くなる生体反応を利用する方法もお話してみたけれど、以前に試してみて効果は無かったという。
今回は『ドリエル』を試していただくことになり、効き方次第で乗り換えを検討するためにも成分表示を取っておいて下さいとお願いした。
最初から睡眠補助剤をというリクエストだったから選択肢が狭くなってしまったけれど、指名が無ければ寝付きが悪いのには『柴胡加竜骨牡蛎湯』を、眠りが浅いのには『加味帰脾湯』を紹介したかったところ。
あるいは、やはり肝機能の亢進を考えて『抑肝散陳皮』や、疲労しすぎてて眠りが浅くなるタイプの『酸棗仁湯』というのも考えられる。
でもやはり、患者さんのほうが相談する気になっていないと、これらを時間をかけて案内するのは難しい。
それだけに、症状の相談ではなく初めから薬を指定されるのは惜しいことである。
やや高齢のお客様から、『グンナイマグ』の睡眠への効果について訊かれ、あくまで健康食品のため限定的に考えるようにとお話した。
主成分のグリシンは神経伝達物質とされていて、学術情報なんかも見てみたけど、睡眠に関しては「示唆」とか「可能性」とかばかりなんだよねぇ。
データを見る限り、「甘い物を食べるとリラックスする」程度の話にしか思えない。
するとお客様からは、マグネシウムが入っていることから便秘にはどうかと尋ねられ、同じく過度の期待はできないとお話したうえで、便通は三日に一度くらいというため、腹部に苦満感が無ければ週に2回の便通でも正常と考えられることを伝えた。
それに、高齢者がミネラル分を過剰摂取すると腎臓の負担になるから、あまり勧めにくい。
そして睡眠については普段は問題は無く、登山の時に山小屋で眠る時に使いたいとのことで、現代薬を使うことを心配されたため『加味帰脾湯』を紹介してみたのだが、悩んだ末に『グンナイマグ』を購入された。
う~ん、それこそ一時的な睡眠補助なら、現代薬のほうがコントロールしやすいんじゃなかろうか。
でも気休めとしては、毒にも薬にもならない健康食品のほうが安全に思えるのかもしれない。
他の登山をしているお客様から聞いた『防已黄耆湯』も紹介してみたものの、関心は示されなかった。
水分代謝を整える『防已黄耆湯』は、登山での足のむくみや、標高が高いところでの疲労を軽減するのに役立つと思うのだけれど。