二つ以上の薬を併用する? しない?

 夫婦のお客様が乳幼児を連れて風邪薬を選んでいたため気にかけていたところ、『葛根湯』と『パブロンSゴールドW』をレジに持ってきた。
 『葛根湯』は喉の痛みや咳には適応せず、『パブロンSゴールドW』は咳の激しい風邪には向いているものの喉の痛みを抑えるのは弱いことを伝えると、ご主人の喉が痛み頭痛もするというから、どちらも主訴から外れているように思える。
 そこで喉の痛みにトラネキサム酸、頭痛にイブプロフェンが入っている『ルルアタックEX』を案内してみると、『葛根湯』と一緒に購入された。
 咳が無いことから考えると、解熱鎮痛薬の『イブ』と喉の痛みに『ペラックT』を組み合わせて飲む方が体への負担は少ないはずだが、なかなか二つ以上の薬を併用するという使い方は、市販薬では勧めにくい。
 病院から処方される薬なら、基本は単味剤だから何種類か飲むというのも自然なことなのだけれど。
 SNSなどで、「病院で薬をこんなにもらった」なんてアップしている人がいるけれど、あれは単味剤だからそうなるのであって、市販の薬なら成分が6種類や10種類入っているのは珍しくない。
 当然ながら、単味剤の方が症状に合わせて足したり引いたりしやすくて便利な面があるのだ。
 もっとも、それをするためには専門家に相談する必要がある訳だけれど。
 おっと、話が逸れた。
 念のためお客様に授乳の有無を尋ねると奥さんは使わないとのことだったが、風邪の初期に『葛根湯』は病院でも授乳期に処方されることを伝えた。
 ただ、服用直後に授乳すると、子供が興奮して寝つきが悪くなったりする可能性は考えられることも付け加えた。
 それから『葛根湯』はこれからの季節、出先の冷房が効きすぎている時に寒さをしのぐために使うこともできるので、家に置いておくよりも持ち歩くよう勧めた。

 お客様から声を出しにくいと相談をされ、詳しく訊くと2ヶ月前にポリープの治療をしたものの、まだ声が出にくくなることがあるというので処方された薬があるか確認したところ、抗炎症のアズレン製剤だった。
 『響声破笛丸』を案内して試していただくことになり、ついでながら頭蓋骨を響かせる発声法を教えた。
 本当は学校の先生なんかが子供達に発表させるさいに、「もっと大きな声で」なんていい加減な指導をせずに、ちゃんと発声方法を教えた方が良いと思う。
 ただでさえ緊張して喉が絞まるのに、大きな声を出せと言ったって無理というもの。
 やり方自体は簡単で、下の前歯の裏に舌先を当ててアーチ型に盛り上げ息の通り道を作り、息を前歯の裏側の付け根に当たるように出して、上顎に声を響かせるのだ。
 普段出す声よりもやや低くなり、鼻の下あたりを触った時に骨が振動しているのが分かれば上手く発声できている証拠。
 この発声法ができると喉への負担が少なく、大きな声を出さずとも離れた人に声が届くので、仕事で声を使う人は練習してみて下さいな。

以下の記事も読まれています。


 
登録販売者から一言 壱の巻 登録販売者から一言 肆の巻「おくすり手帳と個人情報の使い方」 市販薬購入前チェックシート