高齢のお客様が来店し、以前にうちのお店で自分で『十全大補湯』を選び購入したとのことだったが、メーカーが同商品を終売してしまったことを伝え、容量の多い物が入荷予定であることをお話した。
すると、『帰脾湯』は無いかと尋ねられ、置いていないため『加味帰脾湯』を案内してみたけれど、特に漢方薬に詳しい訳でもないようだった。
『帰脾湯』は気持ちが落ち込んだりしがちな場合に適応し、『加味帰脾湯』はそれにイライラが加わる場合に向いており、寝てもウツラウツラして寝た気がしない場合の寝つきの悪さにも使える。
主訴は貧血で、不眠は思い当たるようでもあったため『牛車腎気丸』も紹介してみたものの、そちらには関心を示されなかった。
『加味帰脾湯』の購入を決められたが、お会計の段になって降圧剤を服用してると分かり、調べたところその薬が貧血の原因のようにも思われたので担当医に相談してみるよう勧めてみたが「言いにくい」とのことから、近くの漢方薬に詳しい病院を紹介した。
よく「血圧を下げる薬を飲んでる」というお客様に内容を尋ねても覚えておらず、まるで降圧剤が一種類しか無いような無頓着な返事をされるけれど、結果は同じでも利尿作用で水分を少なくする物もあれば、血管を拡張する物もあり、血液をサラサラにする物もあって作用機序が違うから、他の薬との併用を考えるうえで薬の特定は重要。
しかも今回の場合は、副作用の項目に貧血の発現が起こりやすいとあったので、やはりその情報は無視できない。
お客様から貧血の相談を受け症状を確かめると、落ちるようなタイプだそうなので『ファイチ』を案内すると、家にあるとのことだった。
病院には行くつもりだから、一時的に別な薬を使いたいというため、漢方薬を提案すると病院から処方されている物と重なっても大丈夫かと訊かれ、それが『加味逍遥散』だと分かり、飲み合わせは成分によることと、『加味逍遥散』自体が貧血に適応することを説明すると、急に苛立って「そんな曖昧なことなら病院に行くからいいです!」と怒られ、他の雑貨の買い物をして帰られた。
ううん、『人参養栄湯』と『加味帰脾湯』を紹介しようと思っていたんだけど、タイミングを逃してしまった。
イライラのし具合からすると、やはり『加味逍遥散』が適するように思えるのだけれど、それが効いていないと感じていたのだとすれば、「貧血に適応する」という説明がマズかったか。
先に、『人参養栄湯』と『加味帰脾湯』の方を紹介するべきだったかもしれない。
質問の種類、提案の順番、それらの選択が難しい……(´・ω・`)