胃薬の相談はお断りします……と言いたいくらい難しいというお話

 若いカップルのお客様が来店し燻煙剤を購入されるさいに、ゴキブリの卵には効果が無いため2週間後にもう1回焚くよう勧めたところ、小さいのがワラワラ出てきているとのこと。
 そのため『ゴキジェット』の場所を尋ねられたが、燻煙剤を使うのだから後で『ハッカ油』を使ってみてはと提案した。
 『ハッカ油』ならば、台所など食品のある場所にも使えるので。
 燻煙剤だけを買って一旦は帰られたが、しばらくするとまたいらして『ハッカ』油も購入していただいた。

 ご主人に『第一三共胃腸薬』を頼まれたとのことで、お客様から適応するか尋ねられたけれど、同じ胃薬でも普段は食欲がある人と食が細い人とでは条件付けが違い、また胃の機能低下による症状と腸での消化が追いついていない場合とでは対応が変わることを説明した。
 実のところ『第一三共胃腸薬』には胃酸を中和する制酸剤と消化を助ける酵素という、相反する作用の成分が一緒に入っていて、わりとカオス(混沌)な処方なんである。
 別な製薬メーカーの研究員さんは、そんな胃薬の現状について「ユーザーのニーズに応えた結果」だと言っていた。
 今回は本人の希望があってのことなので、そのままお買い上げいただいたけれど、お客様には胃薬の頼まれ物は風邪薬よりも難しいことを伝えた。
 例えば風邪薬の場合は、「咳止め」を中心に「解熱鎮痛剤」と「鼻炎薬」という三つの薬の組み合わせが基本で、そこに去痰剤や薬効を高めるためにカフェインなどが加えられている。
 要するに風邪の症状の種類は限定的で、薬の処方内容も単純だから、適当に選んでも大きく外すことは少ない。
 ところが、胃薬となると「制酸剤」「消化剤」「健胃剤」「H 2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)」「M1ブロッカー(選択的ムスカリン受容体拮抗薬)」「粘膜修復剤」「運動調整薬」「鎮痛鎮痙攣剤」など、8種類以上の薬の組み合わせがあり、ここにさらに腸も絡んでくると「整腸剤」「止瀉剤」「便秘薬」「痔疾剤」も加わることになるため、取捨選択が格段に難しくなるんである。
 そして、風邪薬と他の薬との併用を気にする人はいても、胃薬との併用はあまり気にしない人が多いのも問題。
 実は、パッケージの注意書きや添付文書をちゃんと読んでもらうと分かるが、他の薬との組み合わせによる心臓や腎臓などへの悪影響は風邪薬よりもあるのだ。
 胃腸だって内臓なのだから、その働きに薬効があるということは他の内蔵にも影響するのが当然というもの。
 また症状の表現にしても風邪の場合ならば、咳はコンコンとゲホゲホとか、喉の痛みはヒリヒリあるいはズキズキというように共通の言葉があるのに対して、胃腸の不具合となると胃痛だけでもキリキリするとかシクシクとか人によって表現の仕方がかなり違い、そこへ「上がってくる感じがする」だの「重い感じ」だの感覚的な表現が多いため、本人でないと、いや本人を相手にしていてですらヒアリングが難しい。
 そのため、登録販売者の間(私の狭い交友範囲)では「客に訊かれるまでは声をかけないでおこう」と囁かれるくらい、胃薬は鬼門なんである。
 だから、尋ねないで下さい……もとい、必ず相談して下さい(;´∀`)
 今回のお客様のご主人は、夜遅くにシャワーだけは浴びるとのことだったが、寝る時間を削ってでも入浴をさせるようにお話しした。
 内臓の不具合の改善には、血流が大きく関わるので。
 それに、睡眠の質を上げなければ時間だけ長く寝ても疲労回復の役には立たない。

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