お客様から、9歳の子供が打撲したらしいとのことで外用消炎剤を求められ、年齢制限によりサリチル酸系しか選択肢が無いことを説明した。
要は、『サロンパス』や『トクホン』である。
鎮痛剤としては弱いサリチル酸は評価の難しい成分で、鎮痛消炎効果があるとされている一方、有効性に疑問符も付いていて、痒いところを叩くと痒みが気にならなくなるように、皮膚を刺激することで痛みを感じにくくするのではないかという説もある。
面白いことに、外用としての効果は弱いのに、体内に吸収されて代謝されると非ステロイド性抗炎症薬としての効果を現すそうな。
これだけ世の中に普及してるのに、なんとも不思議。
お客様からは冷やした方が良いか尋ねられたため、初日は氷水で冷やすよう勧めた。
それも、患部の感覚が無くなるくらいである。
そして、湿布は特に冷やすも温めるも関係無いとお話して、『サロンパス』をお買い上げ頂いた。
冷感タイプも温感タイプも、あくまで「感じさせる」だけなの、冷やすなら氷水で、温めるならカイロを使う方が効果的。
お客様には、一週間しても痛みがひかない場合は骨にヒピが入っていたり剥離骨折などの可能性もあるので、経過観察をして場合によっては受診するようにと伝えた。
外用消炎剤に年齢制限があることを知らない人は多くて、その事を伝えるとインドメタシンなど使っていたと心配されるケースも有る。
直ちに事故になる訳では無いけれど、そういう油断の積み重ねが最悪の事態を招きかねないので、確認を怠らないようにしてほしいし、私たちも気をつけたいところ。
やや高齢のお客様が『液体ムヒS』を購入されるさいに、比較的強めの薬であることを説明したところ、長期連用しているうえ広範囲に塗っているとのことだった。
主訴は虫刺されではなく肌の痒みで、病院から処方された血圧の薬を飲んでいるというものの何の薬かは覚えておらず、塗り薬も内服薬との影響があるし、その肌の痒みが内服薬の副作用という可能性も考えられるため、科目が違っても担当医に相談してみるよう勧めた。
やや高齢のお客様から『ルルアタックIBエース』を求められたが、置いていないことを伝えたうえで、主訴は鼻炎というため鼻炎薬を提案したところ、「どれでもいい」「効くのを」とだけ言われて、剤形の好みや眠気が起きても大丈夫かといった質問には一切答えてもらえず、『パブロン鼻炎速用錠』を購入された。
お客様が『竜胆瀉肝湯』をレジに持ってきたけれど、排尿時に灼熱感は無く、いつもは『ボーコレン』(五淋散)を使っているうえ、病院から抗生剤が三日分処方されているというため、『猪苓湯』か『ボーコレン』で良いのではとお話したところ、『ボーコレン』に変更となった。
抗菌には体内の温度を上げることが大事なので、温かい物を積極的に飲んで長めの入浴とか下半身の厚着をするよう勧めた。
それにしても、患者さんが市販薬を変更するさいに何を参考に、あるいは何を根拠に選定しているのか分からないのが地味に戸惑う。
しかも、今回のように病院から処方されている薬がありながら、担当医にも調剤した薬局の薬剤師に問い合わせることもしないで市販薬を購入しようとする人は少なくない。
まぁ、『ボーコレン』なんかは、いかにも膀胱炎に使う薬っぽい名前が付いているから選びたくなる気持ちは分かるけど、他に『猪苓湯』や『竜胆瀉肝湯』、または『ユリナール』(清心蓮子飲)など種類があることに疑問は持たないんだろうか。
一応、参考のために使い分けを記しておくけれど、やはり店頭では登録販売者か薬剤師にひと声かけて、自分に合っていそうか検討して下さいな。
まず、基本になるのは『猪苓湯』で、病院でもファーストチョイスとして処方されることが多い。
そして、先にも書いたように排尿時に灼熱感があったり体力が充実していたりと、比較的炎症が強い場合に『竜胆瀉肝湯』を用いる。
反対に、体力の低下や疲労感がある場合には『五淋散』が適応する。
ここからさらに、高齢者や精神的な疲労が原因と考えられる人は『清心蓮子飲』(せいしんれんしいん)も候補となる。
あと、漢方薬ではないけれど生薬の種類が多い『腎仙散』は、鑑別に迷う場合に広く浅く使えます。