体調が悪くなったなら、それは医療者に相談する練習の機会です

 お客様から舌炎の相談を受け、奥さんがいつのまにか舌を噛んだらしいというので、最初に強めの薬で対処した方が良いことを説明して『オルテクサー』をお買い上げいただいた。
 もし痛みが強いようであれば、まさに痛む場所である末梢神経に効果的な『バファリンA』も使えるとお話したところ、一緒に購入された。
 今後の養生としては、冷たい飲み物や夏野菜に気をつけて、入浴するよう勧めた。
 体の方は傷ついた患部を治すために、材料を運ぶ血流を良くしたり、細胞を活性化させたりしようと炎症させているので、地面の上に実がなる夏野菜を始めとして、冷たい飲み物を摂ると、体は「もっと炎症しなきゃ」と変に頑張ってしまうので、体内を温かく保つ工夫が必要。
 そうすれば体の方も、「あっ、そんなに炎症させなくても良いんだ」と気づいてくれる。

 お客様が『バファリンルJ』をレジに持ってきたけれど、ヒアリングしてみると17歳の子供の生理痛だというので、同じ成分の『タイレノール』ならば1回1錠で済むし、価格の面でも安上がりなことをお話したところ、変更となった。
 年齢制限を確認しないで大人用の薬を適応以下の年齢の子供に与えてしまうという例はありがちだけど、もう大人用を服用できる年齢なのに子供用の薬を買おうとするというのは珍しいパターン。
 また生理痛ということなので、専用薬の『エルペインコーワ』を紹介した。
 鎮痛剤に、わざと内臓の働きを悪くする成分を配合することで、活発に働く子宮を大人しくさせて生理痛を軽減する。
 あと、余計なことではあるけれど、本人に薬を買う練習をさせることを勧めた。
 こうして毎日お客様と対面して薬の販売をしたり薬事相談に応じたりしていると、大人でも案外と自身の症状を他人に伝えるというのは難しく、反復練習の必要性を感じる。
 もちろん私の方も、的確な情報を引き出すための工夫をしているつもりだけれど、それだけでは一方通行になってしまう。
 深刻な事例では、熱中症になった子供が体調の不良を大人に伝えられず亡くなったり、一人暮らしの大学生が救急車を呼ぼうと119番をするも、通信指令室の担当者からタクシーで行けるか尋ねられて救急車の出動を断ってしまい亡くなってしまったケースもある。
 せっかく体調が悪くなったのなら、それは練習の機会だと思って利用しなければ。
 それから、これも余計なお世話ながら、誕生日なら誕生日というように決めて、年に一度は婦人科の検診を受けさせることも勧めた。
 生理痛を鎮痛剤で軽減しているうちに、「いつものこと」だと慣れてしまうと、大きな病気を見逃してしまう可能性がある。
 うちの奥さんは子宮筋腫になって、妊娠が発覚した時点で相当に大きかったため、医師からは出産を諦めるよう言われたうえ子宮の切除が必要と告げられ、最終的に子宮ごと胎児を取り出すという最初で最後の出産となってしまった。
 奥さんは若い頃から、「あたし、生理重いから」と言っていて聞き流してしまっていたのだが、診察した医師は「この大きさなら、若い頃からあったはず」と言っていた。
 生理痛を薬を使わずに我慢するなんてのは生活の質を下げるから良くないが、漫然と使っているのも良くない。
 だから、医療者とのコミュニケーションの取り方の練習は、若いうちから始める必要があるのだ。

 幼い子供を連れた成人の親子とみられる女性のお客様が来店し、 高齢の親の方が『パブロンSα』を、幼い子供の親と思われる方が『パブロンSゴールドW』を手にして話し合っていたので声をかけてみたところ、後者のご主人が咳をしているというお話だった。
 痰が引っかかるようなので、『ブロン錠エース』を案内すると、そちらを購入された。
 同じ銘柄の『ブロン錠』が咳をすると水様性の痰が出るのに適しているのに対して、『ブロン錠エース』は痰の滑りを良くする成分が入っている。
 お客様には、胃炎を起こしている可能性もあることをお話すると意外な顔をされたので、咳と胃の関係を説明した。
 胃は肺に被さるようになっているから、胃炎を起こしていると肺が乾燥して咳になるのだ。
 上半身を潤して咳を止める漢方薬の『麦門冬湯』は、それこそ胃薬に近い生薬となっている。
 だから、痰が引っかかるような咳やカラ咳がある場合には、消化に良い食事に切り替えるのが養生法となる。

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