サプリメントや健康食品が、薬より安心なんてことはありません

 高齢のお客様から疲れ目に目薬を希望され、痒みは無く、パソコンを使っているのが原因だと思うとのことだったため、眼球に分布している副交感神経の抹消部分を活性化させることによってピントの調整機能を改善する成分の入った『ロートデジアイ』を使っていただくことになった。
 また、作業時には画面を見下ろせる角度に調整するよう勧めた。
 スマホでもよくやりがちなのは、画面を見上げるような見方で、それをすると目が大きく見開かれて乾きやすくなりドライアイを招く。
 はたから見ると感じの悪い人に見えてしまうかもしれないけれど、顔は前をまっすぐ向け、他人を蔑むような見下ろせば瞼が少し閉じ気味になり、目の乾燥を防ぐことができる。

 お客様から、ロートで出している目ののサプリメントをと求められ、『ロートV5』案内すると価格の高さに驚いていたので、薬の方が効果を期待できることを伝えると血圧の薬を服用していねから薬は心配とのことだった。
 そのわりには、その服用している血圧の薬を憶えておらず、お薬手帳も持ってきていないというのだから困ってしまう。
 血圧を下げる薬にも種類があり、血管を拡張するタイプと血液をサラサラにするタイプとでは体の中でやってることが違うから、それが分からないと他の薬との影響の仕方も分からない。
 そして、薬ではないサプリメントや健康食品なら安心ということにもならない。
 例えば、血管を拡張するカルシウム拮抗剤の『アダラート』を服用してグレープフルーツを食べると、効果を効きを「良くしすぎてしまう」から、患者は気をつけるようにと指導される。
 また、血液をサラサラにする薬『ワーファリン』は、納豆を食べると腸内でビタミンKが合成されることにより効果を減じてしまうことは、よく知られている。
 つまり、食べ物だって薬に影響を及ぼすので、サプリメントや健康食品だって油断は禁物。
 『ロートV5』に入っているのは、ルテインとゼアキサンチンだから、どちらの血圧の薬でも影響は無いと思われるが、そうなると今度は効果のほうが疑問だ。
 この2つの成分は、カルテノイドと呼ばれる黄色色素の一種で、いわゆる切ると中まで色の濃い緑黄色野菜に含まれており、目では網膜の中心部の黄斑と呼ばれる部分に存在している。
 この黄斑は、いわゆるパソコンやスマホの画面から発せられるブルーライトとか紫外線といった有害な光を吸収し、目を守る役割を担っている。
 理屈としては、黄色色素のある物を食べれば黄斑になってくれるという事なのだけれど、小魚を丸ごと食べたからといって魚の脳が自分の脳細胞になる訳ではないように、小腸から吸収された物は分解され代謝され、他の栄養素との組み合わさることで再構成されて、ようやく体の役に立つ。
 ルテインもゼアキサンチンも、人間の体内では作ることができないから外から取り込むしかないとはいえ、よほど偏った食生活をしていなければ緑黄色野菜をまったく摂らない事態というのも考えにくい。
 擁護するとすれば、加齢によって黄斑が変形して視力が落ちる「加齢黄斑変性」という病気にルテインを用いると、「進行を遅らせる」という医学的データが出てきていることくらい。
 でもやっぱり、予防になるとか治療できるというレベルの話ではない。
 費用対効果と、味気の無いカプセル状の物を飲むことを考えたら、食事で愉しみながら摂取する方を私は推す。
 そのうえでお客様には、歳とともに衰えてくる視力の低下を軽減するのに用いる漢方薬として『牛車腎気丸』を案内し、近所の漢方薬に詳しい病院を紹介した。
 そうそう、例によってブルーベリーが目に良いかという質問もされたので、それは嘘が広まった情報であることをお話した。

 高齢の常連のお客様が『ポケムヒ』をレジに持ってきたので、携帯用の虫刺されの薬としては弱いことを伝えて、痒み止めに弱い局所麻酔を足して効果を高めている『プチウナ』を案内すると変更になった。
「いつも教えてくれてありがとう」と言ってくれるのだけれど、なかなか最初から相談とはならないのがジレンマでもある。

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