子供を連れたお客様が酔い止め薬の棚で迷ってるようだったので声をかけ、眠くなりやすい物となりにくい物があることを説明すると、飛行機に乗り海外に行って、現地ではバスを利用するということで両方を選択された。
『正露丸』も求められ、糖衣錠との比較と、大幸薬品と他社製品では処方が異なることを説明し、昔ながらの赤玉と同じ処方の『エクトールDX』を紹介した。
とにかく『正露丸』は古くからあるメジャーな薬なのに、いや古くからあるせいなのか、誤解されていることが多い。
まず、下痢止めとして使われることの多い『正露丸』の主成分は、消毒作用と腸の機能を正常にする木クレオソート。
ロシアとの戦争に持っていったから、当時は『征露丸』の字が当てられており、食中毒を防ぐ狙いもあった。
特に食中りの場合には、体から早く毒素を排出したほうが良いから、下痢をピタリと止めてしまうのは好ましくない。
でも『正露丸』を下痢止めを目的に使う人が多いから、ロートエキスという内臓の働きをわざと悪くして腸の異常な動きを止める成分を加えたのが、本家の大幸薬品とは別なメーカー。
ロートエキスは毒草のハシリドコロから抽出され、ハシリドコロは食べると苦しみのあまり走り回るからその名が付いたとされる。
ちなみに、胃酸の出過ぎを抑える胃薬に入ってることもある。
つまり、同じ『正露丸』の名前が付いていても各社で処方が違うから点には留意ししてもらいたい。
そして今ひとつ、糖衣錠は単に表面を甘くコーティングして、あの独特な匂いを抑えているという物ではない。
腸の炎症を抑える成分と、痙攣を緩和する成分を抜いてあるのだ。
そのため、シクシクとした痛みなどへの効果が弱いと考えられる。
どうして抜いてあるのかの理由は分からないが、腸には味覚と嗅覚があり、コーティングしてしまうと薬が匂わず、薬効が匂いで発揮される物は無意味と判断した上で、主成分の木クレオソートを残したからなのかもしれない。
ただ、あの独特な匂いも薬効のうちだから、糖衣錠を使うのであれば、そもそも『正露丸』を選ぶ意味は無いとも思える。
お客様には、日本から持っていく薬は渡航先で入手しやすい物を中心に選んだ方が良いことをお話し、塗り薬として抗生剤とステロイド剤が家にあれば持っていくよう勧めた。
日本ではなんてことのない擦り傷も化膿してしまう可能性があり、虫刺されだけでなく植物に触れてかぶれるケースも考えられるからだ。
抗生剤とステロイド剤を組み合わせた、『クロマイP軟膏』なんかが一つで済ませられて旅行には便利である。
お客様には、風邪と胃腸炎の両方に使えて海外では入手しにくい『柴胡桂枝湯』を紹介すると、酔い止めと同時に購入された。
それから、乗り物酔い対策の話でコカ・コーラを飲む方法を伝えるとウケた。
ゼロシュガーは駄目で、糖分によって脳を楽しい気分にさせ、炭酸の刺激が吐き気を抑える合わせ技が乗り物酔いを軽減してくれるのだ。
またも子供を連れたお客様から酔い止薬を求められヒアリングすると、修学旅行に持っていくというため、眠くなりにくいものとして『センパアQTキッズ』を案内して、お買い上げいただいた。
ところで、学校からは前日から飲んでおくようにという通知があったそう。
えっ?
どういうこと?
後で調べてみたら、他の学校でもそう通知されていて、前日に寝つきを良くする狙いがあるらしく、さらに朝にも飲むよう書いてあるという。
それって、薬の目的外使用に当たるんじゃないの?
酔い止薬と言っても、成分違いの薬があって、成分によっては起き抜けの頭がボウッとしてしまう。
それに、大抵の酔い止薬には内臓機能を低下させる成分が入っているから、胃腸の調子が悪くなり便秘を起こす可能性があるので、連用は好ましくない。
事前に試しに飲んでおいて体調が悪くならないか確認するというのなら、慎重すぎるけど悪くはないかもしれないが。
そんな通知を決めたのは、養護教諭?
それとも、学校薬剤師さん?
専門家に相談しないままで、教師の独断?
謎だ……。
お客様から、10歳の子供の風邪薬の相談を受けたけれど、症状は咳だけというため『浅田飴子供せきどめドロップ』を提案したところ、粉薬が飲めることと、どうやら咳の音が湿っているらしいと分かったため『五虎湯』を案内して、そちらをお買い上げいただいた。
本当は『カンポアズマ』を使いたいところだが、年齢制限で使えない。
お客様には、積極的に子供に温かい物を飲ませることと、下半身を厚着してお腹周りを冷やさないようにと伝えた。
湿った咳は、内臓の冷えとも関係するので。