高齢のお客様が『ドルマイシン軟膏』を買いにみえて、足の炎症に使ったら良くなったというお話だったが、抗生物質のみで構成されている薬だから、効能的には自然に治ったか軟膏で患部を保護する形になったのが良かったと考えられることをお話しした。
痒みがあって買い足そうと思ったというとうため、虫刺されの薬でも適応することを伝えると、家には無いとのことで炎症を抑える弱いステロイド剤の入った『ロコイダン軟膏』を一緒に購入された。
うーむ、菌を殺すための抗生剤の『ドルマイシン軟膏』は不要だと思うのだけれど。
まぁ、怪我した時に使えるから常備薬としておくというのは良いか。
そんなことを思っていたら、お客様から「近くに薬局があるけど、買う時に何も説明してくれないから、薬はこっちで買うことにした」と言われて恐縮(・_・;)
お客様から、ステロイド剤は体に良くないのか質問をされて、それは昔のデマが残ってるだけとお話した。
もう30年以上前の週刊誌なんかの記事が大騒ぎになったもので、しかもそのさいに問題として取り上げられたのは20年以上にわたってステロイド剤を使い続けていたという極端な事例なうえ、それだけの長期間ともなれば患部が悪化してと言っても他の要因を排除できない。
現在のところ、塗り薬のステロイド剤に関しては、用法・用量を守っていれば、問題は無いと考えられる。
そう説明したところ、ご主人が股の近くに湿疹ができて、患部を掻き崩してしまうというため、傷口にはステロイド剤は良くないことをお話した。
ステロイド剤は優れた抗炎症作用があるものの、患部の免疫機能を低下させ、皮膚細胞の再生を邪魔してしまう。
痒みや炎症が強くて患部を無意識に掻いてしまうようならステロイド剤で抑えるのが効果的だけれど、傷口ができていると良くない。
そういう場合には、免疫機能が低下するのを補うため抗生剤の入ったステロイド剤が候補となり、『クロマイP軟膏』を紹介した。
ちなみに、ご主人は『オイラックスA』を使って効かなかったそうだ。
『オイラックスA』は痒みを抑える成分を重ねているとはいえ、ステロイド剤は入っていないので単純な強弱でいえば弱い薬である。
ただ、強い薬で良くなったらと使い続けずに、痒み止めなどに乗り換えて症状に合わせて薬も行ったり来たりが必要とお話した。
また、患部の見た目の確認が必要なことも説明した。
患部が周囲の皮膚となだらかなグラデーションになっているのなら湿疹だけれど、クッキリと分かれているようだと、いわゆるインキンタムシなど真菌による皮膚疾患と考えられ、早めの病院の受診が必要となる。
それから、クリーム剤と軟膏の使い分けも説明した。
人間のバリア機能は非常に優れていて、薬を浸透させることが難しいため、そのバリアを破るように調整されているのがクリーム剤。
軟膏はベタつくから嫌いという人がいるけれど、そのベタつきによって患部が服とこすれたり、無意識に触ってしまうのを防ぐ絆創膏の代わりに保護するのが目的。
だから患部が股となると、皮膚や服が擦れる部位であるから軟膏のほうが向いている。
すると、お客様が本人にも伝えるというので、他のお店でも良いから本人が相談をするよう勧めた。
「そこまで親切に」とお礼を言われ、「大事なことですから」と答えた。