外用消炎剤の棚でサリチル酸系のパップ剤を見較べていていたお客様が、『スキュータムA』をレジに持ってきた。
同じ系統だから間違えではないものの、用途に合っているかを確認するために、弱めの薬で良いか尋ねると、昨日に捻挫したばかりだと分かり、初期には強い薬を使うほうが良いとお話して、インドメタシン製剤の『ハリックス55ID』に変更となった。
捻挫や打撲のような急性症状は、弱い薬をダラダラと長く使うよりも最初に強い薬を使って、痛みが和らいだら薬も弱い物に乗り換えていくステップダウン方式にするのが基本。
最初に強めの薬を使うことにより、それで痛みが軽減しなければ骨に異常が起きているかもといった、受診の判断も早めにできるという利点もある。
またお客様には、本来は初日に患部を氷水で感覚が無くなるまで冷やすと、痛みの伝達成分の生成を抑えられ、予後の痛みの残り方が軽くなることを伝えた。
無いほうが良いけれど、次の機会にはお試し下さいな。
お客様から『手ピカジェル』のミニタイプを求められ売り場を案内したところ、受験生の子供が学校に行くのに持たせるというため、机をアルコールタイプのウェットティッシュで拭いた方が感染症対策になることをお話しすると、両方の購入を決められた。
お会計中に、子供が腹痛を起こしやすく『セイロガン糖衣A錠』を飲ませているというお話が出たので、『正露丸』とは処方内容が異なることを説明した。
腸を消毒し異常な動きを整える『正露丸』は、下痢止めであるのと同時に食中りに対処する薬でもある。
食中りの場合は、悪いモノを早く排泄したほうが良いので、下痢をピタリと止めてしまってもいけない。
『正露丸』は、まさにその条件にうってつけなのだけれど、腹痛に対応する抗炎症と鎮痙攣の生薬は『セイロガン糖衣A錠』には入っていないから、腹痛が目的ならば適応しないと考えられる。
また、腸にも嗅覚器官が備わっているので、あの独特の匂いもまた効き目のうちなんである。
腹痛のみで下痢はしないのであれば、こむら返りにも使う『芍薬甘草湯』の方が合いそうだが、どうやらストレス性のようなので『桂枝加芍薬湯』を紹介すると、そちらも購入された。
また、本人は冷たい飲み物が好きなようなので、せめて食事にスープや味噌汁など温かい物をと勧めた。
若いお客様が『小青竜湯』を購入されるのでヒアリングしたところ、主訴は鼻水との事から合うようであれば内臓が冷えている可能性を伝えたところ、寒暖差アレルギーのようだった。
そういう時には、寒い日は当然として暖かい日にも温かい物を積極的に飲んで、お風呂に入り、お腹周りを保温するために下半身に厚着をして、内臓を温かく保つほうが良いことを教えた。
そうすることによって、体の中での温度差を最小限にするのだ。
夫婦のお客様が来店し、『ラミシールAT』をレジに持ってきたのでヒアリングしてみると、患者はご主人で水虫に使い切ったから追加にとのことだったが、病院の診察を受けていないというため、湿疹だった場合のリスクをお話したところ取りやめになった。
皮が剥けているとか、白くなったり赤くなったりといった見た目では、水虫かどうかは分からない。
真菌がいるかどうかは、病院で調べてもらわないと確定できない。
湿疹の薬には痒み止めや恋炎症剤が入っているので、症状を抑えるという目的では水虫に使っても一定の効果があり、副作用の点でも心配は少ない。
ところが、水虫の薬はいわば殺菌剤だから湿疹には刺激物だし、皮膚が再生しようとするのを邪魔してしまう副作用が起きる。
長らく水虫の薬を使っていた患者さんが、湿疹の薬に乗り換えたら症状が治まったなんて事例もあるから、やはり水虫かは確定してから薬を使いたいところだ。
店頭で勧められない良くない鑑別方法としては、ステロイド剤を患部に塗るという方法がある。
あくまで理論上であって、倫理上は問題があるから試さないようにしてほしいのだけれど、炎症を抑える効果の高いステロイド剤の副作用は、患部の免疫機能を落とすことなので、水虫だった場合には患部が悪化する。
つまり、薬の使い方を間違えると怖いですよというお話。
登録販売者の教本にも、湿疹なニキビなどの解説はあっても、水虫の項目が載っていないことがある。
理由は、水虫と確定していない患者さんに安易に水虫の薬を販売してはいけないからだ。