同じ目的の薬でも、成分によって性格が違います。鼻炎薬の使い分け、痛み止めの使い分け

 お客様から精製水を求められたけれど、ハッカ油スプレーを作って台所などの消臭に使うというため、水道水で充分不要なことをお話したところ意外に思われたようで、お帰りになった。
 加湿器などに使う場合には、水に含まれるミネラル成分や不純物などが内部で石化してしまうから精製水の方が良いかもしれないが、スプレー程度なら容器を洗えば良い。
 また、ハッカ油スプレーにと無水エタノールを買いにみえるお客様もいるけれど、それは水と油が混ざりやすくするためと、日持ちさせるのが目的。
 入れないと容器を振っても上手く混ざらず白く濁ってしまうが、商品ではなく個人で使うのなら気にしなくて良いし、日持ちについても作ったその日に使い切るのであれば無水エタノールは不要である。
 ちなみに、ハッカ油を台所に撒くのは消臭だけでなくゴキブリ除けにもなる。
 殺虫剤を台所に撒いたり、燻煙剤を焚いたら食器を洗い直さなければならないが、ハッカ油ならば食品添加物でもあるし、周辺に匂いがあればゴキブリ等の害虫は近づかないから、食器に直接的に付着することも無くて安心。

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 お客様が『ルルアタックNX』をレジに持ってきたけれど患者はご主人らしく、主訴は鼻づまりで咳は無いというため鼻炎薬を提案したうえで、現代薬は鼻水を止めるのは得意でも鼻づまりを治すのは苦手なことを説明し、両方の症状を行ったり来たりしてるか尋ねてみたが分からないようだった。
 鼻水と鼻づまりは、どちらも「鼻炎」と呼ばれているけれど起きていることが違う。
 現代医学では、花粉やウイルス等の異常を検知して起こる早発反応が鼻水で、遅発反応が鼻づまりとされる。
 つまり、症状が初期状態なのか日が経っているのかでも対応が変わるし、鼻水は体液の出る穴をキュッと締めてしまえば止まるのに対して、鼻づまりは鼻の奥の血管が炎症して膨らんでいる状態なため炎症を抑えなければならないのだけれど、身体の機能を低下させることにもなり難しいのだ。
 また漢方的な視点で言えば、内臓が冷えたり疲労していると鼻水となり、熱が上半身に篭もると鼻づまりとなるので、鼻水には体内を温める物を鼻づまりには熱を発散させたり冷やしたりして、さらに熱を降ろす物を使い、漢方薬はどちらも得意なんである。
 そして、鼻水と鼻づまりを行ったり来たりしているようだと「寒熱往来」という状態なので、上半身を温めつつ患部の熱を散らす『葛根湯加川きゅう辛夷』が適応する。
 鼻が詰まる一方なら『荊芥連翹湯』を使うし、詰まった鼻汁が喉に落ちてくる場合には胃が弱っていると考えられるので『辛夷清肺湯』が候補となる。
 でも、ご主人の鼻づまりの状況が分からないため、現代薬と生薬を合わせた『アネトンアルメディ鼻炎錠』と、『ベルエムピL』(荊芥連翹湯)を案内したところ漢方薬は嫌がるかもしれないとのことで前者を購入された。
 入浴はしているそうなので、体内の熱の循環のために続けることと、暖房していても下半身に厚着するよう勧めた。
 下半身が温まれば、昇っている熱も降りてくるので。

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 お客様から歯痛に『バファリンA』が効かなかったと相談を受け少し、頭痛もするというため虫歯ではなく風邪の兆候の可能性もお話して『バファリンルナi』と『バファリンプレミアム』を案内した。
 同じバファリンシリーズでも、『バファリンA』がアスピリン製剤なのに対して後の2つはイブプロフェンとアセトアミノフェンという2種類の鎮痛剤を合わせた物で、『バファリンi』がカフェインを加えた物、『バファリンプレミアム』はさらに気持ちを落ち着けて身体機能を落とすことで症状を軽減する鎮静剤が入っている。
 また、鎮痛剤は成分によって性格が違う。
 アスピリンは神経の先っちょである末梢神経の炎症を抑えるのに優れており、それこそ歯痛に向いているが胃への負担が大きい。
 アセトアミノフェンは中枢神経に作用して痛みを感じさせなくなるものの、末梢神経への効果が弱いため炎症を抑えるのが苦手だが、胃への負担は少ない。
 イブプロフェンは、末梢神経にも中枢神経にも効くため同系統のロキソニンとともに優れた鎮痛効果を示すが、痛みの原因によっては炎症を抑えさえすれば中枢神経まで働きかける必要は無いケースもあるから、安易に飛びつくのは避けたいところ。
 また、直接的な胃への悪影響は少ないとはいえ、痛みの伝達物質は胃の保護の命令も兼ねているため、それを抑えると胃の保護機能も自動的に止まるので、使うとすれば食事には気をつけたほうが良い。
 お客様は車の運転はしないとのことから、鎮静成分の入った『バファリンプレミアム』を使っていただくことになった。
 ただ、明日は飲み会というため、無理はしないようにと伝えたうえで、刺身のツマに大根と揚げ物に添えられるキャベツがあったら、胃薬として働くので積極的に食べるようお勧めた。
 そして今日のところは、胃腸を休めるために消化の良い食事をとお話した。

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