赤ん坊を連れた夫婦のお客様が除菌グッズを購入され、レジに来る前に『葛根湯』を見ていたので、適応しない症状のことを伝えたところ興味を持たれた。
上半身を温めて症状を改善する『葛根湯』は、だから温めると具合の悪くなる症状には使えない。
喉が痛かったら余計に痛くなるし、咳があったら咳が激しくなり、すでに発熱していたらもう温める必要は無い。
お客様には、反対に上半身を冷やして症状を改善する『銀翹散』の他に、風邪の進行に合わせて使う漢方薬として発熱時や体の節々が痛む場合に適応する『麻黄湯』と、熱が下がったり吐き気を伴う場合に適応する『柴胡桂枝湯』を紹介した。
咳が止まらないからと『葛根湯』を一週間も飲み続けていた人もいるから、薬を買う時には店員を捕まえて相談するよう勧めた。
お客様から空間除菌を謳う『クレベリン』のステイックタイプを求められ、シーズン的に入荷が終了してることと、効果は期待できないことを説明したところ、母親が結婚式に出席するため遠出するので持たせたいという。
それなら、なおさら役に立たない。
メーカーが提示しているデータは密閉された空間でのもので、人が出入りして空気が入れ替わる環境において同様の効果があるはずなど無いし、もし効果があるほどの濃度だったら、目鼻の粘膜や気管支が炎症を起こすといった健康被害が起きてもおかしくない。
いずれにせよ、密閉空間での実験データからすれば、それこそオープンスペースで携帯用のスティックタイプを使ったところで、お守りにすらならないだろう。
風邪などの感染対策に必要なのは、手洗いと手の触れるところの掃除であることをお話して、『手ピカジェルプラス』とウェットティッシュのノンアルコールタイプをお買い上げいただいた。
ウェットティッシュは、アルコールが入ってるとか除菌タイプかなんて関係無く、とにかく濡れていて拭き取ったら蓋のあるゴミ箱に捨てるだけで良い。
高齢のお客様から『手ピカジェル』と『手ピカジェルプラス』の違いを尋ねられ、後者の方がリン酸を添加している分だけ、新型コロナウイルスなどの脂膜を持ったエンベロープウイルスの脂膜を破ってウイルスの活動を抑える効果が高いことを説明した。
新型コロナウイルスの騒動でマスク売り切れ、手元に無いのが心配というため、手洗いと拭き掃除が一番の予防とお話した。
今日のところは、『手ピカジェルプラス』と除菌スプレーを購入された。
まさか買うとは思わなかったため、除菌スプレーの方は頼りにならないことを伝えられなかった。
効果が期待できるのは「消毒」あるいは「殺菌」がパッケージに書いてある物で、この言葉は厚生労働省の認可を受けないと絶対に書けない。
認可を受けられないか、費用などの面で申請していない製品は「除菌」とか「洗浄」といった別な言葉に逃げる。
一応は、業界団体で「除菌」と書くための基準は設けているのだけれど、業界団体に加盟していないメーカーも「除菌」と書くのを禁止できるはずもなく、買う側がその基準に準拠しているのかどうかを調べる術が無い。
その点からすれば、成分がアルコールだろうがベンザルコニウム塩化物だろうが、「消毒」か「殺菌」と書いてある物を選べば、効果が保証されているも同然。
赤い箱の石鹸の『ミューズ』なんて、「殺菌・消毒」と書いてあるから、わざわざ申請して認可を受けてるんである。
なんだか分からない除菌グッズを使うより、石鹸で手を洗うほうが感染予防には確実なんである。