やや高齢のお客様から腹痛の相談を受け、自身で胃酸が出過ぎかもとのことだったので、過剰な胃酸の分泌を抑制するM1ブロッカーが主成分の『ガストール』と、内臓の平滑筋の痙攣を抑えて痛みを緩和する『ブスコパン』の他に、胃壁内に膜を貼って守る『スクラート胃腸薬』を案内したところ、『ガストール』を購入された。
よく『ガスター10』を求めて来店するお客様に、薬剤師がいない店舗なので置いていないことを伝えるとすぐに帰られてしまうけれど、同じような効き方をするのが『ガストール』なので、慌てずにお話を聞いてもらいたいところ。
お客様は、温かいお茶を飲むと痛くなるというので、やはり胃炎の可能性が考えられることを伝えた。
もしそうならば、『ガストール』は適応する。
やたらと『ガスター10』を使いたがる患者さんがいるけれど、適応するのは胃に熱い感覚があるとか苦い水が上がってくるといった症状だから、胃もたれ程度で使うような薬ではない。
簡易的な鑑別の方法として、水を飲んで楽になるのなら炎症している可能性が高く、お湯を飲んで楽になるのなら胃が疲れているか冷えているということが考えられ、適応する薬が変わる。
今回のように、温かい物を飲むと苦しくなるようなら『スクラート胃腸薬』が候補となり、反対に楽になるときには『スクラート胃腸薬S』のほうが向いているといったことを検討するのにも、お店に来る前に確かめておいてもらえると、情報が増えるので助かる。
若いお客様から、L-92乳酸菌のサプリメント『アレルケア』の問い合わせを受け、取り寄せもできないため販売ルートが限られている可能性をお話したうえで、乳酸菌と身体には相性があることと、腸の働きを整えることを重ねないと意味が無いと説明したところ、アトピー性皮膚炎の相談となった。
商品が無いと知るとすぐにお店を出ていかれてしまうことが多いけれど、目的もお話してもらえると提供する情報も変わる。
お客様からは、「どうしてL-92乳酸菌はアトピーに良いのか」と訊かれ、その効果自体はまだ解明されていないことをお話した。
なにしろメーカーが公表している効果には、「免疫細胞のバランスを整える」というのと「免疫細胞(NK細胞)を活性化させる」という矛盾した記載が見受けられる。
整えるのか活性化するのか、どっちなんだよと。
お客様には、研究データを公開したり、論文を発表されただけでは駄目で、他の研究者からも追試の情報が寄せられなければ効果については、依然として不明なとこを説明した。
また、サプリメントの効果というのは分からず、国が審査して一定の効果があると認められた「特定保健用食品(トクホ)」の申請にはお金がかかるため、わざと認可性ではなく届出制の「機能性食品」にとどめている製品もあることを説明した。
つまりサプリメントは、メーカー独自の研究に過ぎない物と、本当は効果があるんだけど認可を受けないことを選択した物とが入り混じっていて、非常に選びにくい。
お客様が、「医療の知識が無いから選びにくい」というので、そのために情報を提供するのが専門たる医師や薬剤師であり、また私たち登録販売者だということをお話した。
それらの情報を元に決断するのが患者だとすると困るかもしれないけれど、自分に厳しくするか甘えさせるかも含めて、自分を一番大事に想えるのは自分自身だから、医療チームのチームリーダーは患者ということになる。
そうお話して、もし試したいサプリメントや養生法などがあるようならば、医師にはスポーツマンのように「挑戦したい」と相談するよう勧めた。
よほど偏屈な医者でなければ、相談に応じてもらえるはずであるし、全く相手にしてもらえないような医師ならば変えた方が良いとも考えられる。
アトピー性皮膚炎に用いる漢方薬として、患部がジュクジュク型の場合に適応する『十味敗毒湯』と、血と水が巡らずカサカサと乾燥する場合の『当帰飲子』を紹介したところ、子供の頃から見てもらっている医師というので、その医師を主治医として他の医師を紹介してもらうことも含めて相談してみてはと提案した。
自身で他の病院を探すのも悪くはないが、医師の情報を持っているのは医師でもある。
出身大学でのつながりや、研修した病院、所属している学会などに加え、近年ではSNS上で交流している医師もいるから、ネットで検索するよりも、まず目の前に医師に相談してみるのも選択肢に加えたほうが良い。
お客様が痔の舌下錠の『ヘモリンド』と『プリザエース軟膏』を購入されるので出血の有無を確認すると、出血はあるというため適応することを伝えた。
ただ、選んだのは偶然だったようなので、他の『ボラギノールM』は痒み止め成分が主体で、『ボラギノールA』や『プリザS』は強い炎症に用いるステロイド剤が配合していることをお話して、症状に合わせて選ぶ必要性を説明した。
また、患部が外に一個出ている場合は中庭に2~3個できている可能性をお話すると「大丈夫」というため、肛門から奥は内臓で、内臓には痛覚神経が無いため感覚的には分からないことを説明した。
だから、オノジュウの『レンシン』も紹介したうえで受診勧奨した。