お客様から「嘘を教えられた!」と苦情が入ったお話。薬の販売における「客商売」の意味とは?

 お客様が『新ルルゴールドS』をレジで持ってきたさいに、咳止め成分が入ってるので咳が出てから使うよう勧めると、置き薬にしていて効いた気がするというため、咳止め成分の覚醒剤系と麻薬系がそう感じさせている可能性を説明した。
 カフェインも入っているから、脳のほうは混乱して多少の苦しさは誤魔化され、多幸感を得てしまう。
 特に麻薬系の咳止め成分は、中枢神経を抑えて咳を止めるので、咳の出ていない段階で使うと内臓機能を低下させ呼吸を浅くしたり、体内の保水機能を狂わせて乾燥し、便秘を起こすとか乾燥性の咳を誘発してしまう副作用が考えられるうえ、そもそも依存性のリスクがある。
 そして、非麻薬成分の咳止めの入った『パブロンSα』と、そもそも咳止め成分の入っておらず、病院でも風邪のときに処方されることのある『PL顆粒』を紹介したところ、「考えてみます」とお帰りになった。
 ところが後で本社に苦情が入り、店長から呼び出しを受けた。
 お客様は、製薬メーカーに問い合わせて「咳が無くても使えると言われた。嘘を教えられた!」と怒っているとのこと。
 また、「急いでいたのに時間を取られた」とも怒っていたらしい。
 製薬メーカーのどの部門に問い合わせたか分からないけれど、お客様相談室ならば一般的な回答になるし、使えるかどうかと問われれば「使える」と答えるだろう。
 それは私たちが問い合わせてもそうで、営業部門なんかの人は「大丈夫です」と言うのだけれど、研究部門の人につないでもらうとリスクについての注意を教えられることがある。
 急いでるかどうかは、残念ながら言ってもらわないと分からない。
 慌てて駆け込んできたならいざしらず、説明をしているときには落ち着いてる雰囲気だったので。
 もっとも、観察力が足りないと云われたら、私はそのとおりかもしれないが。
 店長から「何か言いたいことがありますか?」と訊かれたので「安全第一です」とだけ答えた。
 すると店長からは、「客商売だから」と言われた。
 それが何を指す言葉なのか、私には理解できない。
 客商売だから、お客様の安全を優先したんですけどね。

 お客様が『新ルルAゴールドDX』をレジに持ってきたけれど、主訴は喉の痛みで前日はクシャミと鼻水があったものの咳は無いというため、喉の痛みの効能もある鼻炎薬を提案した。
 咳止め成分のリスクを説明し、咳止めの入っていない『PL錠』を紹介すると、そちらに変更して購入された。

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 お客様が『ベンザブロックIP』をレジに持ってきたが、喉の痛みの他に症状は無く、選んだのは風邪かと思ってというため、家に鎮痛剤があるか尋ねると持っていないとのことだった。
 『ペラックT』を紹介したうえで、鎮痛剤は発熱にも喉の痛みにも使えることを説明したところ『バファリンルナi』を購入された。
 喉の痛みは風邪とは限らず、胃炎の可能性もあり、体力温存のためにもすぐに消化の良い食事に切り替えるよう勧めた。
 おかゆやうどんにするというのは、寝込んでからでは遅いのだ。
 何故なら、消化をするのにもエネルギーを大量に消費し、炎症している患部を食べ物でこするのも悪化の原因となって良くない。

 お客様が『ベンザブロックL』を購入されるのでヒアリングした ところ、常備薬にするというので、咳が出てから使うようお話した。
 喉の痛みだけなら鎮痛剤をと勧めると、家には無いとのことだった。
 風邪薬を備えても、鎮痛剤を置いている人って案外と少ないのかな。
 それが、新型コロナウイルスにアセトアミノフェン製剤が効くというデマとなって、買い占められる原因ともなっているのかもしれない。
 確かに、インフルエンザなどではアセトアミノフェン製剤以外は脳症のリスクがあるとされているけれど、だからといって安全という訳ではなく、肝臓への悪影響は無視できない。
 解熱鎮痛剤は一つくらい備えておいたほうが、喉の痛みなどの初期症状に使えるし、自分に合った鎮痛剤は日頃から店頭で相談して探しておいてもらえると、パニックにならずに済む。

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