せっかく使ってる効果の高い薬をやめたり、効果の弱い薬をダラダラと長く使ったり

 お客様が『温感アスコラルL』をレジに持ってきたけれど、外用消炎剤としては弱めなことを伝えると五十肩にインドメタシンの液剤を使っていることが分かった。
 単純に鎮痛効果だけを比較したら、『温感アスコラルL』のようなサリチル酸剤は二段階くらい弱くなってしまう。
 それに温めて改善するようならば、感じるだけの温感よりも上半身を温めて血流を良くする『葛根湯』を併用する方法もあることをお話すると、すでに服用していて使い切ったという。
 『葛根湯』自体は連用する物ではないが、五十肩の痛みには弱いかもしれないので『独活葛根湯』を紹介したところ、『温感アスコラルL』を中止してお買い上げいただいた。
 お客様は入浴せずにシャワーで過ごしてるというため、『葛根湯』を使う目的からしても湯船に入ったほうが良いと勧めたうえで、太い血管の通っている背中側にシャワーを浴びる方法を教えた。

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 やや高齢のお客様が『サロンパス』をレジに持ってきたさいに弱めの薬で良いか尋ねたところ、手首の捻挫に使うという。
 弱い薬をダラダラと長く使うよりは、鎮痛効果の高い薬で最初に痛みを抑えたほうが良いとお話したら、一週間ほど前とのことだった。
 まだ痛みが強いそうなので病院の受診を勧めると、ご主人にも言われているという。
 ただ、その間に使ったのは『サロンパス』と同じくサリチル酸製剤の『ハリックス55EX』というため、同程度の弱い薬であるから痛みが治まらないのは当然でもあるから判断が難しい。
 正直、サリチル酸のやっていることは、痒いところを叩けば痺れて痒みが気にならなくなるのと同じ原理で、チクチクとした刺激を与えて痛みを誤魔化すのと血流を良くするというものだから、肩こりなど軽度の症状向け。
 捻挫や打撲のような強い急性症状には、痛みの伝達物質の生成そのものを抑えたり、痛みを伝達する信号を阻害するくらいでなければ意味が無い。
 そうやって最初の段階で鎮痛効果の高い薬を使い、痛みが弱まってきたら薬も弱い物に乗り換えていくステップダウン方式が望ましい。
 これは他の症状にもいえることで、弱い薬から使い始めてしまうと、症状が改善しないのが薬のせいなのか体の側のせいなのか見分けがつきにくくなってしまう。
 だからといって、軽い症状に強い薬を使うのが好ましくないこともある。
 だから、乗り換え先の薬の候補を決めておいたり、病院に行く基準を設定したりと、最初の段階で方針を立てておくのが良い。
 そう説明すると、使っていた『ハリックス55EX』が剥がれやすいから、小さいサイズの『サロンパス』にしようと思ったというため、塗り薬でも浸透力のあり鎮痛効果の高いジクロフェナクトリウム製剤を案内すると、成分が血液中に入るのを怖がられてしまったことから、同じくらいの鎮痛効果のインドメタシン製剤を紹介したうえで、少しは痛みが治まってきてるというため鎮痛効果を下げてフェルビナク製剤のローションを勧めたところ購入された。
 そして、使い始める今日の印をカレンダーに付け、一週間後の日付にもチェックを入れておき、それまでに良くならなかったら受診をと念を押した。
 場合によっては明確な骨折とは分からない、骨の欠片が浮いている剥離骨折という可能性もある。
 また、同じような事が起きたら初日は氷水で患部の感覚が無くなるまで冷やすことと、現在は冷感と温感はあまり関係無く、成分による鎮痛効果と浸透力の違いのほうが大事なことを説明した。
 特に今回のような急性症状の場合は、異常が起きたことを脳に報せるために患部で痛みの伝達物質が生成されるを、初期の段階で邪魔するのが大事。
 作られる痛みの伝達物質が少なければ、その後の痛みを軽減できる。
 患部を氷水で冷やすというのは、血管を収縮させ機能を低下させることにより痛みの伝達物質を作らせないという作戦なのだ。

 腱鞘炎と診断されたというお客様から、病院で処方された湿布を使い切ってしまうため同じ物をと求められたけれど、現物もお薬手帳も持ってきていないため分からなかった。
 それでも、浸透力の高いジクロフェナクトリウム製剤やフェルビナク製剤を案内したところ糖尿病と分かったため、まず調剤してもらってる薬局で相談するよう勧めてお帰りになった。
 ただ、朝方だけ痛むというので、寝ている時に同じ姿勢を取り続けているせいかもとお話して、塗り薬も提案しておいた。
 患部は動く部分だし、塗り薬の方が成分も体に吸収される量が少なくて済む。
 でも今回のお客様の場合、あまりにも危機感が希薄すぎるので、薬剤師に相談する機会を奪うほうが危ないと判断。

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