お客様が『バファリンルナJ』と『小児用バファリン』を比較して長考していたため声をかけたところ、12歳の子供の生理痛に使うとのことで、同じ成分であることと、持ち歩くのなら前者の方が水無しで飲めて便利なことを説明した。
しかし、本人が口で溶けるのを嫌がるかもとのことだったので、チュアブル錠は水を使って飲んでも構わないとお話すると購入された。
お客様には、好みは成長とともに変わるかもしれず、15歳になれば使える鎮痛剤の種類も増え、成分ごとに特性が違うから、本人を連れて薬を購入するよう勧めた。
また、生理痛についても大きな病気を見逃さないために、定期的に検診を受けるようお話した。
生理痛を当たり前だと思ってしまうと、他の病気の兆候の痛みを「いつものこと」と病院に行かず遅きに失するというのは、ありがちなことである。
それに、疲れやすく線の細いタイプに用いる『当帰芍薬散』や、体力が充実していてのぼせがちな場合に適応する『桂枝茯苓丸』に、精神的な不安感が強い人に適応する『加味逍遥散』など、生理痛を軽減する漢方薬は保険が適用される医療用でもあり、15歳になる前から使える。
若いお客様が『ノーシン錠』や『小児用バファリン』などを見ていて、アセトアミノフェン単剤の『タイレノール』をまとめ買いされるので、痛みには効果があっても炎症には弱いことと、新型コロナウイルスに効くというデマが広まっているから気をつけるようにと伝えたところ、「大丈夫です! 看護師なんで!!」と言われた。
看護師ならば、この在庫不足のおり、なおさら買い占めるような真似はしないで欲しい。
アセトアミノフェン製剤しか使えない人がいることを、知らない訳でもあるまいに。
お客様が『バファリン』シリーズを見較べ長考していたようなので声をかけたところ、常備薬としてオールマイティに使える物を探してるというお話だった。
世の中に、そんなオールマティーな薬など無い。
それは、一つ食べれば全ての栄養素を摂れる食べ物が無いのと同じ。
生命の源で、ほぼ完全食とも云える鶏の卵でさえ、ビタミンCだけは摂れない。
また、薬は体の中で何をしているのかを考えるのが大事。
例えば、自身が飲んでいる血圧の薬の名前を覚えていない患者さんは、よく「普通の血圧を下げる薬」と云うのだけれど、降圧剤にも「血管を拡張する」「血液をサラサラにする」「水分を排泄する」といったように、血圧の下げ方が異なる。
同様に鎮痛剤も、新型コロナウイルスに効くなどとデマが広まったアセトアミノフェンは中枢神経に働きかけて痛みを抑えるものの、末梢神経への効果が弱く炎症には向かないうえ、比較的胃に優しいとされている反面、肝機能障害が懸念され、お酒を常飲している人には向かない。
一方、人類最古の鎮痛剤とされるアスピリンは末梢神経の炎症を抑えるのが得意で、痛い場所に効くから虫歯や打撲などに向いており、また血管を拡張する特性から病院では血栓予防に用いられ、その働きゆえに肩こりと連動した緊張性の頭痛に適応する反面、胃に直接的な負担をかける副作用を持つ。
そして、やたらとファンの多い、しかし薬剤師のいるお店で薬剤師の勤務時間中にしか販売できないことを知られていないロキソプロフェンと、同じ系統で化学構造式の似た親戚同士のイブプロフェンは、痛みの伝達物質であるプロスタグランジンの生成を抑えつつ、その信号を受信する側の中枢神経も抑えるため、消炎鎮痛効果が高い。
ただし、胃に直接的な負担はかからないものの、プロスタグランジンは胃を保護する信号も兼ねているので、痛みの伝達を止めると胃を保護する機能も自動的に止まってしまう。
そして、ズキズキするタイプの偏頭痛は胃の不具合と連動しているから、ロキソプロフェンやイブプロフェンを多用していると、胃の具合が悪くなって頭痛が起きるという悪循環に陥りやすい。
このように、お客様に鎮痛剤も成分によって得意分野と、それぞれ異なるデメリットがあることを説明したうえで、アセトアミノフェンとイブプロフェンを合わせた『バファリンルナi』をお買い上げいただいた。
ちなみに、同シリーズの『バファリンA』はアスピリン製剤だから、中身は縁もゆかりもない。
お客様の目的の一つが生理痛と分かったため、生理痛専用薬の『エルペインコーワ』を紹介した。
この薬はイブプロフェンの他に、筋肉の痙攣を抑える成分が入っており、いわば元気に働きすぎる子宮を大人しくさせようという代物。
鎮痛剤の種類が多くて迷うかもしれないが、オールマイティー思える総合風邪薬のようにいろんな成分が入っているよりも、成分ごとの特性の違いを症状や体質に合わせて選べる点では便利なので、もし分からなければ店頭で相談してもらいたい。