お客様から虫除けスプレーはどれが効くか尋ねられ、代表的な成分であるディートの濃度によって、医薬品と医薬部外品に分かれてることを説明したところ、薄いと効果が弱いのかと訊かれたため、持続時間に影響することをお話した。
医薬品となる12%でおよそ5時間、30%なら8時間ほど持続するというデータが有る。
そして大事なのは、体に吹き付けるだけよりも、体に塗るのが効果的なことを教えた。
ありがちなのが、薬剤を吸い込まないようにと腕を伸ばして、体から離し吹きつけるパターン。
虫と人間とは神経の仕組みが違うから、ディートの人間への悪影響は少ないとされている。
とはいえ、吸い込むと気持ち悪くなるのも事実。
だから、吸い込むのを避けるのであれば薬剤を掌に出して、体に塗ってしまえば良い。
一般的に「虫除け」と呼んでいるものの、その効果は薬剤で虫に忌諱させているのではなく、虫の感覚機能を狂わせて人間を見つけにくくさせることなので、薬剤が付着していないところは虫から見えてしまう。
怪談噺の『耳なし芳一』で、悪霊から見えないようにと体中にお経を書いたのに、耳だけ書き忘れて耳を持ち去られてしまうようなもんである。
お客様は、しばらく売り場を見ていて、お帰りになった。
子供3人を連れたお客様が酔い止め薬を子供達たちに選ばせていたので気にかけていたところ、虫除けスプレーも選ばせて子供が『ムシペールα30』を手にしたので声をかけ、『ムシペールα』に変更していただいた。
ディートが人間への毒性は少ないと評価されているとはいえ、より安全性を確保するために『ムシペールα30』は12歳未満の子供には使用しないようにと年齢制限を設けているので。
『ムシペールα』にしても、6ヶ月未満の乳児には使用してはいけない。
子供を連れて薬を買うのは良いことだけれど、塗ったり貼ったりする外用消炎剤にも年齢制限があることを知らない人は少なくないから油断できないし、そもそも薬を子供に選ばせるのは避けてもらいたい。
それこそ子供には、薬は相談してから買う物だというのを体験を通じて教えてあげて欲しい。
お客様には乗り物酔い対策として、乗る前には温かい食事をして腸へと早く送り胃を軽くすることと、乗ってからは冷たい物を少しずつ飲んで胃の活動を抑え吐き気を低減する方法を教えた。
さっきも年齢制限のこともそうだけど、子供たちが聞いてるので、それはもう張り切ってお話した(´∀`)
親子の女性のお客様が来店し、『ウナコーワクール』をレジに持ってきたさいに、効果的には下から2番目くらいの強さの薬と伝えたところ、「弱いの?」と尋ねられたので、正確には成分によって効き方が異なることを説明した。
つい分かりやすくと思い、薬を「強い」「弱い」と語ってしまいがちで、それがお客様や患者さんを勘違いさせてしまうと反省。
しかし、初見のお客様に最初から詳しく説明する訳にもいかず、まずは話を聞いてもらう誘い水としては「強い」「弱い」という言い方しか思いつかない。
例えば血圧を下げる降圧剤にしたって、処方された薬の名前を尋ねても憶えておらず、自身が使っている薬を「普通の」とか「強くない薬」と云われることがあるけれど、重要なのは体の中で何をしているかであって、血管を拡げて血圧を下げるのと血液をサラサラにして下げるのとでは効き方が違うから、それが分からないと他の薬との飲み合わせを検討することができない。
今回の虫刺されの薬では、痒み止めをメインにした『ムヒSクリーム』が「一番弱い」と表現するとして、『ウナコーワクール』には局所麻酔が入ってる分だけ痒みを感じにくくなるから「下から2番目くらいの強さ」と伝えたが、その上からは成分がガラリと変わり、抗炎症作用に優れたステロイド剤の『液体ムヒS』となって、さらにステロイド剤同士のランクが高い『ムヒアルファEX』や『ウナコーワエース』が「一番強い」という位置付けになる。
そう説明すると患部が腫れて盛り上がってるというため、液剤とクリームの使い分けを教えたうえで、同じ処方ならメーカーは好みでとお話したところ、『ムヒアルファEXクリーム』を購入された。
液剤のほうが手を汚さずに塗り拡げやすいという利点があるが、外部からの侵入を防ぐ皮膚のバリア機能を破って浸透しやすく調整してあるのがクリーム剤だから、症状が激しい場合にはクリーム剤のほうが効果的。
お客様は虫除け対策をしていないというので、感染予防のために使うのを検討するよう伝えた。
そして、そのお客様の前に買い物を終えていたお客様が、帰ろうとする足を止めて近くで一緒にお話を聞いていたそうで、『ウナコーワクール』を購入された。
生理痛や痔など、店頭では売り場から隔離された相談スペースが必要だと思うけど、オープンスペースにも利点はあるのね。