薬は適切な物を選ぶのはもちろん、薬を使う前の処置が重要だったりします

 若いお客様が『アレグラFX』や『パブロン鼻炎カプセルSα』など、系統の異なる鼻炎薬を見較べていたので気にかけていたところ、『パブロン鼻炎速溶錠』を購入された。
 同じ鼻炎薬にも、予防向けと素早く症状を抑える物というように違いがあることを伝えたけれど、症状については教えてもらえなかった。
 『アレグラFX』や『アレジオン』などは、早く効く人もいるものの遅い人だと効いてくるまでに一週間ほどかかるケースもあり、薬の効き方としてはアレルギー反応を起こさせないようにする物なので、症状のある時だけに限らず毎日連用するほうが効果的。
 また、アレルギー性鼻炎は異物を排出しようとする早発反応として鼻水が出て、排出できなかった場合には敵となる菌やウイルスと戦うつもりで鼻の奥の血管を炎症させる遅発反応が鼻づまりを引き起こすのだが、主訴が鼻づまりになりやすい人には『アレジオン』のほうが優位に効くとされる。
 一方、『パブロン鼻炎カプセルSα』などは鼻水を分泌する穴をキュッと締めてくれるから早く鼻水を止めるのは得意でも、その副作用として体内の他の水分の分泌をも阻害し、口の乾きや便秘といった副作用を招き、炎症を伴う鼻づまりは苦手。
 早く鼻づまりを解消するためには、上半身を冷やす生薬の入った『アネトンアルメディ鼻炎錠』のほうが効果的だ。
 だから症状を確かめたかったのだけれど、教えてもらえないのでは致し方なし。
 そのままお買い上げいただき、家に『バファリンA』があるというので、頭痛を伴う鼻づまりには有効と考えられることを伝えた。
 主成分のアスピリンは末梢神経に効果があり、現に消炎している場所に効くからである。

 お客様が外用消炎剤の『GSリフェンダα』をレジに持ってきたけれど、痛み止めとしては弱めの薬であることを伝えると、捻挫したというため、最初に強い薬を使って症状が和らぐに従って薬も弱いものに乗り換えていくステップダウンでの対応が、痛む期間を短く、かつ身体への負担が少ないことをお話したところ、捻挫をしたのは今日だというので、なおさら力不足なのを説明した。
 『トクホン』や『サロンパス』などもそうだが、『GSリフェンダα』の主成分であるサリチル酸には直接的な鎮痛と消炎の効果は無い。
 弱い刺激を患部に与えることで痛覚神経を混乱させて誤魔化し、刺激による血流の向上で患部の回復を手伝うため、軽い肩こりや、痛みがあらかた引いてからの回復期に向いている。
 鎮痛効果の高い薬としては、浸透力に優れたジクロフェナクナトリウム製剤があるものの、その浸透力ゆえに他の薬や持病と影響を考慮しなければならず、また日光に当たると副作用として患部だけでなく他の場所もかぶれる日光皮膚炎が起きる可能性があり、案外と使い勝手が悪い。
 他に強さとして遜色の無い成分には、ロキソプロフェンとインドメタシンとがあり、今回はインドメタシン製剤の『バンテリンEX』を紹介したところ、そのクリーミージェルに変更となった。
 お客様は、以前に処方された湿布が家に残っていて、同じような袋だったから『GSリフェンダα』を選んだというため、成分によって鎮痛効果と浸透力が異なることを改めて説明した。
 そして捻挫や打撲などの急性症状の初日は、氷水で患部の感覚が無くなるまで冷やすと予後が良いことをお話しすると、「ネットにも書いてあった」とのことだった。
 ネットに書いてあることには注意するよう繰り返し日記で指摘している私だけれど、当たり前の話だが正しいことだって書いてあるので、そういうのはすぐに実行してもらいたいところ。
 ただ、それを実行する前には、いったん専門家への確認をしてもらいたいところなれど、緊急事態ではそうもいくまい。
 だからこそ、普段から決まったお店の常連になって情報を得ておいてほしいのだ。
 人間の身体は異常が起こると、それを脳に知らせるために患部に痛みの伝達物質を生成する。
 連絡する分だけ作ってくれれば困らないのに、人間の身体は機械じゃないから加減をしてくれない。
 そのため患部では、ある程度事態が収まるまで痛みの伝達物質を作り続けて、当然のことながら対処するのが遅くなるほど痛みの伝達物質が多く作られて体内に残ってしまい、痛みが長引く原因となる。
 そこで、氷水で急激に患部を冷やして痛みの伝達物質を生成する機能を低下させてやれば、後で痛みを感じる期間を短くできるのだ。
 今回のお客様は、氷水で冷やすのを面倒に思い、やらなかったという。
 あうッ(;´Д`)=3

 お客様から、「手荒れにワセリンという薬を使ってるんだけど」と言われ、皮膚が切れてるところにも塗って大丈夫か相談を受けた。
「大丈夫です」と答えたうえで、『ワセリン』自体は治す薬ではなく、油分によって絆創膏の代わりに患部の保護に使う物なので傷を治す別な薬、例えば『ヒビケア軟膏』の上に重ね塗りをして使う方法もあることを伝えた。
 この『ヒビケア軟膏』ときたら、ベタつくのを嫌がる患者さんに気を使いすぎたのか軟膏としての保護機能が皆無なくらいクリームに近いから、『ワセリン』を重ね塗りしなきゃならないという本末転倒ぶり。

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