外国人のお客様がジャンルの異なる薬の棚を次々と見ていて、『太田胃散』や『養命酒』に『GSリフェンダα』などを次々とカゴに入れて行くので、その脈絡の無さを気にかけていたところ、口内炎薬の『トラフル軟膏』と『トラフル軟膏Proクイック』の違いを尋ねられた。
後者の方がステロイド剤で強いぶんだけ効果的なことを答えると、以前に前者を舌炎に使っていてイマイチだったというため、炎症に対して力不足だったと考えられることを説明した。
他に、内服の『トラフル錠』と『トラフル軟膏Proクイック』を併用できるか訊かれ、大丈夫というより前者は皮膚の修復に役に立つので、その方が望ましいと答えたところ、口臭にも気になると相談され、『生葉液薬』はどうかとか『養命酒』は冷えに良いかなど話がコロコロ転がり、『ロキソニンSテープ』を7枚同時に貼ったら具合が悪くなった(かっこ注意書きには1日4枚までと書いてある)というため、ようやく危ない患者さんだと分かった……。
肝臓の手術も受けたとのお話で、とにかくお客様の安全を確保するために、使いたい市販薬があったらスマホで写真を撮って、医者から処方された薬を調剤してもらってる薬局の薬剤師に先に相談するよう勧め、『トラフル軟膏』と『GSリフェンダα』のみ、お買い上げいただいた。
今回は取りやめた『養命酒』のアルコール度数がワインと同じくらいの14%と教えると、ビックリしていた。
よく分からないまま、薬をアレやコレやと買おうとしていたことにビックリでございます(^_^;)
一応、『養命酒』は一日3回飲むことになっていて、朝に飲んだ場合の車の運転はどうなのかというと、ちゃんと用量を守っていれば1時間ほどでアルコールが抜けるはずだから、起き抜けに飲んで出かける支度をしている間に飲酒運転の基準値を下回る、というのが非公式ながら研究員さんの見解。
ただし、代謝機能は個人によって大きく異なるので、さらに余裕を持って時間を空けたほうが良い。
ちなみに、飲酒運転で検挙された人が『養命酒』を飲んだと言い訳にするケースがあり、警察からメーカーに問い合わせが入るそうな。
データは蓄積されているので、下手に言い訳をしても無駄です( ̄▽ ̄)
子供を連れたお客様が『イブA』をレジに持ってきたさいに、鎮静成分が入っていて良いか尋ねると、無印との区別がついていなかったようなので、鎮静成分のリスクをお話すると無印に変更となった。
鎮静成分は文字通り、気分を鎮める作用があるから、その分だけ痛みに効くと云えるものの、脳の認知機能を低下させてしまう。
それを、患者さんに伝わりやすくするために「眠くなることがある」と説明することがあり、だから「車の運転をやめましょう」と注意しても、眠くなったことが無いから大丈夫と思われるのは危険。
認知機能が低下するので、目を開けたまま眠くもならずに、しかし信号を見落とすということが起こり得る。
そして今のところ、もしそれで違反したり事故を起こしたとしても、薬のせいとして運転者の過失が軽減されることは無く、むしろ注意を怠った責任が高くなるだけ。
また、鎮痛剤に採用されている鎮静成分の多くは依存性があり、連続で3日飲んだら飲み過ぎと考えられるし、飲んでないときにイライラするという離脱症状が起こる可能性もあるため、たまに使うのならともかく、使う機会が多い場合には鎮静成分が入った鎮静剤は避けたほうが良い。
お客様の用途は頭痛とのことで、ズキズキする偏頭痛は胃の具合が悪くなると連動して起こることを説明したところ、首の後ろから来ていて季節のせいでもあるようなことから、上半身を温めて血流を良くする『葛根湯』が候補になるとお話した。
すると家に『葛根湯』はあるそうで、頭痛が他の病気かもと心配されていたため、頭痛が起きた日をカレンダーなどに記録をつけるよう勧めた。
記録しておけば、病院を受診したさいにも参考になる。
お客様から目眩(めまい)の相談を受けたのだが、弱々しく声とゆっくりした歩き方をされていて、目眩の種類を確認したところ回転性のようだった。
目眩は大きく分けると3種類あり、天井が回るような回転性は水分代謝の異常、目の前が暗くなったり落ちるような感覚は鉄不足や血流不良、雲の上を歩いているようにフワフワした感覚は高血圧が疑われる。
高血圧が疑われるなら『釣藤散』や『七物降下湯』が、鉄不足かどうかは病院での検査が必要なため、疲労感があり血流不足を考える場合には『人参養栄湯』か『十全大補湯』が候補となる。
水分代謝の異常の改善には『苓桂朮甘湯』とか『呉茱萸湯』に『五苓散』などが適応するが、現代薬なら酔い止め薬を使う手もある。
しかし、お客様は狭心症の薬が病院から処方されていると分かり、言い淀んでいたけれど他にも使ってる薬があるように思われた。
こういう、使ってる薬のことを詳しく話たがらないのは、抗不安薬などの精神系の薬の可能性が高い。
その目眩が薬の副作用の可能性もあるため、まずは病院に行くよう勧めたうえで『苓桂朮甘湯』をお買い上げいただき、成分表示をお薬手帳に貼って医師に報告するようお願いした。
お薬手帳を見せてもらえれば、薬の名前などを声に出さずとも確認できるのだけれど。