若いお客様から「グッスミンのような睡眠剤を」と言われ睡眠補助剤の売り場を案内したけれど、調べてみたら「機能性表示食品」だった。
機能性食品は、厚生労働省から一定の効果ありと認定されたトクホ(特定保健用食品)と違い、メーカー独自か、どっかから引っ張ってきた論文などのデータを拠り所としているだけで、実のところ正体不明な物である。
睡眠補助剤の『ドリエル』などは、アレルギー薬に入っていたりする成分の副作用を利用したもので、目覚めの頭がボウッと霞がかかった感覚になる場合もあることを説明したうえでヒアリングしたところ、病院からは睡眠導入剤のゾルピデムが処方されていて、お客様はパニック障害があるとのことだった。
イミダゾピリジン系に分類されるゾルピデムは、脳が起きていようとする働きを阻害するので、「眠くなる」というよりも「起きていられなくなる」のが特徴。
そして睡眠障害にも種類があり、大きく分けると「入眠困難」「浅眠」「中途覚醒」の3つ。
漢方的にはそれぞれ身体機能と関係し、「入眠困難」は肝、「浅眠」は脾胃、「中途覚醒」は腎に対して、亢進しているのを抑えたり弱ってるのを補ったりという対応をする。
そう説明すると、病院から何か漢方薬も処方されているようなのだが、お薬手帳を持ってきておらず名前も覚えていなかった。
パッケージに薄い緑色の帯のデザインがあったというから、記されている番号の下一桁は3番かもしれない。
考えられるのは、83番の『抑肝散加陳皮半夏』か、103番の『酸棗仁湯』だろう。
どちらも気持ちを落ち着ける効果があり、前者はイライラしたり興奮したりして眠れないときに、後者は疲労していて自分の心臓の音にも敏感になってしまう場合に適応する。
いずれにせよ、ゾルピデムが処方されているのでは『ウット』も勧めにくく、今さら『ネルノダ』は機能性食品の信頼性が乏しいことを言ってしまったため紹介しにくい。
これは、私が迂闊であった。
処方されていた薬を使い切り、次に病院へ行くまでのお守り代わりに何か持っておきたいと強く希望され、『アネロンニスキャップ』の鎮静作用を説明して、小容量をお買い上げいただいた。
お客様には、お薬手帳があれば言いにくい症状も見れば察することができるし、医師の方針も読み取れることをお話して、出先で事故に遭った場合には救命処置が早くでき、災害で避難したさいには特例として医師の診察を受けなくても必要な薬を受け取れることを説明した。
お客様から『太田胃散』を尋ねられ、売り場を案内しながら他の薬と干渉しやすいことを伝えると、使うのは高齢の母親で、病院から処方されている薬を覚えておらず、『太田胃散』を使っていることは担当医に伝えていないというため、お薬手帳に成分表示を貼って一元管理するよう勧めた。
すると自身が使う鎮痛剤について質問を受け、『イブ』を使っていたというものの、鎮痛成分のみの無印か、鎮静成分が加えてある『イブA』か覚えていないというので、気持ちを落ち着ける鎮静成分は痛みを抑えるのを助けてくれる一方、常用すると飲んでいないときにイライラするといった離脱症状が起きることがあるから、繰り返し使うようであれば鎮静成分の入っていない物を選ぶようお話した。
お客様の用途は頭痛というため、頭痛の種類によっての対策が異なることを説明した。
ズキズキする偏頭痛は胃の不具合と連動しており、食事を消化の良いものに切り替え、身体を休めるのが養生法だから、鎮静成分の入った鎮痛剤は有効だが、先にも述べたように常用は避けたいので、漢方薬の『五苓散』や『呉茱萸湯』を併用して鎮痛剤そのものの使用回数を減らすという対策が考えられる。
お客様は、頭が締め付けられる肩こりと連動した緊張型の頭痛のようだったので、中枢神経を抑えるよりも末梢神経に作用する『バファリンA』が適していると考えられることをお話したが、以前に使って合わなかったというため、上半身を温める『葛根湯』を提案すると、肩こりや頭痛に使えることを知らなかったそうで、より痛みを抑える方に傾けた『独活葛根湯』を紹介したところ、『太田胃散』と一緒に購入された。
『バファリンA』が、どのように合わなかったのかはお客様自身が覚えておらず、上手く説明できないようだった。
人間の身体は機械ではないから、学術的な効果が必ずしも現れるとは限らないし、多くの患者さんが薬を使ってみて合わなかったからと、そのときの詳細をメモしていないので、致し方のないところ。
使った薬が合わなかったとすれば、それは重要な情報となりえるから、メモを残すよう勧めた。
そのさいには、商品名だと同じシリーズでも記号や数字の有る無しによって、中身が縁もゆかりも無い処方ということがあるから、成分表示を残しておくことも大事。
他にお客様は、以前にファンケルの『内脂サポート』を飲んでいて、『ナイシトール』(防風通聖散)も使っていたそうだが、便通は普通というので気にしなくても良いのではとお話した。
『内脂サポート』は、ビフィズス菌とブラックジンジャーを飲み合わせた機能性表示食品だから、飲んでも飲まなくても大して変わりないだろうけど、『防風通聖散』の方は本来は風邪に用いる漢方薬だから体質に合っているかの検討が必要。
お客様に、運動はゆっくりした動作が良いことをお話すると日本舞踊をしてるというので、良いですねと答えた。
それこそ家の中とか人目につかないところでは、日本舞踊のようなゆったりとした動きのほうが筋肉を使いエネルギーを消費するので、毎日続けるとダイエットの一助となる。
最後に、お薬手帳の効用をお話すると喜ばれた。
お客様が『漢方ヒロレス』のシリーズをスマホで何か調べながら比較していたので気にかけていたところ、手術後の疲労について相談を受け、ちょうどお客様が手にしていたのが『十全大補湯』だったため適応することをお話した。
似た処方の『人参養栄湯』と、体力ではなく気力が持ち上がらない場合に用いる『補中益気湯』も紹介したうえで、『十全大補湯』をお買い上げいただいた。
病院の通院が来月というので、保険の適用薬だから、効果があれば処方してもらえないか医師に相談してみるよう勧めた。
また、皮膚のケアに使う飲み薬も疲労回復の助けになることをお話しすると、『チョコラBB』を飲んだことがあるというので、併用してみるよう勧めた。