皮膚薬の剤形の違いは、好みだけで選ぶものではありません! 用途や状態をお知らせ下さい

 お客様が頭部の炎症に使う『ムヒHD』を2個購入されるので、ステロイド剤だから長期連用する薬ではないことをお話して1個目を使い終わった時点で一度は病院を受診するよう勧めた。
 しかし、誰が使うのかも症状も教えてもらえなかった。

 お客様から「ムヒはどこですか?」と尋ねられ売り場を案内すると、他に『メンソレータムAD』と『メンソレータムADボタニカル』を見てから、『ユースキン』と『ムヒSクリーム』をレジに持ってきた。
 『ムヒS』はクリーム剤と液剤とで中身が違うのだが、それで良いのか確認したところ「いいです」というお返事だったが、『ムヒSクリーム』の方は痒み止めが主体で薬としては弱く、『液体ムヒS』はステロイド剤で2段階くらい強い薬であることを伝えると、やはり違いを知らなかったらしく『液体ムヒS』に変更となった。
 ついでに、『メンソレータムAD』は痒みがあるとき向けで、『メンソレータムADボタニカル』は痒み止めの他に油分による患部の保護に適していることをお話しすると、手荒れに使うとのことだった。
 そして、指定医薬部外品の『ユースキン』血流を良くするのが主体で痒みや炎症を抑える効果は弱いので、治すというよりは予防に向いていることも伝えた。
 養生法として、手洗いのさいには皮脂を洗い流してしまうハンドソープなどを使わずにキッチンペーパーでこすり洗いする方法と、皮膚の材料を運ぶ血流に良くするために指先の細い血管を開く手段として、お湯を入れた湯呑みを握っておく方法を教えた。
 お客様は介護職で手荒れしやすいというため心配したのだけれど、少しアレコレとお話し過ぎてしまったかもしれない。
 なにしろ、なかなか用途を聞き出せなかったもので。
 よくヒアリングの基本は「傾聴」と言われているけれど、それは初めから相談する側がその気になっていて、落ち着いて話せる環境でのこと。
 店頭で短時間に、初対面のお客様から相談してもらえるようにするのは、どうにも難しい(^_^;)

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 お客様がスキンケアの棚で迷ってる様子で、『ユースキンあせもクリーム』をレジに持ってきたさいに、クリーム剤と軟膏では使い分けがあることを伝えると、相談していただくことができた。
 液剤や乳液タイプも一緒に比較し、これらは患部が広範囲な場合に適している。
 一方、液剤のほうが皮膚に浸透するように思えるが、実は皮膚の防御機能は高く液体のほうが弾かれてしまう。
 そこで、皮膚に浸透するように調整されているのがクリーム剤で、症状が強く出ている場所に用いる。
 軟膏はベトつくのを嫌がる人もいるけれど、ベトつくことによって患部が皮膚同士や服などと擦れるのを防ぎ、絆創膏代わりに患部の保護に役立つ。
 患部が複数箇所ある場合には、広範囲に液剤を塗り、症状の激しい場所にクリーム剤を、患部が擦れそうだったり絆創膏を貼りにくい場所なら軟膏をというように、同じ薬でも剤形の違う物を併用するという方法がある。
 お客様の主訴は背中の痒みで、範囲が広いようだったので『ユースキンIローション』を勧め、変更となった。
 お風呂は熱めの湯に短い時間入ってるといううので、ぬるめのお湯に入ってからの追い炊きを提案したけれど、家族がいて難しいようだった。
 熱いお湯に入ると血管がキュッと締まってしまい、お風呂を上がったときに血管が開くと一気に血液がドッと流れ、血管の内側が血液と擦れて炎症を起こし、それが痒みを強める原因となってしまう。
 だから、ぬるめのお湯に入り血管が締まるのを避けたいのだ。
 そこで、入浴前のシャワーを太い血管の通っている背中に浴びて体や髪を洗い、先に血管を開いておくよう勧めた。
 そして、痒みが続くようであれば病院の受診も検討するようにお話した。
 症状が酷くなったら病院に行こうと考えがちだが、先に専門家の目で診てもらって専門家に治療方針を立ててもらうというのは、素人判断をするより大事なことである。

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