総合風邪薬が、運用面でも費用的にも損な理由とは?

 成人の親子のお客様から、ウオノメの薬の場所を尋ねられ売り場を案内したうえで、絆創膏タイプと液剤の違いを説明しながら、長患いであれば治るのにも時間がかかるため、液剤を勧めてお買い上げいただいた。
 絆創膏タイプも液剤も基本の成分は同じで、簡単に言ってしまうと、表面の皮膚をわざと腐らせて新陳代謝を促す。
 液剤が違う点は、さらに皮膚を柔らかくする成分を足してあり、より改善の効果が期待できる。
 主成分が先のとおりの働きをするので、お客様には使った後によく手を洗うよう伝えた。
 うっかり目を触ったりすると大変なので。

 お客様が『ヘパソフト薬用顔ローション』と総合風邪薬の『ルキノンKB錠』をレジに持ってきたさいにヒアリングすると、後者は置き薬にするというため、咳止め成分のリスクを説明して、もう少し体に優しいと考えられる『パブロンSα』と、そもそも咳止め成分の入っていない『PL顆粒』を紹介した。
 置き薬だから、色々と入っている総合風邪薬が便利と考えるのだろうけれど、風邪をひいたからと熱・喉の痛み・関節痛・鼻炎・咳などがいっぺんに出るということは少ない。
 そのうえ鼻炎と咳は、鼻から喉を通って胃がつながっているように、胃の不具合が原因ということもあり、風邪とは限らない。
 たとえば、胃が冷えたり疲れていると鼻水が現れ痰の絡んだような湿った咳となり、胃炎を起こしているときには鼻が詰まって空咳が起こる。
 そして、風邪の原因の90%以上がウイルスとされている訳だが、症状だけから風邪なのか胃の不具合なのかの特定は困難。
 職能的にも法律的にも、診断できるのは医師だけであり、それは患者自身についても同じこと。
 風邪かどうか分からないのに、総合風邪薬を使うというのは勧められない。
 というのも、特に咳止め成分の多くは麻薬系と覚醒剤系で、麻薬系は身体機能を落として咳を抑え、覚醒剤系は神経を興奮させることにより喉を開いて呼吸をしやすくするのだけれど、それはそのまま副作用となってしまう。
 麻薬系で身体機能が落ちると、呼吸は浅く心拍数は少なくなり、保水機能も落ちるので体内が乾燥し、便秘を起こすだけでなく咳の原因ともなる。
 一方、覚醒剤系は血圧を上昇させ動機を激しくし、しかし興奮作用により身体の不具合を感じにくくなって、治っていないにもかかわらず元気になったと錯覚する。
 ここにさらに鼻炎薬が入っていると、代表的な成分は鼻水を抑えるさいに体液が出るのも止めてしまうため、体内の乾燥に拍車をかけ、やはり咳の原因ともなる。
 以上のことを踏まえると、総合風邪薬の基本構成は、解熱鎮痛剤と鼻炎薬と咳止めの組み合わせだから、むしろそれぞれの薬をバラバラに備えておき、起きた症状に合わせて使うほうが身体への負担が少なくて済む。
 また、総合風邪薬は価格が高めに設定されている物が多いので、実は解熱鎮痛剤と鼻炎薬と咳止めをバラバラに買った場合と価格はそれほど変わらず、それでいて起きた症状に合わせて消費していくほうが、金銭的にも節約になるのだ。
 とはいえ、バラバラ揃えるのは面倒、あるいは、やはり風邪薬として持っておきたいということであれば、病院で風邪に処方させることのある『PL顆粒』は解熱鎮痛剤と鼻炎薬の組み合わせで、咳止めは入っていないから使いやすいと考えられる。
 今回のお客様も、風邪薬は『PL顆粒』に変更となり、ヘパリン類似物質の注意点を伝えた。
 ヘパリン類似物質は血流を良くすることで水分と皮膚を修復する材料を行き渡らせてくれるのだが、血が固まらなくなって傷口があると出血が止まらなくなる。
 失血死するなんてことは、まず無いものの、皹(あかぎれ)などの小さな傷口から出た血が固まらず、服の袖口に付いてしまうということはありえる。
 というか、私が商品の品出しのときに段ボール箱で指先を切っているのに気づかず、白衣の袖口に血が付いてしまったことが……(^_^;)

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 お客様がハンドクリームを購入され、実際に場合は傷になっている場合には、修復成分の入った薬をとお話して『ヒビケア軟膏』を案内したところ追加で購入された。
 全体にハンドクリームを塗ってから、『ヒビケア軟膏』を傷口にピンポイントで塗り、さらに寝る時に患部を布団とこすらないように『ワセリン』で保護する方法を教えた。
 また、養生法として入浴時には手を湯船に入れることと、お湯を入れたい湯呑を握ることを勧めた。
 指先の細い血管を開いて、修復する材料を行き渡らせるためである。

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