お店への要望は店員に喰ってかかるより、投書箱へ! 日本製にこだわっても、良いことはありません

 若いお客様がフェルビナク製剤の『フェイタス5.0』を購入されるさいにヒアリングすると、当初は肩こりというお話だったけれど、鎮痛剤としては真ん中くらいの強さとお話したところ、痛いくらいというため適応すると思われることを伝えた。
 ただ、皮膚から浸透しやすい成分ではあるため、持病とか他の内服薬と影響し合うこともあることをお話して、薬を選ぶ時には、立ってる者は親でも使えという言葉があるように、立っている店員は使って下さいと伝えた。
 例えば、当初に言われていた肩こりならば、一番弱いサルチル酸製剤の『トクホン』や『サロンパス』で充分、もしくはむしろそちらの方が適応するとも考えられる。
 何故ならサルチル酸には直接的な消炎鎮痛効果は無くて、弱い刺激によって神経を混乱させるというやり方なので、虫に刺されて痒いときに患部を叩くと痺れ感で痒いのが誤魔化されるのと同じなのだが、その弱い刺激がマッサージ効果となって血流を良くする。
 血流を良くするという点で言えば、肩こりには『葛根湯』も使えて、痛みが強い場合には『独活葛根湯』も候補になるのに、お客様に紹介し忘れてしまった。
 貼る物に引っ張られて、ヒアリングしてるときに思いつかなかった。

 お客様がサルチル酸製剤の『リフェンダGS』を2袋購入されるので、弱めの薬で良いのか尋ねると驚かれ、病院で以前に何か湿布薬が処方されていたというものの名前を覚えていなかった。
 湿布薬は成分によって鎮痛効果や浸透力に違いがあり、副作用も異なることを説明しているうちに、処方されたのは『ロキソニン』だったと思い出された。
 家にはまだ余っているものの、あまり量を多く処方してもらえないと不満を漏らされていたので、一番強い部類の成分だからそんなに使う物ではないことと、医師が症状から量を判断している可能性もあるため、どの体と使っているのか伝えたうえで足りないことを相談するよう勧めた。
 実際、お客様は背中の片側が痛むとのことだったけれど、痛み自体は強くないというお話だった。
 そうであれば、『ロキソニン』の代わりに『リフェンダGS』を使うのは悪くはないが、医師の立ててる治療方針を相談せずに自己流で変更するというのは好ましくない。
 治療というのは、医師の指示に粛々と従うというモノでもなければ、患者が独自に専門家の意見を仰がずに進めるモノではない、患者と医療者との共同作業なんである。
 それから誤解されるといけないので、お客様には薬は「強弱」よりも「体の中で何をしてるか」が大事ということを、血圧を下げる降圧剤を例にお話しすると、「こういう話は初めて聞いた」と言われた。
 降圧剤の例で言えば、よく処方されている薬の名前を覚えていない患者さんから「普通の血圧の薬」と言われるのだけれど、血圧を下げるために「血管を広げている」のか「血液をサラサラにしている」のか「排尿させている」のとでは薬の作用機序が異なり、それが分からないと他の薬との影響も検討しようが無くなってしまう。
 また、病院での医師との対話が短くて、行っても黙って薬を処方されるだけだからと通院をやめてしまうケースがあるが、医師は患者の様子を観察している。
 診察時間が限られているうえ、近年ではプライベートに立ち入られるのを嫌う人も多いから、患者の側から質問したり情報提供したりしなければ、対話が短くなってしまうのは、致し方ないところ。
 お客様には、取材記者のように質問してメモを取るよう勧めた。
 相手も人間であるから、熱心に人には答えたくなるもの。

 お客様から日本製のマスクと消毒用ジェルをと求められ、品不足で限定的に商品を探すのは難しいことと、中国人が日本に来て中国製を買って行くぐらいだから日本製にこだわらなくても大丈夫とお話した。
 以前に中国人のお客様から聞いた話だが、中国企業の契約している中国工場は信用できないけど、日本企業が契約している中国工場なら信頼できるから、わざわざ日本に来て日本企業の中国製品を買っていくんだそうな。
 ところがお客様は、「中国人向けのコーナーを作ればいいだろ! 日本人には日本製を売れ!」と激昂された。
 商品自体の信頼性は作る国で決まるものではないとお話しつつ、要望は“お客様の声”に投書するようお願いすると、「よしっ! お前がそう言ったと録画するからな!!」とスマホを取り出して私を録画し始めたので、「どうぞ( ^ω^ )」と笑顔で答えた。
 実際、上に提案しても蹴られることが多く、お客様の声が届いた途端、同じ提案が採用されるから、要望は店員に言うより確実である。
 すると、今度は除菌スプレーを指して「こんな韓国製なんて紛い物売ってんじゃねーよ!」と言われたので、これ幸いと消毒効果が保証される表記として「消毒」と「殺菌」のお話をしたところ、ようやく落ち着いて話を聞いていただけるようになった。
中国製だろうが韓国製だろうが日本製だろうが、厚生労働省の認可を受けて一定の効果が保証されているのは「消毒」「殺菌」がパッケージに表記されている製品のみで、効果が期待できないかメーカーが認可申請の費用を惜しんでいるような物は「除菌」とか「洗浄」といった別な用語を使っている。
 輸入するさいに検査を受けて行政機関から認可された外国製品と、認可されていない日本製品の、どちらが信用できるか。
 そうお話しながら消毒薬のコーナーに案内したところ、子供に使いたいとのお話が出たので、蒸発しやすく皮膚の水分を奪って手荒れの原因ともなるアルコールより、ベンザルコニウムの方が皮膚に優しいことを説明すると『コーワ消毒薬』をお買い上げいただいた。
 求めるお客様がいる以上、外国製品だろうと信用の怪しい商品だろうと、お客様の求める物を置かない訳には行かず、何を買うかはお客様が決めることとお話すると、最後には握手を求められた。
 疲れたー(;´Д`)

以下の記事も読まれています。


 
登録販売者から一言 壱の巻 登録販売者から一言 肆の巻「おくすり手帳と個人情報の使い方」 市販薬購入前チェックシート