若いお客様から痔の薬の売り場を尋ねられ、案内するとそれ以上は何も訊かれなかったけれど、念のため『ボラギノールA』が一番強い薬で、痒み程度なら『ボラギノールM』でも充分であり、痛みの他に出血がある場合には止血剤の入った『プリザエース』が適しているということを説明したところ、しばらくご自分で選んで『ボラギノールA』の軟膏を購入された。
ただ、少し長引いているようなので、早めに病院に行った方が日帰りで処置を受けられることを伝えた。
特に、痔で痛みを感じるのは肛門の外側だけで、内側は内臓となるため症状が進んでいても気つきにくいから注意が必要である。
どうして内蔵が痛みを感じないかというと、理由はシンプルに痛覚神経が無いから。
もしあったら、心臓が動くたび、食べ物が胃腸を通るたびに激痛に苦しめられてしまう。
それが、内臓疾患に気づきにくい理由でもある。
胃が痛くなるのは、近くの神経が代わりに異常を知らせようとしている訳で、同様に背中の痛みが肺炎の全長だったり、心筋梗塞を肩の痛みと感じたりするケースもある。
とにかく、痔は身体の外側と内蔵の両方にできる疾患なのに、痛みは外側でしか感じないから、本人が病状を見誤りやすいのが注意点。
お客様には、うちでは取り扱っていない内服薬の『レンシン』を教えようかとも思ったけれど、かえって治療の妨げになるといけないのでやめた。
お客様から『ボラギノールA』と『ラナンキュラス』の注入軟膏について質問され、主成分は同じステロイド剤で痔の市販薬としては一番強いことを説明すると、価格の安さで後者をお買い上げいただくことになった。
患者はご主人で、以前に単身赴任先で病院を受診した事があり、今回も患部は外に出ているようだというため、さっきのお客様と同じお話をして病院を受診した経験があれば是非にと勧めた。
外に出ている痔が一つだとしても、内側には2つ以上できている可能性が考えられるからだ。
夫婦のお客様が妊娠検査薬の前で長考されていたので声をかけ、すでに枯れた技術なのでメーカーで選んでも価格でも好きな方を選んで良いことと、判定率は99%の正確さでも使う側は慣れていないと考えられるため2回用を勧めてみた。
しかしさらに長考して、メーカー違いの1回分を一個ずつ購入された。
こういうの確か確率的に考える思考法があったはずだけど、どっちの方が有利だったんだったかな。