やや高齢のお客様から、マスクで唇が荒れてしまったとの相談を受け、『ロートメディカルリップメントール』と『モアリップW』を案内し、前者には殺菌剤も入ってることを説明すると、口内炎にも使えるか尋ねられた。
口の中には使えないとお話したところ、舌が痛いというため口内炎以外に舌炎の効能も記されている『トラフル軟膏』を勧めると、今度は唇に塗って良いか質問された。
成分的には唇に使っても問題は無いものの、市販薬は明記されている効能以外の目的には販売できない。
お客様によっては知識の一つとして情報を提供したり、常連さんならある程度は性格も分かってくるから雑談の中でお話することはあるけれど、今回は危なそうなので伝えなかった。
一つの薬で複数の症状に対処したいという気持ちは分かるけれど、湿疹に水虫の薬を使うような危ない使い方をされる可能性がある人には、情報を絞ることも必要。
お客様には、唇の荒れについては保護するために『ワセリン』を塗る方法を勧めたうえで、『トラフル軟膏』をお買い上げいただいた。
お客様から掌の皮が剥けるとの相談を受け、これまでも1~2ヶ月程度で治っているものの繰り返してるというため、受診勧奨をしたうえで痒みもあるとのことから、患部を保護するのに油分もある『メンソレータムADボタニカル』を案内し、血流を良くして修復する材料を運ぶヘパリン類似物質の『ピアソンHPクリーム』も紹介した。
お客様は『ユースキンA』を使っていて、『ニベアクリーム』に乗り換えても駄目だったというので、「そうだと思います」と答えた。
どちらも油分で患部を保護してくれるけれど、痒みを止めたり修復するという点からすると力不足である。
他に「尿素は?」と効かれ、今回は好ましくないと答えた。
尿素は皮膚の中に水分をガッチリ捕まえてくれるから、高齢者の乾燥肌には向いている一方、刺激物でもあるので、皮が剥けてしまう状況では適さない。
先に病院に行って、市販薬での対応が可能かを医師に確認するのも一つの手であることをお話したところ、「病院に行く」とのことでお帰りになったので、もし薬が処方されたらお薬手帳をお持ち下さいと伝えた。
処方された薬が分かれば、使い切った場合に市販薬で近い成分の物を探せるかもしれないので。
病院に行くのを避けたり面倒がるような人だと、病院との繋がりを切ってしまいかねないから安易には薬を紹介できないが、今回のように病院に行く選択をされるひとなら大丈夫であろう。
お客様がニキビ薬を見較べていたので声をかけたところ、『ペアアクネクリームW』を使っていて効かないというため、おそらくは本人が思っている以上に長期間かかることを説明した。
なにしろ、皮膚の表面の薄皮一枚が新しいのと入れ替わるだけでも1ヶ月はかかる。
また、比較していた『クレアラシル』は炎症が強いニキビ向けで、どちらかというと成長期のニキビに用いる薬であることもお話した。
お客様は、顎にニキビができているそうで、病院の受診を勧めると行っているというため、処方されてる薬が分かれば医師の方針も分かるかもしれないとお話し、お薬手帳は持っていなかったけれど、現物を撮っておいたスマホの写真を頼りに調べてみたところ、ニューキノロン系抗菌薬だと分かった。
確かニューキノロン系抗菌薬の塗り薬は、市販されていないはず。
お客様に、市販のニキビ薬と内容が違うことを説明したところ、まだ家に残っているというので、先に使い切るよう勧め、お帰りになった。
もし治る実感が得られないようであれば、市販薬を使う前に医師に相談するようにも勧めた。
薬は一発で治るとは限らず、幾つもの候補の中から試してみるトライ&エラーが必要で、そのためには使った薬を記録しておくことが大事。
それこそがお薬手帳の役割の一つで、薬の現物を写真に撮っておくのは悪くない方法だけれど、記録は断片ではなくファイリングしていかなければ意味が無いんである。