やや高齢のお客様から名札をしげしげと見られたので何かと思ったら、以前に顔のイボの相談を受けた方だった。
確か『イボコロリ』を求められ、主成分は皮膚をわざと腐らせて新陳代謝を促すものだから顔には使えないことと、市販薬で対応できるか専門家の意見を先に聞くのも手ですよと病院の受診を勧めた。
結局、病院に行ったのかは分からないけれど、今回は『ソフトサンティアひとみストレッチ』を購入された。
そして後で再訪し、今度は妹さんが庭仕事で目の近くがかぶれているという相談を受け、以前に乳癌の治療をしたものの現在は服用している薬は無いというので飲み薬の『ムヒAZ錠』を紹介するとともに、花粉症の目薬を目元に塗る方法を教えた。
顔に塗れる痒み止めの塗り薬もあるものの、目の近くとなると目に入ってしまうことも考えられるから、初めから目に入れる目薬を塗るほうが安全。
とはいえ本来の使い方ではないから、あくまで「目も痒かったら」薬液を目から溢れるように点眼するのが前提。
この件については妹さんに確認してみるとの事で、お帰りになった。
ただ、先程購入した『ソフトサンティアひとみストレッチ』は4本入りだからと、一つをお妹さんにあげるというので、お薬手帳に成分表示を貼るよう勧めた。
本来は、家族間でも症状や体質に対して同じ薬を使うのが適しているとは限らないことからすれば、好ましいことではない。
せめて、何を使ったのか医療者が情報共有できるように、お薬手帳を活用してもらおうという次第。
例えば、ビタミン剤だから、サプリメントだから人にあげても良いとは限らないことを例に説明をした。
直接的な害は無くても、病院で何がしかの検査を受けた場合に、本当は身体に問題が起きていても検査の数値だけを良くしてしまう可能性がある。
他に、お客様は内臓脂肪を気にされていてサプリメントも多く飲んでいるようなので、何を使うかは普段の食事をチェックして、不足している物に絞り込むよう勧めた。
毎食のメニューをスマホで写真に撮っておき、毎日だと面倒なので1週間単位で不足している物、摂り過ぎてしまった物を振り返るのが良いだろう。
あと、お客様が鼻をすすっていたため、鼻水は内臓の冷えが原因の可能性をお話して養生法を教えた。
ちなみに、鼻づまりの方は胃炎などの炎症による熱が昇って上半身に滞留していることが考えられる。
つまり原因は異なるが、養生法は同じく下半身、お腹周りを温めることである。
冷えが原因なら温めるのは当然だし、熱が昇っている場合も下半身を温めることで熱が循環して放熱されれば以上は解消される。
風邪でもお腹の不調でも「頭寒足熱」が基本で、この場合の足はお腹も含めるんである。
やや高齢のお客様が『パブロンSα』を2箱購入しようとされるので、咳止め成分の副作用が咳になることもありますと注意を促すと、娘さんと一緒に使うというため、咳も乾燥性と湿潤性があり対応する薬が変わってくることや、「失礼ながら」と断りを入れたうえで体内が乾燥しやすい高齢者と若い人とでは使う薬の選別が必要なことを説明した。
例えば麻薬系の咳止め成分は、身体機能を落として咳を止めるから体内に保水する力も弱めてしまい、乾燥して便秘を起こしたり、咳そのものを招くことがある。
風邪が治ったのに咳だけが残るのは、発熱により体内が乾燥しているところへ、その副作用が重なるパターンが多い。
一方、覚醒剤系の咳止め成分は気道を拡張して呼吸をしやすくしてくれる反面、血管も拡張して心臓への負担が増えるのに、体調は良くなったと錯覚してしまうから、無自覚なまま身体に無理をさせて、風邪をぶり返す原因にもなる。
正直、総合風邪薬は歳を取ってきたら向かないんである。
お客様からは、「本人に買わせた方がいいのね」と言っていただけて1箱はキャンセルとなった。
お客様には、来店したお客様の足取りやお話するさいの声の張りなども、薬を選ぶさいの参考にしてることを伝えた。
足取りも重く声が弱々しいようだと、身体機能を落としてしまう咳止め成分の入った風邪薬は避けた方が良いのに、それを知らずに選ばれていたりするから、患者本人の状態を知るというのは重要なのだ。
もし本人が寝込んでいて来店できないようならば、事前に本人からの聞き取りと観察をしたメモを用意するか、お店に到着してからでも電話で本人と連絡が取れるのが望ましい。
あと、大きな声では言えないが、説明をしっかり聞いてもらえるお客様にはプラスαの情報も提供できるけど、無関心だったり上の空だったり、用法・用量を守らなそうな時には注意事項の優先度を高くして他の情報は絞ります。
お客様から『改源』を尋ねられ売り場を案内し、適応するのは「発熱して息苦しい咳をしている時」と伝えてみたけれど、ご主人からの頼まれ物で、症状は分からないそう。
咳止めに麻薬系の成分は入っておらず、覚醒剤系のみだから、他の総合風邪薬に較べたら身体への負担は少ないものの、逆に言うと咳が激しくて眠れない場合には、むしろコーヒー1杯分に相当するカフェインが邪魔。
発熱していなくて咳のみならば、咳に合わせて咳止め薬か、その咳も軽めならば咳止め薬を使わずに去痰剤を使うというように、より身体への負担の少ない薬を選択するということも考えられる。
そのまま購入されたけれど、咳が無くて熱や喉の痛みだけの場合には、解熱鎮痛剤を先に使うよう勧めた。
熱が出ておらず、鼻の症状も咳も無いのに、無喉の痛みだけでかぜ薬を使おうとする人が多いが、鎮痛剤の効能に「咽頭痛」が入っているから、家にあれば活用してもらいたいところ。