水虫と湿疹の区別ができないまま薬を使うことの何がマズイのか?

 高齢のお客様が水虫薬を次々と見ていたので気にかけていたところ、飲み薬を尋ねられたので、病院に行かないと処方されないと答えた。
 それに、飲み薬は主に爪水虫に対して処方されることが多く、それは同時に塗り薬しか存在しない市販の水虫薬は爪水虫に対応できないということである。
 そしてお客様は、水虫の診断を受けたことはないというため、菌がいるかどうかは顕微鏡検査をしなければ分からないことをお話して受診勧奨した。
 さらに、水虫と湿疹の区別ができないまま薬を使うのが、どうしてマズイのかを説明した。
 まず水虫薬と湿疹薬に共通して入っているのは、痒み止め成分。
 水虫に湿疹薬を使っても、痒みは弱まるが真菌を倒すことはできないから治らない。
 反対に、湿疹に水虫薬を使ってしまうと殺菌剤が皮膚の再生を邪魔するので、やはり治らないうえ、痒み止めの効果が殺菌剤の刺激で相殺されてしまうしまうため、下手すると痒みが増してしまう。
 極端な例では、水虫薬を3年越しで使い続けていた患者さんが、湿疹の薬に換えたら1週間ほどで治ってしまったこともある。
 なお、湿疹の薬の中にはステロイド剤が入っている物もあり、炎症を強力に抑えてくれる副作用として、免疫機能の低下と皮膚の再生の阻害により、水虫が悪化しやすい。
 薬剤師さんに、ステロイド剤を塗って悪化すれば水虫の確率が高いから、試してみる手もあるなどと邪悪な笑顔で教えられたことがあるが、患者さんには勧められない(;´Д`)
 お客様は高血圧で病院を受診しているそうなので、科目が違っても相談するよう勧めると、腕のかぶれで皮膚科も受診したことがあるという。
 それならなおさら、病院を受診したほうが良いでしょう。
 スマホを持ってるそうだから、皮膚疾患の時には患部を、発熱時には体温計に表示された体温を写真に撮っておくと役立つことをお話した。

 やや高齢のお客様が、水虫薬の『ブテナロックVα液』を購入されるさいに、病院を受診した事があるか尋ねると、医師からは同じ薬を使っていると耐性菌ができるから、たまに変えた方が良いと言われたとのことで、逆に水虫薬はどのくらいの周期で製品を変えた方が良いのか質問された。
 今回が3個目で、症状は良くなってるとのこと。
 具体的にどのくらいの周期とは言えないけれど、お薬手帳に成分表示を貼って病院から処方された薬と一元管理をすることと、それこそ定期的に通院して医師に相談するよう勧めた。
 同じ薬を長期連用するにしても、市販薬を自己判断で使い続けるのと、医師の管理下で継続するのとでは意味合いが違う。
 水虫薬に限らず、同じ病院に通い続けて自身の情報をカルテに積み重ねていくことが大事。
 よく、「どうせ同じ薬が処方されるだけだから」と通院をやめて市販薬に切り替えてしまう人がいるけれど、自身の経過観察のメモをしっかり残している人のほうが少ないだろうことを考えれば、対面で医師に観察してもらい、それをカルテに残してもらうのは、自身で記録するより楽なはずである。
「薬をもらうだけ」になりがちなのは、自身から医師への問いかけをしないからというのもあり得る。
 何故なら、医師の方から親身になってヒアリングしようとしても、「薬だけ出してくれればイイ」「難しい話をするな」「プライバシーの侵害」とか苦情を言う患者さんが一定数いて、しかもそういう人は声も態度もデカい。
 そして、そういう人に遭遇してしまったときのゲンナリ感もデカい。
 そのうえ診察時間は限られているのだから、患者さんの側から積極的にならないと、薬を処方してもらうだけの関係に落ち着いてしまうのだ。
 今回の医師の話も、どうしてその時に同様の質問を医師にしなかったのか。
 それともその時には聞き流してしまい、後から疑問に思ったのか。
 病院に「いつか行こう」は絶対に行かないので、誕生日などに決めて定期的な受診を勧めた。
 こうして店頭で病院の受診を確認するのは、水虫が湿疹との見分けが難しく薬が合わないと大変だからというのもあるし、せっかく病院に行ったことがあるのに足が遠のいてしまうのが心配だから。
 でも先にも述べたように、こちらからの話しかけると、いきなり激高するお客様がいるので、毎度毎度ビクビクしながらなんである。

 お客様が、傷痕を治す『アットノンEX』のジェルとクリームで迷っているのを気にかけていたところ、゛シェルを手にして絆創膏の場所を尋ねられたので売り場を案内しながら、薬剤の形による使い分けをご存知か聞いてみると興味を示されたので説明した。
 ジェルや液剤は患部の範囲が広い場合に塗り拡げるのが便利で、クリーム剤は案外と防御力の高い皮膚に浸透しやすいように調整されているため同じ処方構成ならば少しだけ効き目が良い。
 また、同シリーズには無いけれど、軟膏は絆創膏をするようなものと付け加えた。
 ベトベトするからと軟膏を敬遠する人がいるが、ベトベトすることによって皮膚同士や服などと擦れるて皮膚の再生の妨げになることから保護してくれる。
 つまり、患部の状態や場所によって塗り薬の剤形を選ぶのが効果的。
 本日は、『アットノンEXクリーム』に変更しての購入となった。
 そして、表皮の再生だけでも一ヶ月以上かかることを伝えた。
 よるあるパターンとしては、1本を使い切るとそのまま継続せずに傷痕が中途半端なままになってしまうこと。
 もっとも、継続するのが良いのかどうかは薬の内容によっても異なる。
 常に、医師に相談することは検討しておくべきだろう。
 患部の写真を撮っておけば、治るに従ってもっと続けようと思えるし、変化が見えなければ別の物への変更や病院の受診を検討できるので、スマホを活用するよう勧めた。

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