市販薬を買うときにも、お薬手帳があると良いですよ。特に、代理の場合は必須です

 お客様が『スットノーズαプラス点鼻薬』を購入されるさいに、鼻づまりの場合は別な選択があることを伝えると、主訴は鼻水で適応するようだったので、積極的に温かい物を飲んでお風呂に入れば治ってしまう可能性をお話すると、「そうなんですか?」と笑っていた。
 点鼻薬の効能に「鼻水」と「鼻づまり」の両方が書いてあっても、どちらが得意かは成分によって異なる。
 まず、鼻炎という反応を抑える成分が入っていれば両方に対応できるものの、鼻水と鼻づまりとでは起きてる現象が違い、鼻水は分泌腺から出ているのに対して、鼻づまりは鼻の奥の血管が炎症して膨らんでいる状態。
 鼻水を止めるには分泌腺の出口をキュッと締めてしまえば良いから、仕組みとしては単純で、語弊はあるが簡単と言える。
 ところが、鼻づまりの方は炎症を止めて熱を奪わなければ解消できず、物理的に冷やすのでなければ生体反応だけでは難しい。
 風邪で発熱したような場合も、解熱剤での効果は非常に弱く、氷枕で物理的に冷やすほうが効果的なくらいだ。
 だから主訴が鼻づまりだと、『スットノーズαプラス点鼻薬』や『ナザールスプレー』のような物では対応しきれないので、炎症を抑える作用の強いステロイド剤入の点鼻薬のほうが向いている。
 ところが、それを知らずに非ステロイド剤の点鼻薬を鼻づまりに常用していると、先に書いたように分泌腺を締める成分の副作用により鼻腔内の血管まで締めてしまい血流が滞って栄養が行き渡らなくなり、結果として炎症が起こって鼻づまりを引き起こすこととなる。
 点鼻薬を購入するお客様には、主訴がどちらか確認しない訳にはいかないんである。
 なにしろ、お客様が内容を把握してうえで選んでいるのかは、声をかけてみなければ分からないのだから。
 そしていま一つ、薬は症状を一時的に軽減するための道具であり、治すためには本人の“協力”が必要となる。
 鼻水は内臓が冷えたり喉を通じて繋がっている胃が疲れていると現れる症状で、鼻づまりは熱を運んで発散する血液の循環が悪くなって上昇しがちな熱が上半身に篭って炎症を強め、特に胃炎を起こしていると現れがち。
 対策は実は同じで、胃から下、お腹を温めることであり、それが積極的に温かい物を飲み、お風呂に入って、さらに下半身に厚着をすること。
 内臓が温まれば鼻水は解消するし、下半身が温まって血液の循環が良くなれば昇った熱も降りてきて鼻づまりも改善するという次第。

 乳児を連れた夫婦のお客様が咳止め薬を次々と見ていたので声をかけてみたところ、ご主人が1ヶ月ほど咳が続いていて病院を受診したものの、咳止め薬は出されなかったようで、他に処方されたという薬については覚えていなかった。
 鼻の奥の炎症が原因かもと、喘息の可能性も医師から言われているというお話だった。
 むー、医師が咳止めを出さなかったというのであれば、やはり咳止め薬は避けたほうが良いのではなかろうか。
 鼻と喉は繋がっているので、鼻の奥の炎症に反応して咳が出るというのは、ありえる。
 覚えていないという薬の方に、医師の判断が推察できる情報が隠れているのは明白。
 一旦他のお客様のお会計に離れて戻ると、明日、病院に行ってみるというので「良い選択だと思います」と答えた。
 そして、お薬手帳は市販薬購入にも必要なことと、出先での事故時の救命率にも関わることを伝えた。
 お薬手帳があれば、処方されている薬の内容から医師の判断が分かることは少なくないし、事故に遭ったときに素早く基礎疾患の有無を確認できれば、取れる処置の幅も広がる。

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 若いお客様から酔い止め薬を求められ売り場を案内し、比較的眠くなりにくい物となりやすい物があることを伝えると、以前に腎臓を患ったことがあるというお話だった。
 現在は何も薬を服用していないそうだが、お薬手帳は持ってきておらず、その患ったという腎臓の病気について、お客様も具体的な病名や内容を覚えていなかった。
 腎臓と肝臓は、人体において解毒を司る大事な器官で、完治したのか、それとも条件によって再発する「寛解(かんかい)」なのか分からないと、避けるべき薬があるのかさえ分からない。
 先に調剤した薬局に相談してみるよう勧めたけれども、明日のお出かけとのことだった。
 水分代謝の異常による目眩(めまい)に用いる漢方薬の『苓桂朮甘湯』を紹介したところ、以前にセンパアのどれかを使ったことがあるというだけれど、同じブランド名でも中身が異なる薬があることを説明すると、処方されて使っていた薬の名前を思い出したようで調べてみたら、内服のステロイド剤と抗生剤だった。
 これなら、その病気は治ったものと考えて差し支えは無いだろう。
 比較的眠くなりやすい『センパアトラベル1』をお使いいただくことになり、成分表示をお薬手帳に貼るよう勧めた。
 処方されたことのある薬と、使った市販薬を一元管理しておけば、情報の積み重ねができる。
 使った薬について記憶だけを頼りにするより、継続性と正確性が大事なので。
 ちなみに、『苓桂朮甘湯』は眠くなるような成分は入っていないから、車でフェリーを利用したり、釣り船に乗る時などに向いていることをお話した。
 酔い止め薬も目的により使い分けがあることに感心されたので、薬は強弱ではなく体の中で何をやっているかが重要とお話して、お薬手帳は普段から持ち歩いた方が良いことを利点と共に説明した。
 こうして市販薬を選ぶさいに参考になるのはもちろん利点だし、出先で事故に遭い意識が無い場合でも医療者が情報を得ることができるのもそうだ。
 また、継続しなければならない薬を処方されているようなら、災害などで避難生活になっても、特例として医師の診察を受けずに薬をもらうことも可能となる。

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