お客様が『ユースキンあせもジェル』と『アットノンEXジェル』をレジに持ってきたので、別々な人が使うのか尋ねると、自身が別々の場所の患部に使うとのことで、一旦は「そのままで良い」と言われたけれど、クリーム剤と軟膏との使い分けをご存知か質問したところ、興味を示された。
ジェルや液剤は塗り拡げやすいのが利点である一方、人間の皮膚は毒物などを侵入を防ぐためのバリア機能が優秀で、そのバリアを破って浸透しやすく調整されているのがクリーム剤。
「経皮毒」などと言って、シャンプーなどが皮膚から浸透して身体を蝕むなどというニセ医学にハマッてしまっている人がいるが、もしそんな技術があるのなら製薬会社に教えてあげて欲しい。
なにしろ製薬会社の研究員さんは、いかに薬を浸透させるかの研究に明け暮れて苦労してるので。
おっと、話が逸れた。
一方、ベトつくからと避けられがちな軟膏は、ベトつくことによって皮膚同士や服などと患部がこすれるのを絆創膏のように保護してくれる。
お客様のように、痒み止めがメインの『ユースキンあせもジェル』と、皮膚の再生を促す成分に痒み止めが加えられている『アットノンジェル』を患部によって使い分けるというのは良い方法であるものの、剤形によっての使い分けもあるのだ。
場合によっては、ジェルや液剤で広範囲に塗り拡げてから、同じ処方内容のクリーム剤を症状の激しい患部に、軟膏を保護しなければならない患部に使うという方法も考えられる。
そうお話すると、『アットノンEX』はジェルからクリーム剤に変更して購入された。
お客様から『ハツモール内服錠』を求められ、置いていないと伝えると、他のお店でも取り扱っていなかったそうだ。
第2類医薬品だから薬剤師のいない店舗でも販売できるものの、効能に「発毛」と入れるための条件は厳しく、『ハツモール内服錠』も「粃糠性(ひかせい)脱毛症」と「円形脱毛症」に限られており、処方内容は発毛に特化してるというより、皮膚疾患であることを説明した。
ちなみに粃糠性脱毛症とは、皮脂の分泌異常によって角質が剥がれてフケが多く出る脱毛症のこと。
また、円形脱毛症は昔はストレスが原因とされていたが、近年では免疫機能が自身を攻撃してしまう「自己免疫反応」によって起こることが分かってきている。
『ハツモール内服錠』が、いわゆる「発毛剤」ではないことが分かるだろう。
商品名で効能を勘違いしてしまう薬があるので、気をつけてもらいたいところ。
お客様には、『リアップX5プラス』を例に出し、予算的には専門医での治療や、カツラとかウィッグなどを使うことも検討した方が良いとお話をした。
加齢による「壮年性脱毛症」に用いる『リアップX5プラス』の主成分であるミノキシジルは、使うとたしかに効能が現れて毛が生えるが、使用をやめると元に戻ってしまう。
また、価格が高いからと毎日の使用量を、定められた量より少ないと効果が現れない。
つまり、ちゃんと使うと年間に10万円以上はかかるので、予算的にはカツラに振ったほうが良いとも考えられる。