やや高齢のお客様が『イソプロピルアルコール』で拭き掃除して良いいか尋ねられ、価格が安い反面、一般的な消毒用エタノールよりも水分を奪う力が強く、手荒れしやすいため家庭での使用は勧められないことをお話した。
お店で売っている物は濃度が50%の表示なので、「消毒用アルコールは60%以上じゃないと駄目!」と思い込んでる人からは品不足のときに見向きもされなかったが、家庭よりも工場などでの機器の洗浄に使われることが多い代物。
ただし、細菌に対する消毒効果についてはエタノールと同等な一方、一部のウイルスに対してはエタノールより弱いという報告もある。
ちなみに、エタノールとアルコールの違いを質問されることがあるから記しておくと、大きな枠がアルコールで、エタノールはアルコールの一種です。
お客様は、除菌のウエットティッシュに吹き付けて使うというため、拭く方向を一歩通行で拭き取るのであれば、ティッシュやキッチンペーパーなどを水で濡らしているだけでも充分なことと、「消毒」と「除菌」の用語の違いを説明した。
「消毒」と「殺菌」は、厚生労働省の認可を受けなければ製品化に表示するとこはできず、認可を受けるためには検査を受けなければならない。
そして、不思議なことにある種の細菌は一定の量を超えると毒素を出すので、細菌を死滅させなくても毒素を出さない程度に量を減らせば消毒ということになる。
それに対して「殺菌」は読んで字の如く、菌を殺すことだから意味は分かりやすいだろう。
厄介なのは「除菌」の方で、食品衛生法の省令では「微生物を除去することをいう」という規定はあるものの明確な基準は無く、学術的な用語としても使われていない。
極端な話、何の薬剤も付いていない布やティッシュで拭いて菌を移動させるだけでも除菌と解釈できていしまう。
また、「抗菌」にしても業界指針や自主基準はあるが、あくまで商業用語。
いわば、「消毒」や「殺菌」と書けない製品が、「除菌」や「抗菌」という用語に逃げているんである。
もっとも、皮膚に触れない物、身体に使わない物には「消毒」も「殺菌」も表示できないという法律的な理由もある。
なお、「滅菌」は明確に日本薬局方において「微生物の生存する確率が百万分の1以下になることと」と定義しているが、あくまでガーゼなどの製品を密封した時点での話で、開封すれば汚染される可能性があるから、使用時には事前の手洗いなど汚染されないように注意が必要である。
お客様からは、1日に何回拭き掃除すれば良いのかとも質問されたため、玄関とトイレでも違うし、基本は手の触れるところを集中的に拭くとしても、手洗いの方が重要なことをお話した。
お客様が『ベンザブロックSプレミアム』と『ゼナジンジャー慈温液』をレジに持ってきて、咳の有無を尋ねたところ「無い」というためヒアリングすると、主訴は鼻水と喉の痛みが少しとのことだった。
鼻炎薬にも喉の痛みの効能があることをお話して、鼻炎薬への変更を提案すると「強い薬の方が良いんじゃないの?」と訊かれたので、薬は体の中で何をするかが大事であって、咳止め成分の効果とリスクを説明した。
現代薬における咳止め成分には2つの系統があって、覚醒剤系と麻薬系。
そして非麻薬成分でも体内では似た働きをして、心的依存は無いとされているものの身体的依存生があることが指摘されている。
覚醒剤系は喉を開いて呼吸をしやすくする効果がある反面、副作用としては興奮作用により血圧の上昇、心臓への負担の他に、これまた興奮作用のせいで元気になったと錯覚してしまい、無理をして再び体調を崩す可能性がある。
麻薬系は咳中枢を抑制して咳を鎮めてくれる反面、副作用としては心肺機能まで抑制するので疲労感を感じたり、体内の保水機能が狂って乾燥しがちになり、便秘を起こしたり、むしろ乾燥性の咳が現れることがあり、また気力が萎えるため病気と戦う意志が弱まって免疫力まで落としてしまうことが考えられる。
総合風邪薬の場合、一緒に入っている鼻炎を抑える成分もまた抗コリン作用によって、体内が乾燥してしまうから、よりリスクは高まってしまう。
つまり咳止め成分の入った風邪薬を使うというのは、咳をすることによって体力を失ったり気管を傷めたりといった身体的ダメージが副作用によるリスクを上回るくらいでないと意味が無いのだ。
今回は、『パブロン鼻炎カプセルSα』に変更となり、鼻水は内臓の冷えが原因と考えられるから『ゼナジンジャー慈温液』はカフェインが入っておらず身体を休めながら温める良い選択と伝えた。
また、普通に食事をすると消化にエネルギーを取られて、身体を治すエネルギーが不足してしまうので、消化に良い食事に切り替えるよう勧めた。