市販薬の質問をするときには、「症状」や「用途」なども教えて下さい

 メモを手にしたお客様から『ベンザブロックIP』プラスを求められ、すでに終売となっており『ベンザブロックIPプレミアム』が後継品であることを伝えると、そのまま購入しようとされた。
 総合風邪薬は「鼻」「のど」「せき」「熱」などとパッケージに書いてあって種類が分かれているように見えても、実は咳止め成分に咳止め成分を重ねている商品が多く、咳で会話ができないとか、咳で眠れないといった症状が無ければ、手を出すような物ではない。
 咳止め成分には、覚醒剤系と麻薬系の他に非麻薬性もあるものの、やってることは身体機能を狂わせて咳の症状を軽減するか、表に現れないようにするだけ。
 呼吸をしやすくする覚醒剤系の主な副作用は血圧の上昇と、興奮作用により治ったと錯覚すること。
 麻薬系と非麻薬性は、咳を誘発する中枢神経を抑えてしまうから副作用は多岐にわたり、体の怠さや無気力感、心肺機能の低下、保水機能が狂って体内の乾燥による便秘と、乾咳の原因にもなりうる。
 つまり、咳の症状が無いときに使うと副作用だけを享受することとなる。
 なのでお客様に咳が激しいのが尋ねると、発熱に備えてというため、喉の痛みも含めて解熱鎮痛剤で対応できることをお話したところ、今度は『イブA』を購入しようとされた。
 無印の『イブ』と違い、AだのEXだのQuickなんかの別な用語や記号が付いてるものには、気持ちを落ち着ける鎮静成分が入っている。
 一般的には「眠くなる」と認識されているが、眠くならない人でも脳の認知機能の低下は避けられず、信号の見落としとか、考えがまとまらないといった副作用は現れがち。
 それに依存性があるから、繰り返し使っていると飲んでいないときにイライラするなんてことも起こりうる。
 そう説明したところ、「それは要らない」とのことで、単味剤である無印の『イブ』を紹介すると、そちらを購入された。
 お話は聞いていただけて良かったけれど、薬の内容を確認しないまま自分で選ばれるのが不思議でしょうがない。

 お客様が閉店間際に鎮痛剤の棚で迷ってる様子だったため声をかけたところ、『ナロンエースT』の84錠と48錠が同じ物か質問された。
 パッケージのデザインが変わったのと、今まで使っていたという48錠の方はTの文字が小さくて同じ物とは思わなかったようだ。
 『サロンパスAe』もeの文字がメチャクチャ小さくて、お客様は『サロンパスA』だと思ってる人が多いのだけれど、なんでメーカーは商品名を正しく認識できるようにしないのか不思議だ。
 お客様の主訴は頭痛と生理痛というため、生理痛専用薬の『エルペインコーワ』を紹介し、鎮痛剤は用途によって使い分けた方が良いこともあると説明したうえで、『ナロンエースT』の84錠をお買い上げいただいた。
 ただ、鎮静成分がは入っているので常用しないほうが良いことをお話して、病院を受診した事があるか尋ねると、何か処方された薬が効かず、それ以来行っていないというためフィードバックするよう勧めた。
 人間の身体は機械ではないから、使った薬が効くとは限らない。
 だから医師にしても私たちにしても、頭の中では次の候補の薬を考えている。
 店頭ではお客様の詳細な記録は残せないけれど、病院ならカルテが作られるから同じ病院を再診したほうが良い。
 また、そうやってフィードバックすることにより、すでに流通している薬の新たな効果や未知の副作用が発見されるケースも有る。
 患者自身もまた、医療の担い手なんである。
 お客様の頭痛の痛み方は緊張型のようなので、上半身を温めて血流を良くする『葛根湯』が適応する可能性を伝えると、目の奥が重くなることがあるというため、高血圧を伴う場合に向いている『釣藤散』も候補になるとお話をした。
 お客様がお帰りになってから、鎮痛剤に『バファリン』も案内した方が良かったかもしれないと思った。
 主成分のアスピリンには血液をサラサラにする効果があり、血行不良が原因となる肩こりと連動した緊張型頭痛に適している。
 ただし、歯茎から血が出ているような場合には副作用で血が止まらなくなる。
 閉店間際でこちらも焦っているところに、最初は別な製品の質問から入ったもんだから、そこまで頭が回らなかった。

以下の記事も読まれています。


 
登録販売者から一言 壱の巻 登録販売者から一言 肆の巻「おくすり手帳と個人情報の使い方」 市販薬購入前チェックシート